軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第143話 1人10万ゼルになります

魔法の練習をしていると、辺りが茜色に染まりだした。

そして、道の方を見ると、森から出て、町に帰っていく冒険者達の姿が見えだす。

「エルシィさん、そろそろ帰りませんか?」

ふよふよと浮いているウェンディが手のひらの石をじーっと見ているエルシィに聞く。

「ちょっと待って。ようやく意味がわかってきたところだから」

「あの、夜からポーションの錬成がありますし、魔力をある程度、温存した方が……」

そこまでのことじゃないし、最悪はエリクサーがあるからどうとでもなるが……

「エルシィ、戻ろう。高級宿屋でゆっくりしようぜ。魔法の練習だって、空間魔法なら次のナンスの町に行くまでの列車の中でできるだろ」

「それもそうですね……先輩の方はどうですか?」

うーん……

「こっちも時間がかかりそうだ。今までとは違う」

「難易度が違いますよね……」

今まではパッとできたもんな。

「空間魔法もディスペルも高度な上級魔法ですからね。もっと楽なのもありますけど、そっちにします?」

ウェンディが聞いてくる。

「いや、これでいい。別に急いでいるわけでもないし、気長にやるよ。それよりも宿屋に行こう」

「さんせー」

「行きましょうか」

俺達は帰ることにし、道に戻ると、町に向かって歩いていく。

「魔物は出ませんでしたねー」

「実際、見張っていましたが、気配はゼロでしたね」

魔物どころか獣もいなかったな。

「あれだけ冒険者がいればな。浅い所の魔物は狩りつくされているんじゃないか?」

「そうかもしれませんねー。ちょっと怖い人達でしたけど、こう考えると守ってくれるんですから助かります」

「ホントにな」

俺達は門をくぐり、町に戻ってきた。

「宿屋はどこですかね? ギルドから西の【銀月の宿】でしたよね?」

「そうだな……ギルドは南の地区にあるから……ここから北に行ったところだと思う」

地図を見て確認する。

「じゃあ、あっちですね」

エルシィが北の方向の通りを指差したので歩いていく。

「飲食店が多いな」

周りには飲み屋が多く、すでに多くの冒険者達が店の中で楽しんでいた。

「仕事の後の一杯ってところですかねー?」

そういうのも楽しいんだろうな。

俺達がそのまま繁華街を歩いていくと、徐々に飲食店が減ってきた。

そして、十字路までやってくる。

「えーっと、位置的にはあっちかな?」

左の通りの方を見る。

「あれじゃないですかねー?」

エルシィが指差した先には5階建ての真っ白い建物があった。

「あれだと思いますよ。看板に【銀月の宿】って書いてあります」

目の良いウェンディが教えてくれる。

「じゃあ、行ってみるか」

俺達は十字路から左の通りを歩いていく。

そして、5階建ての建物の前で立ち止まった。

「確かに【銀月の宿】って書いてありますねー」

「大きいですね」

宿屋っていうか、ホテルみたいだな。

「ギルドから話は行ってるよな?」

「多分? あれから結構経ってますからねー。入ってみましょう」

「そうだな」

俺達は扉を開け、中に入る。

中は大理石のような床であり、いくつもの調度品が並んでいる豪華なエントランスだった。

奥には高級そうな木材で作られた受付があり、3人の若い女性が並んでいる。

さらにはその隣に階段があり、赤いカーペットが敷かれていた。

「ほー……」

「すごいですね」

この町一番の宿か……納得。

「いらっしゃいませ。宿泊のお客様でしょうか?」

俺達はエントランスを眺めていると、燕尾服を着た若い男性が近づいてきて、声をかけてきた。

「ああ。レスター・ハートフィールドだ。冒険者ギルドから聞いてないだろうか?」

「レスター様、エルシィ様ご夫妻ですね。冒険者ギルドから聞いております。今日から2泊と伺っていますが、大丈夫でしょうか?」

「そのつもりだ」

「かしこまりました。延長される際は受付に申してください。その際も料金は不要ですので」

じゃあ、ずっといてもいいのかな?

長居する気はないけど。

「わかった」

「それでは部屋に案内いたしましょう。どうぞこちらへ」

店員に促され、受付横にある階段に向かった。

「一応、確認だが、本当に料金は不要なのか?」

階段を上がりながら聞く。

「ええ。当宿はギルドや役所と提携しており、外部からのお客様がいらした場合のためにあらかじめ部屋を確保しているのです。その一室ですので料金は一切不要です。もちろん、食事などのルームサービスも含まれております。その辺りも部屋で説明しましょう」

「頼む」

俺達は3階、4階と上がっていき、一番上の5階までやってきた。

「こちらになります」

店員はすぐ手前にある扉の前に立つと、鍵を開け、入るように促してくる。

「では、失礼して」

扉を開け、中に入る。

すると、一瞬、スイートルームというワードが頭に浮かんだ。

広々としたリビングスペースには柔らかな光を落とすシャンデリアが天井に揺れており、床には深い紅と金を基調としたカーペットが敷かれている。

中央にはL字型の大きなソファセットとガラステーブルが置かれ、壁際には重厚な木製のキャビネットと共に高級そうな木材で作られたテーブルが置かれていた。

窓の先にはバルコニーが見えており、さらにその先には森と共に湖が見えている。

「すごいですねー……」

「ああ……」

ここ、一泊いくらなんだろう?