軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

12月15日:吼えろドラゴン

アラドヴァルによる顔面半分の熔解。

ヤシロバードの弾丸による左半身の凍結。

並のモンスターならとっくに死んでいて然るべきダメージを負って尚、トマホークは健在であった。

「ギリリリリリリリリ!!!」

顔の半分が物理的に溶け落ちているのだからマトモに喉から音を出すことすら困難、だというのに刃の竜は高らかに歪な咆哮を上げると、凍結により使えなくなった左腕の腕刃ではなく尻尾を振動させることで飛ぶ斬撃を放とうとする。

「オオァ!!」

だが、弧を描いて振り回されんとした尻尾に飛びつく巨大な影。

ウル・イディムはその刺々しい外殻に亀裂を走らせながらも尻尾を受け止め、そして押し込まれながらも踏ん張ることで尻尾の動きを減衰させる。

「いい加減ン! 俺も活躍させろやぁ!!」

顔を焼かれ、左半身を凍てつかされ、そして尻尾を止められた事でついに大きな隙を晒したトマホークへと限界まで肉薄するサバイバアル。

サイナに地上へと下ろすように指示しつつ、空中から俯瞰してみれば短杖を三つ装備したディプスロが絶え間なく魔法をサバイバアルへと連射しているのが見えた。まさかあれ全部強化魔法か?

「 肋骨(アバラ) でも 内臓(モツ) でも構やしねぇ、砕けろ! 「 武威解放(ウェポンドライブ) 」! からの「 百響連撃(ハンズ・ドレッド・ビート) 」ォ!!」

刃部分がそのまま棍棒になっているような片手で持てるサイズの 鉄鞭(てつべん) を、さらに両手に持つことで二刀流ならぬ二棍流となったサバイバアルは双鉄鞭をトマホークの凍りついた左半身、厳密には左膝に叩きつけた。

その姿は和太鼓でも叩いているように見えるが、どういう仕掛けか一打一打が叩きつけられる度にトマホークの膝から凄まじい反響音が響く。一つ一つはガン! とかギィン! のような金属音なのだが、それが何十と重なる事で一つの大音響として鳴り響いているのだ。

「ブッ潰れろッ!!」

「グルルォオオアアア!!」

そしてトマホークの尻尾を掴んだまま渾身の膂力で引っ張ったウル・イディムと、同じく渾身の膂力でトマホークの左膝を叩き割ったサバイバアル。二つの行動が重なった瞬間、尾を無理やり引かれた事で体勢を崩し、崩れた身体を支える左足の関節を砕かれた事でトマホークの巨体が……すっ転んだ。

「刃翼封印完了! ヤシロバードさんの参考にして他のも氷漬けにしておいた! もう飛び道具は飛んでこない!!」

頭を溶かし、半身を固め、そして全身が転倒した。ありったけ稼いだ時間は、カローシスが刃翼の全てを封じるには充分すぎる量で。あとしれっと他の刃翼にも処置を施す心遣いよ。

飛び道具を失い、半身が動かず、なにより転倒した二足歩行のドラゴンに対して俺達のやるべきことは一つ。

「畳み掛けましょう!」

「蜂の巣だ!!」

「しばき回せ!」

「叩ク!」

「レッツ6P!!」

若干一名馬鹿が紛れてるし、全員バラバラの言葉で統一もクソもねぇ。だったら仕方ねぇ、俺が総括してやろう………

「ブチ殺せぇぇぇッ!!」

隙を逃すな! ミリもドットも残らないよう念入りに破壊しろ! スクラップにした上で溶かして固めてインゴットにしてやらぁ!! 10kgで何マーニになるかなぁ!?

カローシスと斬撃武器に切り替えたサバイバアルが唯一鋭さを保っている尻尾の切断を試み、ヤシロバードがなにやら大掛かりな銃座をその場で組み立て始め(二度見した)、ウル・イディムが最も頑丈だろう胴体を承知の上で破壊せんと圧倒的暴力を叩きつける中……俺はトマホークの頭部、片方だけ残った竜の眼と逃げ隠れすることなく睨み合っていた。

「いいね、弱りを見せない敵は一発勝負なら好意的に受け取るぜ」

周回だとゴミだけどな。周回する時は弱いところだけを見せて欲しいし、打たれ弱くなって欲しい。しかし見てくれだけなら死体と言われても違和感のない姿を晒していても、トマホークは恐るべき竜としての威圧を視線だけで叩きつけてきた。

大したやつだ、タダでは死なないと言わんばかりの姿……いや、本当にタダでは死なないと 叫ぶ(・・) つもりか?

ヤシロバードが放った弾丸による凍結は左肩を起点としたものだ、それ故に着弾点から近い首の何割かも凍結しているが……それは逆に言えば、首の残り何割かと頭部は凍結の影響を受けていないということ。

「ギリリリリリリリリ………!!」

「ハッ………ハハハハハ! ナイスガッツトマホーク! 上等だ! 最高だ! 勝負だッ!! 声のデカさで負けても 大言壮語(言葉のデカさ) じゃ俺が勝つ!!」

トマホークの喉が低く唸りながらも、同時に高く擦れるような音を立てて震え始める。周囲の大気がトマホークの口腔、その奥へと消えていく。そして轟轟と響く音は今まさに竜の口より放たれんとボルテージを上げていく。

それを間近で目撃した俺は逃げるでもなく防御を固めるでもなく………受けて立たんと、息を大きく多く吸い込んでいく。

「晴天流……ッ!」

晴天流の雄叫びは雲を散らし、天を震わせる。俺は直接見たわけではないが、かのウェザエモンはフィールド全域に即死級の衝撃波をぶち撒ける「 天鬼夜咆(てんきよほう) 」なる(ダジャレかよ)必殺の技があるらしい。

晴天流の【空】は吐息の 技(スキル) ……ならば俺のブレスは熱く、お前を震わせる!!

「……「 蒼暁(そうぎょう) 」!!」

自身を中心に全方位を震わせる 蒼然(そうぜん) 。

一点に吐息を集中させて貫く 蒼穹(そうきゅう) 。

しかして 蒼暁(そうぎょう) は範囲で蒼然に劣り、貫通力で蒼穹に劣る。だがそれでも、暁の吐息は蒼然よりも蒼穹よりも吐息に 熱い灼熱(熱ダメージ) を付与する。そして!

「恐るべき竜はお前だけじゃない、俺はお前よりも恐ろしい竜を知ってるぜ」

何せ頭が三つあるんだ、恐ろしさも三倍段って訳よ。

インベントリアから取り出したそれは……文字通り、骨の髄まで緋色に染まった恐るべき竜の 下顎(あぎと) の 装飾品(アクセサリー) 。

「 まずはお前から(・・・・・・・) 初陣だ」

あの日撃破したドラクルス・ディノサーベラス” 緋色の傷(スカーレッド) ”から生み出されたアクセサリー。

それこそがこの「 恐・竜王装(レクセスク) : 枢機なる顎(カーディナルレッド) 」!!

恐るべき竜の顎、緋色の暴君の象徴たる灼熱を生み出す顎! その力を宿すこのアクセサリーを身に着けた者には緋色の炎を生み出す力が与えられる。

さぁ覚悟しろトマホーク、熱ダメージ付与のスキルに掛けることの…… 息吹(ブレス) 系スキル及び魔法に炎属性を付与するアクセサリー!!

「消し飛べえええええええええええええ!!!!」

「ギララララアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

トマホークの全てを引き裂くような叫び。それに対抗するように張り上げた声、吐き出された息が緋色の下顎に触れることで炎に変換された俺の叫びが互いに破壊力を伴う 息吹(ブレス) となって激突する。

拮抗は一瞬、そもそも声帯のデカさからして違うのだから、俺の方が押し込まれるのは自明の理………だがなトマホーク、態度は俺の方がデカいんだ。

強化されるのは当然(・・・・・・・・・) だと声すらかけないくらいにはな。視線だけ向けておけば後は十分…………本当に、本当に何度だって癪なのだが、奴はこっちが欲しい支援を完璧に理解しているからな。

「はぁいサンラクくぅん……ちゃあーんと分かってるよぉ……【 果てに届く大轟令(ビヨンド・ザ・オーダー) 】!!」

俺へと付与された力はいたってシンプルなものだ。肺活量を増強し、声量を………厳密には「喉を震わせる吐息に強化補正を付与する」というただそれだけの強化魔法!

だが秋津茜の【竜息吹】がそうであるように、晴天流【空】の技がそうであるように。それこそがなによりの強化になることもある!!

うなじに当たり、頚椎を貫いて喉を包む魔法の力が吐き出す息にさらなる力を与える。炎がさらに色鮮やかな緋色に変わり、より密度を増した息吹がトマホークのブレスを引き裂いていく。

トマホーク、 人類(プレイヤー) の秘密を一つ教えてやろう。

「実は肺活量はぁぁぁぁぁぁ!! スタミナ依存だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」

スタミナ消費量を軽減するスキルの効果が、俺の叫びがトマホークのそれを引き裂ききるだけの時間を齎す。空間を歪めるような竜のブレスを 恐竜(おそるべきドラゴン) の炎が引き裂いていき、己が顔に近づく光熱にトマホークが目を細めた瞬間。

ついにトマホークの顔面に到達した炎が、二重の熱で竜の顔面を爆炎で包み込んだ。