軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第125話 貴族の依頼

「レスターさん、オフェリアが王族とは?」

アデリナが笑みを消さずに聞いてくる。

「そう見えただけだ。身分を隠しているのも怪しいし、城に近づこうとしなかったからな」

ギルドの受付嬢ですら知っていた政変を知らないと言ったし。

それに王家のことを聞いた時、一瞬、表情が歪んでいたのを見逃していない。

「ふふっ、さすがはイラドで宮廷錬金術師になっただけのことはありますね。素晴らしいです」

「なあ、オフェリア。俺達、お前に姓を名乗ったか?」

この部屋に入る時、俺達のことをハートフィールドご夫妻と呼んだ。

そして今……

「いーえ。でも、知っています。アデリナが今、言ったようにイラドで宮廷錬金術師だったことも知っています」

そうか……

「ギルドか……」

漏らしたな。

「ええ。あなた方がこちらに来てくれるような依頼を出すように頼みました」

「ギルドも信用できんな」

今思えば受付が1人しかいなかったことも怪しい。

「こういうことは滅多にないんですよ。アデリナ」

オフェリアがアデリナに声をかけると、アデリナがフリオを見る。

すると、フリオがテーブルを回ってこちらに来ると、重なっている札束をテーブルに置いた。

「何だ、この金は?」

100万ゼルはあるであろう札束が3つもある。

「300万ゼルあります。それは迷惑料です。ギルドを恨まないでください。あそこで受付嬢をしている子に無理を言ったんです」

無理ね……

弱みを握ったか、この札束以上を積んだか……

「まあいい。それでこんなことをしてまで俺達を呼んだ用事を教えてくれ。ネックレスの修理ではないんだろ?」

「修理を頼みたいのは事実なんですけどね……どうぞ」

オフェリアがネックレスを取り出し、テーブルに置いた。

「これか……」

ネックレスを取ると、エルシィと一緒に見る。

「魔力が切れてますね。老朽化でしょうかね?」

「損傷もひどいな……」

「相当、古いんでしょうね」

年代物だな。

絶対に安くない。

「直せますか?」

オフェリアが聞いてくる。

「もちろんだ。とはいえ、これは高いぞ」

「それはいくらでも支払いましょう」

貴族は本当に出すんだな。

王族だけど。

「さて、その辺りの話は後にしましょう。オフェリア、話は私がしても?」

アデリナがオフェリアに聞く。

「お願いします」

オフェリアが頷くと、アデリナも頷き返した。

「では、私が説明します。レスターさんが予想していた通り、オフェリアは王族です」

アデリナがはっきりと断言した。

「だろうな。政変があり、粛清された第二王子側の親族か?」

第一王子と第二王子は兄弟だからどっちも親族だけどな。

「その通りです。第二王子側の親族は皆、処刑もしくは幽閉されております。しかし、このオフェリアは……えっと……」

アデリナが言い淀む。

「私は庶子なんですよ。はっきりと言えば正室でも側室でもない第二王子の愛人の子です」

オフェリアが微笑みながら平然と答えた。

「第二王子の娘か……第一王子は存在自体を知らなかったわけだな」

オフェリアが普通にここにいるということはそういうことだ。

「その通りです」

オフェリアが涼しい顔で頷く。

「話を続けます……オフェリアはつまり現在の王である第一王子に狙われているのです」

アデリナが話を戻した。

「知らないんだろ?」

「知らないは知らないです。ただ、こういった子がいるのは知っています。多分、自分もいるんじゃないですかね?」

いるかもな。

「それで俺達にそれを話す理由は?」

「依頼になります。このオフェリアを国外に連れて行ってほしいのです。具体的にはランスのレンジェの町です」

レンジェはランスの南方の町であり、このイパニーアとの山を挟んだ国境沿いの町だ。

「国外逃亡……亡命か」

まあ、これも予想していた。

何故ならオフェリアは俺達を案内してくれた理由に王都を見るのが最後になるから良い機会と言ったのだ。

引っ越すかもしれないが、王都ならいつでも来られる。

最後の理由は国を出て、二度と戻らないからだ。

「そうなります」

「俺達に頼むか? 勝手に行けよ」

列車で行ける。

「ここからが大事な話になります。これはあなた方にも大事になる話です」

大事か……

「聞こう」

俺は屋敷の前でオフェリアを見た瞬間、実は帰りたくなっていた。

でも、こうまでして俺達を誘い込む理由が知りたかった。

そして何より、こいつらが俺達をどうこうしようとしていないことはわかっていたからだ。

「第二王子の庶子はオフェリアだけではありません」

そういうことか……

「男子がいるわけだ」

「はい。その方は騎士です」

騎士ね……

「フリオじゃないだろ?」

「ええ。もちろん、違います」

まあ、そうだろうな。

全然、似てないし。

「その庶子様は何をするんだ?」

「今回の政変を恨んでおり、事を進めています」

父を殺されたことか、将来の席がなくなったことか……

いや、第二王子の正式な子も死んでいるだろうから自分に王位権があると思ったか?

どちらにせよ……

「反乱か」

「その言い方はどうかと思いますが、捉え方次第ですのでそれで進めます。そう遠くない時期に反乱が起き、この国は不安定になるでしょう」

その庶子はそれができる立場にあるわけだ。

軍部か?

「反乱が起きるとどうなる?」

「国全体が乱れるでしょう。そして、国境は特に厳重になり、国外に出るのが難しくなります」

「つまり反乱が起きる前に国を出ればいいわけだな?」

それを俺達に教えてくれたわけだ。

「そうなります。一刻も早く国を出てください。あなた方は店を開くという夢を持ち、新婚旅行の途中でしょう? さっさと別の国に行くべきです」

その通りだ。

「そのついでにオフェリアも連れていけってことか?」

「はい。もちろん、無料とは言いません」

アデリナが頷くと、フリオを見る。

すると、フリオがテーブルを回ってこちらに来ると、またもや重なっている札束をテーブルに置いた。

「さっきより多いな……」

札束が1、2、3……5個ある。

「500万ゼルあります。それは前金になり、無事にレンジェに着いたらオフェリアからもう500万ゼルを受け取ってください。それが依頼になります」

さて……

「ウェンディ」

ウェンディに声をかけると、両腕で丸を作った。

これはこいつらが嘘をついていないということになる。

「先輩、これは断れません。前向きに考えれば当初の予定通りです」

仕事をして資金集めをしながら北上し、ランスに行く。

確かにその通りか。

それにここまで知った俺達をこいつらが放っておくわけがない。

「アデリナ、1つ聞きたい」

「何でしょう?」

「なんで俺達なのかを答えていないからちゃんと答えろ。オフェリアはまだバレていないし、フリオ辺りに護衛を任せて国を出ればいいだろ」

俺達のメリットを提示したが、俺達に頼んだ理由は答えていない。

「1つはあなた方がイラド出身の錬金術師だからです。イラドと事を構えたくない我が国はイラドの人間なら通す可能性が高いです。そして、錬金術師なら冒険者ギルドがその身分を絶対に保証してくれます。オフェリアとフリオをあなた方の同行者にしてほしいわけです」

俺達の保証が欲しいわけか。

そして……

「お前がはっきり答えなかった理由がわかったな。反乱はすぐに起きるわけだ」

俺達が国を出る前に起きるんだ。

「はい。北の国境沿いにあるサラスカの町まで列車で5日かかります。それまでに事が起きるでしょう。とはいえ、起きたばかりならまだ混乱は少ないはずです」

それはそうだろうな。

「他には?」

1つってことは他にもあるわけだ。

「オフェリアがあなた方なら信用できると言ったからです」

そう言われたのでオフェリアを見る。

「レスターさん、あなたは持っている人間です。夢も、それを叶える能力も、そして、共に人生を歩む素敵な奥様も……そういう人間は裏切らない」

裏切る理由がないがな。

味方ですらないのだから。

「そもそもこの国のごたごたなんて興味ないな」

「良いことです。もし、私に何かあってもあなた方に迷惑はかけないとお約束します。どうかランスのレンジェの町まで連れていってください」

オフェリアがそう言って頭を下げた。

これまで絶対に下げなかった頭を……

「わかった。その依頼を受けよう」

ただ国を出るだけで1000万ゼルだ。

やってやろうじゃないか。