軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

12月14日:道草完食

因縁は運命に繋がる入り口だ。かつてそうやって新大陸東方の頂点に立った三つ首の恐るべき竜がいたように。

あるいはこいつとの因縁は、まだ見ぬ新種……まだ見ぬレアアイテムに繋がったのかもしれない。

だがあいにく俺は因縁が育つのを待つようなライバル寄りのラスボスムーブをするつもりはない。売られた喧嘩はチップもつけて買う。そもそも先に売ったのは俺なので商品発送が遅れたお詫びとして色をつけて敗北を発送してやらねばなるまい。

「へへへ……過剰伝達抜きならそこそこ制御できるんだぜ、俺はよ………」

成功率は多めに見積もって50……いや45%。臨界速の攻撃転用は反動で吹き飛んでそのまま死ぬ可能性をゼロにする事はできないが、今の俺ならそんなに悪くない確率の賭けだ。

自慢ではない、俺はシャンフロで最も水晶群蠍系列のモンスターを狩っているだろうという自負がある。

一見打撃に弱そうに見えるが実際はボディの殆どが耐衝撃に優れている事は知っているし、その上で耐衝撃のカラクリは脚から衝撃を逃している事も知っている。

そして何より、実は打撃よりも斬撃よりも……いや、まぁ総合的に見てもどの攻撃も回数が必要だから大差ないか。

故に狙うのは脚だ、脚を狙うべし。脚から爪系の素材が出るのでなんなら尻尾より脚を狙うべし。そして二、三本へし折れたらあとは思う存分ぶっ叩けばいい。

破壊属性が無くてもひたすら叩けば割れるのがこのモンスターの良いところだ。まぁ俺のスペックだとそれでも大変なんだが……時々レイ氏とかマッシブダイナマイトみたいなバカ火力通常攻撃が恋しくなる。

くっ、ここにいるのがタイムチェイサー2〜琥珀の弾丸〜のプレイヤーアバター「サンラク」であれば……あのゲーム、主人公が拳銃使いなんだけどサブタイにもなってる琥珀の弾丸だけ無限に威力を上げられるので射程距離とか精度とか全部犠牲にしてパワーに特化した弾丸を至近距離から叩き込めば大体勝てるんだよな。

その代名詞がボクシング狙撃(狙撃ミッションなのに隠密しながらターゲットのすぐそばまで近づいて至近距離から発砲する攻略法を揶揄したワード)………ボクシング狙撃は流石にネタだけどボクシング銃撃そのものはたまに役立つから困る。

「因縁はここで断ち切る。お前の素材は有効活用させてもらうぜ」

ソロ討伐なので素材がうまいことうまいこと。さて、俺の方はひと段落ついたけど下はどうなってるかな。

なんか戦ってる最中にめちゃくちゃ揺れてたけど……あ、お隣さんどうも。攻撃中? 君らがそんな集中火力する時って大抵ロクでも無いことになってますよね?

左右から狙撃される危険に気をつけつつ、下を覗き込む……

「うわぁ……初めて見た」

何やったんだあいつら。グスタフと通常フォルトレスが生き残ってる状態でドーラと女王フォルトレスが出現してる状況とか初めて見たぞ。なんだこの地獄のタッグマッチ。

「………これ下降りたくねぇな」

外縁部でも巻き添えで酷いことになりそうだ。

なんか魔法エフェクトとか見えてるし悲鳴と思しきか細い音も聞こえた気がしたのでもうちょっと暇つぶして行こう。

どうせ蠍達も迎撃モードだ、採掘する時間は普段より長めなはずだ。

「やっぱここツァーベリル帝宝晶しか出ないのかなー……っと」

ツァーベリル帝宝晶、便利だけど武器でも防具でも加工すると性能切り替わり効果がデフォルト効果になるのがな……ん?

「ん? ポストイ・ツァーベリル?」

へぇ、ほぉ……魔力が蓄積されていないツァーベリル……性質的にはラピステリアに近いのかな? いいね、こんなレアドロップがあったとは。

ヒューッ! 戦争経済は最高だぜ!!

……

…………

………………

Q.女王とドーラがガチで戦うとどうなる?

A.こいつらと上にいる蠍以外みんな死ぬ

「素材拾えた?」

「銃が五つ程スクラップになりました」

「もう一周いいですか?」

「これプレイヤーがどうこうできねぇだろ」

「トレジャーキャプチャーって魔法を倍化するとどうなると思う?」

成る程、ディプスロ以外は全部拾えませんでしたと。

「いやそもそもこいつが地盤掘り起こすからあのさらにデカい連中が目覚めたんだろ!?」

「いやぁ、知らなくってねぇ………んん゛っ、ごめんね?(幼さ重点)」

「ぐっ」

「あだっ!?」

それで引き下がるのは流石にもう手遅れだろ……脳みそが。

とりあえずもう一周する予定はないし、爆音が響き続ける戦場に再び飛び込むつもりもない。あと今この瞬間、余波で飛んできた甲殻の欠片によってテントが粉砕され、巻き添えでカローシスがHPが半減したのでいい加減退避しないとまずい。

「もういいだろう、道草終わり! 朝だぞもう」

「朝六時に遊んでてもいい。それって………凄くないですか?」

「カローシスさん……いいんだ、いいんだよもう……全力で遊ぼう、今のあなたはそれが出来るんだ……っ!」

ヤシロバードに悲しげな声をかけられても、カローシスUQは無邪気に笑っていた………

気を取り直して。

「キャッツェリアまでのルートはここから南西……いやこれ西南西くらいか? そこに峡谷があるらしい」

「しれっと新大陸のマップ取り出したな」

「あれサバイバアル知らないの? このマップならライブラリがもう公開してるよ」

「マジか」

キャッツェリアの詳細な位置はエルクに袖の下を渡して教えてもらった。時間が無いのでな、多少のヴォーパル魂と引き換えに効率を買ったと考えればまぁいい買い物だったと言える。ヴォーパル魂は通貨じゃねぇ、カローシスのことを言えないな。

ドワーフ達が住んでいる火山から近い、というかほぼ近所だが……どういう経緯で火山と峡谷が隣接してるんだこれ? 高校生の別に専門にしてない程度の頭だがその二つが両立する条件が分からんぞ。

例えば……なんかもうマッハ2くらいの速度で流れたマグマが地盤抉ってそのままどっかまで流れ去って行ったとか? いや、そもそも下にあるのが大陸じゃなくて大陸級のモンスターな時点で既存の物理法則で考えるだけアホらしいか。

それこそたった一匹のモンスターがこの光景を作ったのだ! とか言われてもゲームなんだから受け入れるしかないわけで。

「どうせなら目的地まで辿り着いてから朝飯なりなんなりで休憩にしようぜ」

目指せ猫の国、戦場よりかは平穏な国だろうよ!!