作品タイトル不明
第114話 職業病
受付嬢にもらった紙をエルシィと見る。
「個人店のようですね」
ロロン装飾店……夫婦でやっている小さな店のようだ。
俺達が目指している感じだろう。
「ああ。場所は……ここから近いな」
同じ南の大通り近くにある。
まあ、そういう店が多い区画だから当然と言えば当然だが。
「すぐですね。あのー、どういう人とかわかりますか?」
エルシィが推薦状を書いている受付嬢に聞く。
「バシリオさん、ダナさんのロロン夫妻ですね。まだ若くて27歳だったか28歳だったか……どっちだったかしら?」
どっちでもいいが、俺達より年上なわけだ。
「庶民だよな?」
「もちろんですよ。この王都出身の方ですね。人当たりの良いご夫婦なので安心してください」
大丈夫そうだな。
まあ、ギルドが勧めるところだから問題ないか。
そのまま待っていると、受付嬢が推薦状を書き終え、封筒にしまう。
そして、その封筒をカウンターに置いた。
「では、こちらを持って、ロロン装飾店に行ってください。具体的な依頼料などはそこで依頼主本人と交渉してください。もちろん、金額に見合わないと思ったら断っても構いません。その時はこちらに報告をお願いします」
「わかった」
頷き、封筒を取ると、エルシィに渡す。
「仕事が終わったら報告に来ればいいのか?」
「義務ではありませんが、そうしてもらえると助かります。一応、冒険者カードにそういう実績も記載しますので」
そこまで離れているわけでもないし、寄ってから帰ればいいか。
「わかった。じゃあ、行ってくる」
「いってらしゃいませ」
俺達はギルドを出ると、紙に書いてある地図を見ながら歩いていく。
「依頼主のご夫婦は錬金術師ですか?」
エルシィの腕の中にいるウェンディが聞いてくる。
「書いてはいないが、違うだろうな。錬金術師ならこういう依頼は出さないだろうし」
小さい店だし、大量に作って大量に売る大手の商会とは違う。
だったら自分で錬成した方が早いし、出費も抑えられる。
つまり錬成したものを買って、それを加工して売る店だろう。
「27、8歳でしたよね? 若いのにもう店を持っているんですね。やはり儲かるんでしょうか?」
今度はエルシィが聞いてくる。
「さあな。イレナみたいに親からもらった店かもしれんし、行ってみないとわからん」
「自分達で建てたなら話を聞いてみたいですねー」
「確かにな」
参考になる。
俺達は大通りまで戻ると、そのまま進み、職人街に入る。
すると、裕福そうな年配のご夫婦や商人が歩いていた。
「雰囲気が変わりましたね」
「ああ。なんというか懐かしい気がする」
「私達も大きい定義では職人ですもんね」
そうなるな。
「ロロン装飾店ってどこですか?」
ウェンディが聞いてくる。
「えーっと、そこの通りだな」
俺達はそのまま進み、右に曲がる。
すると、装飾店や宝石店が並んでいる通りに出た。
「多いな……」
「競合しないんですかねー?」
すると思うが……
でも、これでちゃんと需要と供給のバランスは取れているんだろうな。
多分……
「どうだろ……あそこだな」
左側に【ロロン装飾店】と書かれた看板が掛けられた店を見つけた。
「あ、ホントだ。入ってみましょう」
「そうだな」
俺達は店の前まで行くと、営業中のようだったので扉を開き、中に入る。
店の中はそこまで広くなく、10畳程度だった。
右側が店のようでネックレスや指輪などの商品が並んでおり、若い茶髪の女性が受付に座っていた。
さらに左側は工房となっているようで様々な機械や道具があり、そんな機械を整備している若い黒髪の男性がいる。
「いらっしゃいませー」
受付の女性が立ち上がり、こちらにやってきた。
「こんにちはー。ダナさんですかー?」
エルシィが笑顔で女性に聞く。
「はい……えーっと? どちらさまですかね?」
「冒険者ギルドから仕事の依頼を受けてきましたー。どうぞー」
エルシィがそう言ってギルドの受付嬢が書いてくれた推薦状を渡した。
「あー、ギルドの……ちょっと待ってくださいね。バシリオくーん、ちょっとー……」
ダナさんは旦那さんがいる工房の方に向かった。
「ちょっと見てみるか」
「そうですね」
俺達は待っている間に並んでいる商品を見ていく。
「綺麗ですね」
ウェンディがじーっとネックレスを見て頷く。
ネックレスは銀糸のような繊細なチェーンが施され、青い宝石も澱みのない綺麗なものだった。
「ふむ……腕はそこそこあるな」
「器用そうですね。バランスも良く、Bランクってところです」
「嫌な夫婦……」
ほっとけ。
職業病だ。
ロロン夫妻が工房の方で推薦状を見ながら話しているので俺達はその後も商品を見ていく。
どれも質は良いし、メインズ神殿前の市で見たまがい物とは違う。
とはいえ、値段もそこそこした。
「マジックアイテムは扱ってないようだな」
どれも普通の装飾品だ。
「やはり職人さんですね。錬金術師ではなさそうです」
錬金術師なら魔法の力が込められたマジックアイテムも売るだろうしな。
「おっ、この彫金は見事だな」
金の指輪があるが、装飾も綺麗だし、質もかなり良い。
「おー……これは素晴らしいですね。色味も良いですし、Aランクです」
そんなところだろうな。
「あのー……装飾屋に来た新婚カップルの会話じゃないですよ……」
錬金術師なんだから仕方がないだろ。