軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第168話 急

翌日、ちょっと遅めに起きた俺達は朝食を食べ、準備をする。

なお、カルロとニーナの部屋に行ったが、2人はすでに出かけた後であるようでいなかった。

俺達は宿屋を出ると、町を観光していく。

とはいえ、商業の町なだけあって、昨日の広場くらいしか見るものがなかったので主に店を巡りながら楽しそうなエルシィとウェンディに付き合う形だ。

「色んな物が売ってますねー」

「そうだな。大陸中のものが集まっているみたいだ」

この町で見つからないものはないんじゃないかなと思う。

それくらいに充実していた。

俺達はその後も店を回り、昼には定食屋でパスタを食べる。

そして、午後からも店を回っていくと、15時くらいに喫茶店に入り、ケーキを注文した。

「おー……芸術です!」

「すごいですね! 輝いています!」

俺達の目の前にはセットの紅茶と共に3つのケーキが並んでいる。

チョコレート、フルーツ、チーズのケーキだが、どれも繊細な装飾が施され、美術品の様だった。

「確かにすごいな」

さすがはお菓子文化が発展したランスのケーキだ。

「食べてみましょー」

「そうだな」

「美味しいです!」

食いしん坊天使はもう自分のフルーツケーキを食べていた。

相変わらず早いなと思いつつ、自分のチーズケーキを食べる。

「うん、美味いな」

チーズケーキはしっとりとした口当たりと共にクリームチーズの濃厚な風味がふわっと広がっている。

甘さは控えめであり、そこまで甘いものが得意ではない俺にはちょうど良かった。

そして、ほんのりとした酸味が後味を引き締め、下のクッキー生地の香ばしさが絶妙なバランスを生んでいる。

「甘くて美味しいです!」

エルシィも満足そうだ。

「ウェンディ、もう一個頼んでも良いぞ」

ウェンディの目の前にある皿はすでに空なのだ。

「わーい。エルシィさん、何にします?」

「えーっと、そうだなー……このミルフィーユかな?」

エルシィも頼むらしい。

「私はロールケーキにします。すみませーん」

ウェンディが手を上げて、店員を呼んだ。

すると、ケーキを食べていたウェンディを訝しげな目で見ていた若いウェイトレスが笑顔に切り替えて、こちらにやってくる。

「どうしました?」

「このミルフィーユとロールケーキをください」

「かしこまりました」

ウェイトレスは笑顔を絶やさずに頷くと、奥の厨房に向かった。

そして、すぐにケーキがやってきたのでエルシィとウェンディが幸せそうな顔で食べる。

「良かったな」

「はい。さいこーです」

「これぞ人類の叡智です」

満足そうで何より。

その後もケーキを楽しみ、ゆっくりと過ごすと、喫茶店を出て、宿に帰るために歩いていく。

楽しい雰囲気だったし、明日の脱出に備えた良い休養日だと思っていた。

しかし、町の様子がどこかおかしい。

「先輩……」

エルシィも勘づいたようだ。

「何か変だな……」

その辺でひそひそと話している人が多いし、どこかざわついている。

さらには兵士達が走ったりしており、あきらかにさっきまでとは町の雰囲気が異なっている。

「ミュリエル先輩、ですか?」

俺もそう思ったが……

「それにしてはオーバーじゃないか?」

ミュリエル先輩が密偵だとバレて捕まるなり、指名手配になったとしてもこんなに兵士が慌ただしくするものだろうか?

ましてや、一般市民や商人達がひそひそと話をしたりするだろうか?

「それもそうですね。ちょっと聞いてきますよ」

エルシィはそう言って、通りの端の方で話しているおばさん達のところに向かおうとした。

「エルシィ、ちょっと待て」

「え?」

エルシィが振り向いた。

「ミュリエル先輩だ」

向こうからミュリエル先輩が早足でこちらに近づいてきているのだ。

「あ、本当ですね。ひとまずは安心なんでしょうか?」

堂々と歩いているし、ミュリエル先輩が原因ではないだろうな。

「わからん」

その場で待っていると、ミュリエル先輩がやってくる。

「ここにいたか……探したぞ」

「すみません。どうかしたんですか? 町の様子が変です」

「こっちに来てくれ」

ミュリエル先輩がそう言って、近くの路地に入ったのでついていく。

路地は日陰なため、少し暗く、周りには誰もいない。

「何かあったんですか?」

「あった。それも大事件だ」

大事件……

「何でしょう?」

「ちょっと前に駅の方で爆発があった。私の部屋は3階だったからちらっと見えたが、規模は相当なものだった」

は? 爆発?

「どういうことですか?」

「わからん。部屋で一緒だったカルロとニーナが探りに行っている。私は君達を探す方を担当したんだよ」

それで宿屋で待機しているはずのミュリエル先輩が外にいるのか。

「なるほど……それにしても爆発って……」

「ちょっと理解が追いつきませんね……」

本当にな。

「とにかく、今はカルロとニーナが戻ってくるのを待とう。悪いが、君達の部屋で待機させてくれ」

「わかりました。俺達もちょうど戻るところでした」

「すぐに行きましょう」

俺達はすぐに通りを出ると、騒がしくなっている町中を歩き、【木陰亭】に戻る。

そして、俺達が泊まっている部屋に入ると、カルロとニーナを待つことにした。