軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第026話 大天使ちゃん

「ウェンディちゃん、さっきのイレナさんの感情はどんな感じだった?」

考え込んでいたエルシィがウェンディに聞く。

「欲望の色が付いてましたね。それ以上に困惑してましたが」

それはお前のせいだ。

「まあ、ウェンディちゃんがね……刺客とか密偵って感じはした?」

「いえ、そんな感じではないです。欲望もさっきの店の店員さんに近いですし、やはりあなた方が高品質のポーションを作れることに対してお金の匂いを嗅ぎ取ったんでしょう」

そんなところだろうな。

「先輩はどう思いました?」

「あれは商人だ。ちゃんとこちらのメリットも提示し、取引をしたい感じだったな」

搾取しようとするタイプの商人ではないな。

多分、店も大手ではないんだろう。

「でも、商人の割には押しが強くなかったですね」

「そうしない方が良いと判断したんだろう。実際、店でそういう話になりそうになったら俺が強引にお前を連れて外に出ていったからな」

ちゃんと相手を見られる目を持っている。

もし、俺達が押しに弱そうだったら多少強引になったかもしれない。

「可愛い奥さんのことが大好きな嫉妬深い旦那さんですもんね」

「どちらかというと、気難しいと思ったんじゃないですか? レスターさんってやっぱりどこかエリートっぽさがありますし」

うーん、平穏に生きるためにそういうのを隠しているつもりなんだが?

優秀さがにじみ出ているんだろうか?

「あー、そっちかもね。先輩、いつも自信満々ですし、かっこいいですから」

自信はいつもあるな。

「まあいい。イレナは刺客や密偵と考えなくていいだろ。次にミックに行くかだな」

「そうなりますね。私は今回のこととは関係なく、行ってもいいと思いますよ。そろそろ王都から離れるべきですし、イレナさんの話を聞く限りでも良いところそうです。それに観光客はいそうですけど、あまり人が寄らない感じっぽいですから一時的に身を隠すには良いかもしれません」

確かにな。

それに昨日、エルシィが行ってみたいって言ってたし、良いかもしれんな。

「わかった。列車だったな? 駅に行って、列車のダイヤを見に行こう」

「そうしますか。ウェンディちゃん、もういい?」

エルシィが俺のケーキも食べたウェンディに聞く。

「はい。とても美味しかったです」

良かったな。

俺達は会計をすると、駅に向かった。

駅は木製の建物であり、いくつもの改札がある。

さらにはその建物の横には列車がいくつも見えたし、多くの人で溢れていた。

「やっぱり王都の駅は人が多いですね」

「国中の町から人が集まってくるだろうしな。ミック方面の改札はどこだ?」

「うーん……あ、すみませーん!」

エルシィが駅員を呼び止め、聞きに行った。

「あいつのコミュ力は本当にすごいな」

「すごいとは思いますけど……あの、前から思ってましたけど、レスターさんってコミュニケーションが苦手なんですか?」

「仕事なら大丈夫だ。でも、特定の誰かと親しくなったことがないと言っただろう」

俺がつまらない人間だということは自覚している。

話しても仕事や勉強のことばかりだし、そもそも積極的に話すような人間でもないのだ。

「あ、そうでしたね。エルシィさんを手放したらダメですよ。あの人こそ、あなたを幸福に導いてくれる人です」

俺が導いているのではなく、あいつが俺を導いているのか。

まあ、いつも楽しい話をしてくれるのも俺のつまらない話を聞いてくれるのもエルシィだしな。

「お待たせしましたー。あれ? 先輩、どうしたんですか?」

エルシィが戻ってきて、首を傾げる。

「たいしたことじゃない。それよりもどうだった?」

「あっちに時刻表があるそうです。行きましょう」

エルシィが奥を指差したので歩いていった。

すると、壁に時刻表が貼ってあったので見てみる。

「ミックは南方面か……あった。10時と12時と14時か……」

1日3便らしい。

「12時は……あ、もう過ぎてますね。どうします? 14時の便に乗るか、明日にするかです」

時計を見ると、12時を5分ほど過ぎていた。

「14時の列車に乗るか……昼飯を食べてゆっくりしたらちょうどいいだろう」

急ぎの旅ではないが、今はさっさと王都から離れるべきだろう。

「そうしますか。ウェンディちゃん、お昼だけど食べられる?」

エルシィがケーキを2つも食べたウェンディに聞く。

「食べまーす」

まだ食うのか……

「じゃあ、行くか」

俺達は一度、駅を出ると、近くにある定食屋で昼食を食べた。

そして、食後に川沿いを歩きながら時間を潰し、いい時間になったので駅に戻ると、受付で切符を購入して列車の方に行く。

「おー、列車ですね。他国の列車に乗るのは初めてです」

「確かにそうだな」

俺達の目の前には蒸気機関車のような黒くてごつい列車だった。

「乗りましょう、乗りましょう」

エルシィがご機嫌で手を引っ張っていったので列車に乗り込み、自由席である対面式のボックス席に座る。

まだ列車は動いていないので窓からはホームが見えているだけだ。

「列車です。わー……」

ウェンディが飛空艇の時と同じように窓に張り付いた。

ホームからはさぞ微笑ましい光景に見えていることだろう。

「列車も初めてだよな?」

「もちろんです。乗ってみたかったんですよー」

やっぱりこの天使、地上に結構な憧れがあったんだな。

「今回は2時間ちょっとで着くけど、国を跨いだり、遠出する時は寝台列車なんかもあるぞ」

「へー……それも乗ってみたいですね」

「まあ、旅は長い。そういう機会も多いだろう」

逃げるために飛空艇を利用したが、本来なら時間がかかるけど、安価な列車がポピュラーだ。

飛空艇、高すぎだもん。

「ウェンディちゃん、楽しみだね?」

「はい」

ウェンディがエルシィの言葉に頷くと、ガタンッと揺れ、列車がゆっくりと動き出した。

「おー! 動きましたよ」

「あまり騒ぐなよ。今回は個室じゃないから」

周りの客に迷惑だ。

「わかってますよー。私は子供じゃないんです」

いやー、お前、絶対に子供天使だろ。