軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

12月15日:イかれたパーティメンバーを紹介するぜ!

その竜は全身が刃で覆われている。鱗が鋭いとかそう言う次元ではなく、刃物で竜の形を作ったかのような恐ろしい存在であるらしい。

謎多き「ドラゴン」というコンテンツに俄然やる気を出した俺達は、サミットが終わってすぐにミノタウロス女王のもとへと向かっていた。サバイバアルが怪鳥を彷彿とさせる奇声とポーズでささみちゃんをおちょくっていたが……全く、小学生じゃねーんだからもうちっと慎み深くしろっての。

あっ! 馬刺し君じゃーん! うぇいよーう、わっちゃごーな、ぷーちょへーんざー。

「さて、気を取り直して」

「君、よくあんな煽り散らかして気を取り直せると思ったね」

「人生はセーブデータ分けられないけどメンタルはセーブデータ分けた方がいいぞ」

「………?」

カローシスUQが澄んだ目で全く理解していなかったが、理解できる日が来るといいね……単セーブデータは破損した時に取り返しがつかないってことだよ。

それはそうと、ホルスタインミノタウロスからその武装竜の情報を聞き出した俺たちは、目指せドラゴンスレイを掲げながらキャッツェリアを出立したのだった。都合よく転移要員がいるのでなんか忘れ物しても速攻キャッツェリアに戻れるのは大きい。

「北西の高原地帯、ねぇ」

「なんつうか、実感薄過ぎてアレだが今俺たちプレイヤーの中でも一番新大陸の攻略を進めてるんじゃねえかこれ」

どうだろうな、大々的に喧伝してないだけで案外俺たちよりも先に行ってるプレイヤーもいるかもしれない。なにせ新大陸は確かに魔境だが、同時に雄大だ。全てのモンスターが必ずしもプレイヤーを殺意むき出しで狙い続けるわけじゃないし、襲ってくるモンスターも別の 食いで(・・・) がある別のモンスターをスケープゴートにすると案外許してくれたりする。つまり本気で逃げに徹すれば案外樹海や砂海を抜けることはそう難しいことじゃない。

まぁ、たまにお前本当に原生モンスターとしてデザインされた? 確実にプレイヤーを殺すために調整されてない? って奴もいるが………火山荒野に出現する灼熱カメレオンとか。触れたら死ぬ灼熱の舌でクイックドローするのは人間にやさしくないと言えよう……。

「シャンフロがゲームでよかったね、想定北アメリカ大陸規模なんでしょこれ? 普通だったら徒歩とか正気の沙汰じゃないよ」

「何故人類は空中を五歩で駆け抜けられないのか」

「サンラクくぅん……人類の定義が狂ってるよぉ?」

人類のその先に行ってしまった、俺………。

基本的に雑魚モンスターは寄ってこないし、たまに来る強力なモンスターも………

「ヌンッ!!!」

ボギョオ!! と生物の身体で鳴らしてはいけないタイプの音と共に吹っ飛んでいった猿っぽいモンスター。そしてどれだけの威力でストレートを叩き込んだのか、拳から摩擦熱の煙をくゆらせるウル・イディム氏………

「……おいサバイバアル、パワーアタッカーポジション完全に食われてるぞお前」

「……いやこれはもう完全に種族差じゃねぇか、皮膚の色どうこうのレベルじゃねぇよ」

今回の刃の竜討伐パーティには、約二名NPCが混ざっている。一人はサイナ、出しっぱにするとディプスロとサバイバアルが 気持ち(セクハラ紛い) 悪くな(のことをす) るのでインベントリアで待機中。

そしてもう一人が自称オーク……もとい 王狗(オーク) のウル・イディム氏である。悩める婚活男子(一応性別的には雄個体であるらしい)な彼は、もう見た目からして戦闘種族という感じだったのだが………実際に何度か戦闘を見た限り、ちょっと笑っちゃうくらいに強い。常時 人間(プレイヤー) がスキルを発動している状態に近いというか、通常攻撃がプレイヤーのスキル使用攻撃と同等の火力を出している。

しかし、この最強オークさんをパーティに入れることで困ったことも。

「………うん、やっぱりプレイヤー側に入ってくる経験値が著しく低いね」

「これ多分彼に殆ど持ってかれてますよ、徹夜しても効率が悪い……」

ウル・イディム氏をパーティに入れた状態で戦闘すると、どうやら経験値の殆どを彼に持っていかれるらしい。さらに言えば彼含めて六人パーティだというのにドロップするアイテムの量も妙に少ない……15人パーティでの活動に詳しいカローシスをして「15人パーティ二組合同でモンスター倒した時並のドロップ量」との事だ。

要するに勝つだけなら問題ないが、アイテム周回やレベリングという面では完全に妨害要因って事だろう。アイテムがドロップしないのは恐らくウル・イディム氏の猛攻を受けたモンスターが部位破壊とかそういう生易しい表現では収まらないレベルで粉砕されているからだと思うが………持ってかれた経験値は一体どうなっているんだろうか。

「……正直どうする? ドラゴンの素材もこの調子じゃいない方がってレベルだけど」

「元々俺らが来なかったらドラゴンソロ討伐してたかもしれない逸材だ、逆に言えばこのレベルの戦力をぶつける相手ってことだぜ?」

これが「人間五人でどうにかなると思ってないから本命のウル・イディムを保護者枠で同伴させる」ならまだいい、癪だけどな。

問題は「あのウル・イディムでもソロだと不安だから人間五人の追加は願ったり叶ったり」のパターンだ。このゲームはイベントフラグを物凄く自然な流れで会話中に設置するから話をちゃんと聞かないと僅かな食い違いが致命的な亀裂になりかねない。

「しかし、ドラゴンってのはどういうもんなんだろうな。このゲーム、ドラゴンに関しちゃ王道から外しまくってんだろ?」

「ジークヴルム」

「人造生物ですよねアレ」

「邪道だねぇ……」

王道ラスボスムーブしてるのに勝手に邪道扱いされて草葉の陰でジークヴルムも泣いてるぞ。しかしドラゴン、ドラゴンな………

一歩進む度、高原に……かの竜に近づいていく。果たして何が待ち受けているのか、それはこの目で見るまで分からない。

歩く中で思い出されるのは、鍛治師達の言葉───