軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

親愛なる我が黎明へ 其の十一

───正体が人外の女の子に武器を作ってあげるのって、控えめに言って人生のトロコンにおけるプラチナトロフィーじゃないっすか

「武器ならイムロンに伝手あるしそっちに頼むけど」

そう言ったサンラクに対し、彼らはそう反論して土下座した。

そうして始まった「ウィンプちゃんの武器を作ろう」の会議は、実には二十回もの殴り合いを挟みながらも今日この日に、二振りの剣を生み出すに至った。

「うう………」

大混戦。

銃火器の登場が戦争を散兵の戦いに変えた、というならば銃火器に負けない肉体を持つ者同士の戦いは密集した混戦へと回帰する。

そんな中で、ある種の総大将じみた立ち位置に立たされてしまった……ともすれば身の上で言えば「敵側」寄りの存在ですらあるウィンプは、この日のために用意された二振りの剣を握る力を強める。

幸い、敵と味方の区別は極めて分かりやすいものの……この敵味方入り乱れる夜の暗闇に突っ込むのはウィンプでなくとも躊躇いの感情は湧くというもの。

むしろ、この場に「来なければならなかった」者と比べて「来たくて来た」者達がモチベーションに燃えているのは至極当然なのかもしれないが。

「ようウィンプ! 腰抜けてんじゃないだろーな!?」

「そ、そんなわけっ!」

その時、ウィンプのいる場所にサンラクがスライディングでもするかのように滑り込みながらやってくる。

その背後には、首が断ち切られた毒乙女の姿。

「なら上等、こっからが本番だぜ…… 龍蛇(ナーガ) が動いた。芸の無い奴らだ、前回と同じ手口だ」

先程、前線拠点からの強烈な先制パンチを受けてノックダウンしていた龍蛇。すでにダウンからは復帰していたはずだが攻撃をする様子も、された痕跡もない。

それは龍蛇の大きく……なにより長い巨体を利用して戦場を包囲しているからに他ならない。

それはかつての戦いの再現、その事実にウィンプの体がぶるりと震える。

逃げる者をこそ咎める死の鱗。それが誰を傷つけ、誰を失わせたのかをウィンプが忘れることはない。

そして、「敗因」を忘れて再戦に臨むほど、ゲーマーもまた愚かではない。

「サバイバアル! 前言ったアレだ、 ブチ抜くぜ(・・・・・) !!」

「例の隔離技かぁ!? よっしゃ、オメーら! 出番だぜ!!」

黒い電光を解除しながらサンラクがサバイバアルを呼び。

棘のついた棍棒で遠慮容赦なく毒乙女の顔面を殴り飛ばしていたサバイバアルがまた別のプレイヤー達を呼び。

「事前情報通りだ! あのでけぇ蛇が俺らを包囲して閉じ込めようとしてやがる、 雑魚狩り(・・・・) も飽きただろ……大物食いだ、前進ッ!!」

その号令に応えたプレイヤー達の動きが変わる。

ただ眼前の敵へと武力を叩きつけていた動きから、明確に前へと。

プレイヤーにとって死とはその盤面における成否でしかない。どれだけの痛手を受けようと、損失があろうと、命すらもが奪われようと……経験だけは死を乗り越えて受け継ぐことができる。

「ようサンラク! なかなか景気の良い戦場じゃねえか、思ってたより雑魚敵も歯応えっ、が……あるっ!!」

木々の影から奇襲を仕掛けて来た毒乙女の刃を腕で受け止め、カウンターで棍棒を叩き込む。解毒ポーションをばしゃばしゃと傷口にぶちまけながら、サバイバアルは肉食獣の如き笑みを浮かべる。

「景気が良いのはどっちかっていうとプレイヤー側な気はするけどな……まぁいいや。まだまだ序の口なんだ、ここでガス欠すんなよサバイバアル」

「そん時ゃあゲンコツ二つがあるだろ」

手刀で暴れてた手前、あまり強く否定もできないとサンラクは肩をすくめる。

そうしてプレイヤーの一団が前進を始めて程なくして。

「サバさぁーん! 見えてきたぞデカ蛇の胴体!!」

「鱗一枚で座布団くらいあるんじゃないのあれ……」

ただその場に横たわっているのではなく、囲んだ状態で渦を巻くように動いているその巨体はさながら先頭と最後尾が連結した電車。

プレイヤーがスキルや魔法を駆使すれば越えられないこともない、ように見えるがそうはならないことは既に彼らには共有されている。

「おーし! まずは様子見だな、ヤシロバード!」

「オッケー、こういうのやってみたかったんだよね」

声をかけられた男……ヤシロバードが、金属の箱のようなものを肩に担いで構える。

「四連装填ジャベリンパイルランチャー! パイルバンカーとロケランの合体で楽しさ二倍!!」

「それ足して2で割ってるからそれぞれの楽しさ半分のニコイチじゃね?」

「 ※(こめじるし) 個人の感想なので問題なし! ファイヤー!!」

サンラクからのツッコミを振り払うかのように、四本の杭が勢いよく発射される。それはそのまま 的(まと) としては目を瞑っていても当たる巨体に突き刺さり……爆発した。

「お、結構有効打?」

「そりゃあ一回撃ち切ったら壊れる代わりに高火力にしてるからね」

かなりの違法改造じゃねーか、という誰かのつぶやきをよそに、違法改造ロケットパイルバンカーを受けた龍蛇の身体が強張る。

蠢動と周回運動が止まり、爆煙にダメージエフェクトが混ざって散っていく。このまま追撃を、とプレイヤー達が前のめりになったその時だった。

「鱗飛んでくるぞーっ!!」

龍蛇……種族名「 裂食の(ブラスティウム) 大蛇(・スネーク) 」の鱗が勢いよく弾ける。それは 鱗の弾丸(スケイル・ショット) となって痛手を与えた下手人へとカウンターとなって飛ぶ。

何人かが避け損なって吹き飛ばされるも、大半は飛来するスケイル・ショットへの対処に成功。そしてそれを待ってましたと言わんばかりにサバイバアルが土煙から龍蛇の下へと飛び出す。

「鱗の 再生(リロード) は即座とはいかねえのはネタが割れてんだ、全員抉れァ!」

指示と雄叫びの中間のような声と共にサバイバアルが両手斧を渾身の力で叩き込んだのを合図として、プレイヤー達の攻撃が一斉に鱗の剥がれた龍蛇の身体へと殺到。

その横っ腹を掘り抜いてトンネルを作らんばかりの勢いに、それまで恐るべき迎撃機構を備えた壁として蠢動していた巨体が、明確に震えその動きを不自然に停止させる。

露骨な怯みモーション、それを見逃すプレイヤー達ではない。巨大で強力、すなわち強大なるモンスターである龍蛇を倒せる可能性が見えたのならば、それをしない理由など無いのだから。

「毒乙女がこっち来てるぜサバさん!」

「騒ぎを聞きつけてきやがったか、しゃらくせえ!」

その時、耳元に手を当てていた鳥頭の男……すなわちサンラクが何かに対して一つ頷くと、サバイバアルへと顔を向ける。

「悪いなサバイバアル」

「あぁン!?」

「 迎えが来た(・・・・・) 」

その瞬間だった。

「───人騎一体「 我身如振舞(スキル・リンクス) 」!」

壁の如く聳える龍蛇の胴を軽やかに飛び越える影。

それは如何に名馬ともいえど、明らかにその膂力以上の跳躍力であり……まさしく、騎手と騎馬が 一体(・・) となったことによる膂力の合算、 妙技(スキル) であった。

「派手な登場だなレイ氏」

「 騎手(ライダー) 系のスキルを、ようやく覚えられたので……」

「あるとは思ってたが、やっぱりあったんだなパートナーモンスター前提のスキル」

とはいえ猫や犬の派生系をパートナーとするテイマージョブと、新大陸最前線のレアモンスターであるアルマアロゴ・ヘタイロンを乗騎とした 追月の(ケトゥラフ・ド) 竜騎(ラグーン) では全くの別物と言っていいだろう。

サイガ-0が見つけ出した光と闇の騎士に関しては既にサンラクを経由して広く情報を開示したが……「サイガ-0と 緋鹿毛楯無(ひかげたてなし) 」という強ユニット同士による人馬一体のシナジーは後追いで真似られるものではない。

城砦の如き龍蛇を眼前にしてなお、それを飛び越えてきた騎士にプレイヤー達の視線が集まる。

明らかに生命を殺傷する用途に研ぎ澄まされた牙を持つ巨馬に、それとは似つかわしくない女性のアバターが乗っている事に「分かってるじゃん」と頷くプレイヤーもいるが、それは外れ値だろう。

ともかく、皆の視線を集めてしまったそのプレイヤーは、居心地が悪そうにしながらも……右目以外の全てが隠れたつるりとした仮面ごと、顔をその人物へと向ける。

「乗ってください、飛び越えます……その、スキルの持続しているうちに早く」

差し伸べられた手、それはこの場においては最も非力な少女に。