軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

12月15日:結果論的氷属性

竜を屠る灼熱の輝槍。あるいは竜にトドメを刺すその瞬間まで温存されるはずだったそれが螺旋に廻って炸裂した。焔剣が生み出す炎の出力によって、刃竜の眼球に突き刺さり、さらに押し込まれた焔剣そのものが押し出されるほどの大火力。

「ガギャララララララララララララ!!?」

まさしくそれは、正真正銘の絶叫であり悲鳴であった。

竜種(ドラゴン) 死すべし、我が輝き今この瞬間の為に在り。へし折れ剣になれど 輝槍(ブリューナク) 、非実在の輝きは竜を弑する事でのみその存在が実証される。

顔半分、目玉とか牙とかそういうレベルの話ではなく文字通り顔の半分を 熔解させられた(・・・・・・・) トマホーク。その断面からは未だ熱を帯びた煙が噴き上がり続けている……だが、それでも倒れない、斃れない。顔の半分、頭部全体で言えば四割近くが熔解し消失したにも関わらず、トマホークの四肢に宿る力はいまだ健在。それどころか頭部を見れば痛々しい傷口はしかしのっぺりとした金属のそれであり、真なる竜種という存在が既存の生物とは全く異なる 摂理(ルール) で動いていることを晒し出していた。

「ヤシロバード!!」

衝撃とキックの反動で後ろに吹っ飛ばされつつも、飛行するサイナにキャッチされることで安全圏に対比したサンラクが叫ぶ。

最強の切り札を切ってまで時間を稼いだのだから、大言壮語に見合う活躍を見せろ。名を呼ぶ一言に込められた挑発とも思える叫びに対し、しかしヤシロバードは笑う。

「ハードル上げてくれるなぁ」

口では弱音を吐きつつもその動きには躊躇いも迷いも、恐れもない。

弾倉(マガジン) をセットした瞬間、マスケット型の長銃からホログラムでデフォルメされた悪魔が表示される。悪魔は笑いながら両手のひらを差し出すようにホログラムを見る銃手……すなわちヤシロバードへと二つのロゴを見せつける。

一つは「SAMIEL Bullet-IV:Megrez」の英文と共に七つの星の内一つが大きく輝くロゴ。

そしてもう一つは「L&G」の文字をロゴにしたもの。そしてロゴを円形に囲むLewis&Gilbertの文字。

「あと六発も手に入れ……いや、せめて撃ってみたいけれど。とりあえずは……一発目だ」

規格の外にあるシステムが外付けされ、長銃に設計時点で想定されていないエラーが走る。だがエラーそのものが命令する。異常を受け入れろ、自分はお前を害するものではないのだと。

───悪魔の弾丸は、人の思うがままに放たれるのだ。

「さぁやろうかメグレズ、敵はドラゴン! せめてサンラクのアレよりはド派手に頼むよ!!」

銃は良質、弾は異常。引き金を引く 魔弾の射手(ヤシロバード) はある種高慢ともいえる確信で目を輝かせながら怒り暴れるトマホークへと照準を合わせる。

曰く、魔弾の七発目は悪魔の望むままに飛ぶ。結局のところ、魔弾の力は射手のものではないのだと……… 馬鹿馬鹿しい(・・・・・・) と、ヤシロバードは笑みを漏らした。

「銃弾は銃が撃つ為にある。銃は僕が撃つ為にある。だったら魔弾を当てるのは僕の力だ」

引き金にかかる抵抗を握りつぶすように、引き金を引き切る。銃手からのオーダーが銃の内部機構を駆け巡り、弾丸に意思が宿る。直進せよ、前進せよ。敵に突き刺さり、抉り貫けと。

衝撃が長身のバレルを駆け抜け、決して小さいとは言えない衝撃がヤシロバードの肩に叩きつけられる。だがそれすらをも完璧ともいえる制御で受け入れ、僅かの狂いもなく維持し続けた銃口から弾丸が放たれた。

空を抉り、距離を走り潰しながら駆け抜ける弾丸。それは神代の末において狂気と執念、そして何よりも信念の結晶だ。始源の眷属に対する最大のカウンター。英雄去りしのちに追い詰められた人類を救うために生み出された七種の弾丸。

一発で始源を 撃ち(討ち) 滅ぼすための、悪魔の弾丸。七つの企業が技術提携をしつつも「これこそが人類を救う唯一の弾丸なのだ」と作り上げた結論。

ザミエルバレット IV(フォー) :メグレズは神代企業「 Lewis(ルイス) & Gilbert(ギルバート) 」が作成した対始源弾頭としての一つの最終結論である。

そも、始源眷属に対する最も有効的なアプローチとはなんであるのか。哺乳類でも爬虫類でも両生類でも鳥類でも魚類でもない、そもそも人類の常識が一切通じない上から下まで未知の塊である怪物に対して、人類の常識で「必殺」を行使するならばどうすればよいのか。Lewis&Gilbertが出した答えはシンプルなものだった。

─── 止めればいいのだ(・・・・・・・・) 。

その性質がなんであれ、その物質が何であれ。それは動いている、それは活動している。

すなわちそれらは熱量を持ち、運動エネルギーを生み出している。どれだけ未知の怪物であろうと唯一、物理法則にだけは従っている。

魔弾(メグレズ) に込められた力は熱量の吸収。運動エネルギーを簒奪し、その動きを完全に停止させる。

永遠に動かなければそれは死と同義なのだ、故に第四の魔弾の力は全てを食らう最強の捕食者だ。

ジュールを、カロリーを、ニュートンを、単位の形容を問わず対象が動くために要する全てのエネルギーを奪う。

飛翔した弾丸がトマホークの左肩に命中する。外したのではなく、ヤシロバードの狙い通りに。

瞬間、着弾した弾頭が弾け…………

「結果的には氷属性っぽいよねコレ」

左肩を起点に、左腕の殆どの熱量を魔弾が喰らい尽くしていく。前述のとおり、トマホークの性質は「振動」に依存している。故に運動エネルギーを喰らい尽くし、温度を0度を下回って尚さらに下げ続けるメグレズの力は………十番目の真なる竜種にとって、まさしく天敵と呼んでいい致命的な弾丸だった。

「さぁ、僕ですらも時間稼ぎだ。メグレズの凍結効果も永続じゃないし………完全メタは攻略の華だ、頼むよカローシスさん」

オーバーヒートしてしばらく使い物にならなくなった長銃を振って冷まそうとする、という間抜けなほどにアナログな行動をしつつもヤシロバードの顔は勝利を確信していた。