軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

12月14日:皇帝の道草

この戦場で人類種が英雄になる事は出来ない、何故ならあんまり目立つと上から狙われるから。

そんなわけで現在のクソアプデによる装備ロストを避けるべく、地獄の戦場トライアスロンを終えて鎧袖一触という言葉すら生ぬるいけちょんけちょんな有様のパーティメンバー達を眺めながら一言。

「感想は?」

「へっ……悪かねぇな」

「懐かしい気持ちを思い出したよ」

「二徹下さい、完全攻略して見せますよ」

「虫の交尾方法って知ってる?」

成る程、やはり鯖癌勢からすれば懐かしさを感じる類か。いや流石に孤島にここまででかいモンスターはいなかったんだが……どっちかというと危牧なんだよなこれ。アホは無視。

「つーかよくお前こんなの倒せたな?」

「戦争は、いかに勝ち馬、乗れるかよ」

「季語は?」

「戦争」

「オールウェイズな季語だなぁ……」

人間の 業(ごう) だねぇ……さて、それはさておき一通り お楽しみ(・・・・) いただいたところでそろそろ俺が手本を見せてやりますか。

「ここでの賢い戦い方ってのは真っ向から勝負を挑むんじゃなくて漁夫のりっ」

上の方から射出されたビームで俺は死んだ。

「あっ」

「えっ」

「何?」

「ぶふっ」

…………うん。

テントからのそりと這い出した俺は地面に散らばっている装備類を回収し、ふぅとため息を一つ。

「サンラクくぅん……… 感想は(・・・) ?」

「不慮の事故です」

参ったな……帝晶双蠍くん達からこんなに熱い眼差しを向けられていたとは。つーかピンポイントで俺だけ狙ったよね? ん? あれ今見間違いじゃなければクッソピンポイントで俺がフィールド内に入った瞬間に狙撃しましたよね?

ちょっと試しにもう一度……

チカッ

「はい回避ーーーっ!!」

間違いない、明確に狙撃されている。一体何故…………うっ、 頭痛(回想) 。

…………

……

確かあれは最後にここに来た時のこと……確かあの時、リアルの方で登校の時間が迫っていたからあと一息で倒せそうだった蠍を放置して 落下死(逃げ出) した時のこと……あ、これでオチてるわ。なるほどね? もしかして「そのツラ覚えたからな」コマンド実装されてる?

……

…………

頭痛終わり。

「なぁるほどね……」

「ンなところにモンスターがいやがるのか」

「ハイパーフレキシブル&エクスプロージョン・ビーム・スコーピオンの生息地だよ、あそこにしか生息してないから絶滅危惧種だ」

いやまぁそれ言ったら基本的にシャンフロに登場するモンスター六割くらい絶滅危惧種みたいなことになっちゃうか。一応いろんなところで見かけるモンスターもいるにはいるけど、それこそヴォーパルバニーとか。

「僕はビーム銃も好きだよ、ゲームならではって感じで」

「上から射撃されることを考えると……プラス1で三徹、か」

ええい、マジで埒が明かない。ていうかどちらにせよここで一晩過ごすつもりもねぇ! このままじゃ単にこの場所を教えただけになってしまうが……まぁいいや、どうせ遅かれ早かれだ。マッピング勢のトットリとたまに話すことがあるから既に少なくない数のプレイヤーが樹海の先に進んでいるのは分かっているんだ。それに個人で独占できるような素材でもないしな……

「しゃーない、またなんか面倒臭くなったようだしそろそろ出発………」

「「「え?」」」

「はぁい」

嘘だろ同意したのがよりにもよってディプスロだけ? 他三人残る気満々? ワット? パーティリーダー俺だよね? リーダーの言うことに逆らうんですか? いやでも逆の立場だったら俺も残るだろうしなぁ………はぁ、仕方ねぇ…………

「カローシス、徹夜は無しだ。一晩で終わらせるぜ」

「一晩で終わるってことは一徹すれば五回ぐらい周回できるということでは?」

「さらにやばいのが出てくるのでやめた方がいいと思うよ」

今戦っているフォルトレスとトレイノル・グスタフよりもさらに大型の女王フォルトレスとトレイノル・ドーラの戦いは地獄絵図という言葉すら生温い。通常フォルトレスが生み出すアーミレットの数を仮に10とすれば女王フォルトレスが生み出すアーミレットの数は低めに見積もっても50……下手すりゃ十倍近い数を生み出す。そしてドーラのポイズン 列車砲(キャノン) の威力および範囲はグスタフの五倍以上……基本的に地上にいたら確実に死ぬ。

しかも下の階がうるさいと上の階に住んでる蠍達がキレてビームを撃ち始めるので上から 雨漏り(ビーム) 、下は地震の大地獄。過去にその戦いを生き残って素材を確保できたのは割と奇跡に近い。

つまりなんだ。逆に言えば………人柱四人くらいを下の戦場に派遣しつつ、俺自身は俺をご指名の蠍君と憂いなく決着をつけるという構図はまあ、アリ寄りのアリと言えなくもない。帝晶双蠍は下があんまりに騒がしいとヘイトが分散し始めるからな……よし。

「一流は食べる道草にもドレッシングをかける! 故に 道草(シーザーサラダ) !!」

「随分と愉快な美食家だね」

「食える草を吟味するとかじゃねぇんだな……」

「雑草ってやっぱり青臭くて苦いだけなんですかね?」

「「「猫じゃらしは歯に引っかかる」」」

「わぁ…… 3P(ハモった) ……」

孤島あるある、その9。

猫じゃらしを見て「これワンチャン小麦的な感じにならねぇ?」と文明人的なことを考えるけど最終的にそのまま食って延々と歯に引っかかる。

……

…………

「ウッソでしょ!? 至近距離シャッガンで凹みすらしないの!?」

「いやお前こんな、登るとかしがみつくとかそういうレベルじゃねぇだろサンラクァ!!」

「いやー楽しい! ロクに準備せずぶっつけ本番で戦うの久しぶりだなぁ!!」

下から何か愉快な鳴き声が聞こえてきた気がした。いやでもこの轟音の中、そんな都合よく人の声が聞こえるはずがないのできっと気のせいだろう。

目の前には不自然に鋏の欠けた 帝晶双蠍(アレキサンド・スコーピオン) 、成る程確かに見れば見るほど掠れかけてた記憶がはっきりと形を取り戻す。

成る程確かに、これに関しちゃ俺が悪かったよ。蠍相手の戦闘が半分くらい作業周回になってたから中途半端な形で逃げたのはヴォーパル魂的に良くなかった。

「恥は重ねて塗る前に洗い落とさなきゃあな………いや、本当に悪かった。このままじゃあ親友は名乗れないな」

古き良き河川敷で友情を深めるように、正々堂々の殴り合いでしか分かり合えない友情がある。俺はそう信じている………さぁ、決着つけようぜ!!

「サンラクくぅーん、がんばえー」

「そこ射程範囲だぞ」

「え? んぴっっっっ」

戦争中はみんな気が立ってるからな、特に外縁にへばりついてると近くの蠍が狙撃するんだよ……哀れな女め、戦場に安全な観客席なんてどこにもないのさ。