軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第115話 良い情報

「すみません。お待たせしました」

ダナさんが旦那さんを連れて戻ってきた。

「よくいらしてくださいました。私が店主のバシリオです」

男性の方が手を差し出してきたので俺、エルシィの順番で握手する。

「レスターだ。よろしく」

「エルシィでーす。よろしくお願いしまーす」

「よろしくお願いします。それでこちらが妻のダナです」

バシリオさんが紹介すると、先程の女性が手を差し出してきたので同じように俺、エルシィと順番に握手した。

「よろしくお願いします」

「よろしくでーす」

「よろしく。それで仕事の話なんだが……」

早速、本題に入る。

「ええ。説明しますのでそちらにどうぞ」

バシリオさんに勧められ、工房の方に入り作業デスクにつく。

「こんなところですみませんが……」

ダナさんが謝りながらデスクにお茶を置いた。

「いや、構わない。仕事中だろうしな」

「ありがとうございます。どうぞ」

勧められたのでお茶を一口飲む。

ウェンディがじーっと見てきたのでコップをエルシィの前に置いた。

すると、ウェンディがエルシィの腕の中から這い出てきて、デスクの上に飛び立った。

「「…………ん?」」

ロロン夫妻がウェンディを凝視する。

「そいつは気にしないでくれ。それよりも仕事の話だ」

そう言うと、コップを抱えながらお茶を飲んでいるウェンディから目線を切り、俺を見る。

「あ、ああ……仕事というのは鉱石を錬成してほしいのですよ。ご覧のようにウチは装飾屋でして、材料となる鉄や金銀、他にも宝石なんかを扱うんです。しかし、ウチみたいな装飾屋や宝石屋の数に対して、精錬所の職人、錬金術師の数が足りてない状況なんですよ。それで冒険者ギルドの方に依頼を出しているんです」

ぱっと見だったが、装飾屋や宝石屋が多かったもんな。

「なあ、この辺りに店が多いが、儲かるのか? 客が食い合わないか?」

「確かに数は多いですが、それぞれ特徴がありますし、ここは職人通りって言うんですけど、名地なんですよ。観光客も多いですし、数を売って儲ける職種でもないですから」

装飾品は高いからか。

さっきの見事な金の指輪は50万ゼルもした。

数個売れれば月の収入としては十分なのかもしれない。

「なるほどな……」

「ギルドの推薦状に優秀な錬金術師ご夫妻と書いてあります。ぜひともお仕事をお願いしたいです」

「依頼料は?」

「日当で5万ゼル、もしくは、歩合ですかね? 鉱石1個当たり5000ゼル支払います。あ、もちろんですが、これは1人当たりです。ですので、2人ですのでその倍になります」

ふむ……

「歩合か?」

エルシィに確認する。

「絶対に歩合ですよ。日当はアホくさすぎます」

10個以上錬成すれば良いんだからな。

「バシリオさん、歩合の方が良い」

「わかりました。後ろに鉱石が積んでありますのでそちらをお願いします。場所はこのデスクを使ってください」

そう言われて後ろを振り向くと、大量の鉱石が入っている木箱が積まれていた。

「いっぱいあるな」

「鉱石は腐るものじゃないですからね。良いのがあれば買っておくんですよ。そうしたら溜まっちゃいました。でも、精錬所がどこもいっぱいなんですよね」

溜まっちゃいましたって量じゃないだろ。

これだけで何百万ゼルはするぞ。

この店、想像以上に儲かってるわ。

「こんなによく溜めたな」

「あー、実はウチの父が鉱石を取り扱う商人なんです。だから率先して卸してもらっているわけですよ。安くはしてくれませんけどね」

良い鉱石を優先的に息子の店に卸しているわけか。

それで溜まったわけね。

「了解。じゃあ、早速作業をしていくわ」

「お願いします」

俺とエルシィは木箱から鉱石を取り、作業デスクに置く。

「銀鉱石だな」

「はい。質はかなり良さそうですねー」

「じゃあ、やっていこう」

俺達は錬成を始める。

「私達は私達で仕事をしていますので何かあれば声をかけてください」

「了解」

ロロン夫妻もそれぞれ仕事を始めた。

バシリオさんは機械を使って金属や宝石の加工をしている。

ダナさんは受付で金細工をしているように見える。

どうやら夫婦で職人のようだ。

「バシリオさん、ちょっといいか?」

作業をしている中、悪いと思ったが、声をかける。

「何でしょう? 何かわからないことでも?」

「いや、雑談だ。この店ってバシリオさんが建てたのか?」

「いえ、私は先代の弟子だったんですよ。ただ、先代である師匠が高齢だったこともあり、引退したんです、その際、店を安価で譲ってくれたんです。それでもお金は足りませんでしたが、それは父に借りました。ですので借金返済中ですね」

借金といっても身内か。

優先的に卸しているところを見ると、親父さんも期待している。

嫁さんもおり、順風満帆そのものだな。

「なるほどな」

「どうかしたんですか?」

「たいしたことじゃない。実は俺達もこういう店を持つのが目的で資金集めの旅をしているんだ。装飾屋じゃなくて錬金術師のアトリエだがな」

あと新婚旅行。

「あ、そうだったんですね」

「それでちょっと先輩の話を聞きたいと思ってな」

「なるほど……私は商人の子で元々は商人を目指していました。父の手伝いをしていたんですが、取引先と話をする途中でこういった彫金なんかに興味を持ち、こっちの道に進んだんですよ。そういった経験を踏まえてアドバイスをしますと、やはり店を出す前にある程度の取引先は見繕った方が良いと思います」

ほう?

「どういうことだ?」

「御二人は錬金術師ですので例えばポーションとしましょう。そのポーションを売る相手を先に考えておかないといけないということです。もちろん、一般のお客さんに売るというのもありますが、やはりどこかに卸すのが大事になり、それが定収入に繋がります。これは商人の中でよく聞く話なんですが、何も決めず、何も調査せずに店を開いて失敗する店は多いんです。ポーションをどこかの店に卸そうと思ってもその店はすでに取引先を持っており、卸せないということも十分にありえるのです」

なるほど……

「勉強になるな。ここは大丈夫だったのか?」

「元々、師匠の店ですし、師匠が引退する前に挨拶回りをしましたよ。それにまあ、ウチは実家が太いもんで……」

実家が取引先になっているわけだ。

「事前準備か……」

「まあ、錬金術師でしたらそこまで難しく考えなくても良いですよ。どこに行っても需要はあります。鉱石を錬成できるわけですし、この国なら仕事がない町を探す方が難しいくらいですよ」

まあ、ポーションを作れるからポードでは問題ないし、取引先もイレナがいる。

ターリーでも木材の加工ができるし、カルロとニーナがいるからどうにかなる。

「なるほどな……教えてくれて助かる。ちなみにだが、できた銀はどこに置けばいいんだ?」

「あ、そこの木箱にお願いします」

バシリオさんが部屋の隅にある木箱を指差した。

「あ、先輩、私のもー」

「ん」

エルシィから銀塊を受け取ると、立ち上がり、部屋の隅に行く。

そして、2つの銀塊を木箱に入れ、帰りに新しい鉱石を持って作業デスクに戻った。

「あれ? もう終わりました? まだ10分くらいしか経ってませんけど……」

「これが錬金術師だ」

「いや、いくら錬金術師でも早すぎなような……」

俺達はその辺にいる錬金術師じゃないのだ。

「このくらいなら余裕なんだよ。そのレベルの錬金術師ということだ」

「先輩、すごーい!」

エルシィが腕を組んでくる。

「ほら、頭お花畑じゃないですか……自分だって同じスピードでできるくせに」

ウェンディがお茶を飲みながら呆れた。

「「人形が……しゃべった……?」」

あ、そっちの方が驚きか。