軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第039話 しゃべった……

「イレナ、何があったんだ?」

「そうね。ラック商会に行くまでの道中に話しましょう。こっちよ」

イレナが歩いていったのでついていく。

「どうしたんですかね?」

「さあ?」

俺とエルシィは歩きながら顔を見合わせて首を傾げた。

「ふう……さっきの交渉はね、大失敗」

イレナが一息つき、説明してくれる。

「どういうことだ? 俺はあっさりとしすぎてよくわからなかったぞ」

「いや、そのまんまなのよ。あっさりとしすぎた。というよりも向こうに熱がまったくなかったのよ。儲かるから買い取る気ではいたけど、値段交渉をする気がまったくなかった」

「そんな感じはしたな。いきなり値段を上げたと思ったらそこからはまったく譲らなかった」

普通はもうちょっとすり合わせて値段を決めていくものだ。

「噂の話をしたでしょ。あれが事実ってことよ。私から買い取らなくても向こうには入手手段があるってこと。だからあれ以上の金は出さないってことね」

マジで密輸してんのか……

「でも、店にはDランクとCランクしか置いてなかったよね? Bランクはいらないのかな?」

エルシィがイレナに聞く。

「そこよ、そこ。密輸するものがDランクとCランクだけっていうのはありえない。なのにBランク以上のポーションが店に売ってないってことは密輸したポーションを金持ちの貴族に直接売ってるのよ。つまり密輸に貴族も関わっているっていうことね」

そういうことか……

「思ってたより黒かったわけだ」

「ええ。Aランクもあるって言わなくて正解よ。巻き込まれたらシャレにならないもの。もちろん、あなた達もね」

貴族は嫌だな。

ロクな思い出がない。

「となると、次の本命か?」

「ほぼそうなるわね。まあ、クムーラ商会と交渉をしたという事実が大事だから別にいいわ。というかね、お茶も出さないって何? 田舎の商人をバカにしすぎよ」

受付が応接室に案内もしてくれなかったしな。

普通はする。

というか、何のために受付が2人もいるのかって話だ。

「あまり熱くなるなよ」

「わかってるわ。後でほえ面でもかくといいわね」

熱くなってるな……

俺達はそのまま歩いていくと、10分程度で次の店にやってきた。

今回は2階建てであり、歴史がありそうな店だった。

しかも、敷地面積的にはクムーラ商会よりも広い。

「ここがラック商会か」

「ええ。国にも商品を卸している老舗ね。ここはさすがにさっきのような対応はないと思うわ。入りましょう」

俺達はイレナを先頭に店に入る。

店の中は先程のクムーラ商会とは違い、いきなり様々な商品が並んでおり、多くの人で賑わっていた。

すごいなーと思いながら店を見ていると、一人の若い女性が近づいてきた。

「イレナ様、お待ちしておりました」

「あ、どうも。商会長さんはおられるかしら?」

「はい。どうぞこちらへ」

俺達は女性に案内され、近くにあった階段を昇っていく。

2階は商品を売っているスペースではないようで廊下と扉があるだけだった。

「1階だけか……」

「はい。2階は従業員や商会長の部屋、あとは倉庫になっていますね」

女性は俺の独り言のようなつぶやきにも答えてくれた。

「応接室はどこだ?」

「こちらになります。どうぞ」

女性はそう言って一番手前にあった扉を開ける。

部屋の中は10畳くらいの部屋で対面式のソファーとローテーブルだけがあるシンプルな部屋だった。

「少々、お待ちください。商会長を呼んできます」

女性はそう言って奥に向かっていったので部屋に入り、ソファーに腰かける。

「老舗って感じがするな」

「そうね。余裕があるわ」

俺達は前と同じ並びで座り、商会長を待つ。

すると、ノックの音が聞こえてきた。

「そういえば、レシェックはノックがなかったな……」

「そうね……」

「失礼します」

俺達がぼやいていると、さっきの受付嬢と共にこれまた若い黒髪の男性が部屋に入ってくる。

そして、女性がお茶の用意をし始めると、男性がこちらにやってきた。

「ラック商会のダリウスです」

男性が自己紹介をすると、イレナが立ち上がる。

「ウラム商店のイレナよ、よろしく」

「ええ。よろしくお願いします」

ダリウスが爽やかな笑みを浮かべ、イレナと握手した。

「この2人は今回の件の協力者なのだけど、同席してもいいかしら?」

イレナが座ったままの俺達を見ながら確認する。

「もちろんです。どうぞお座りください」

ダリウスに勧められたイレナはソファーに座った。

「どうぞ」

お茶を用意していた女性は4人分のお茶をローテーブルに置く。

「どうも」

「悪いな」

「ありがとうございまーす」

「私のは?」

エルシィに抱えられているウェンディがそう聞くと、笑みを浮かべていた女性が固まった。

「お前は飲まなくていいだろ」

「えー……」

えー……じゃないわ。

「し、失礼しました。すぐに用意いたします」

女性は慌てて、もう1つのカップを用意し、お茶を淹れる。

そして、エルシィに抱えられているウェンディの前に置いた。

「どうもー」

ウェンディが礼を言うと、女性は一礼し、退室していった。

「随分とユニークな人形ですね?」

ダリウスが爽やかな笑みを絶やさずに聞いてくる。

「こう見えて使い魔なんですよ」

一応、説明しておく。

「ほう……そのような使い魔は初めて見ました。世界は広いですね」

そいつは世界とは違う次元の天使だけどな。