軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

12月13日:参加条件は徹夜上等

「というわけで個人的に二徹くらいしてもまぁ大丈夫だろ、って面子を集めてみました」

「サンラク? 僕社会人なんだけど」

「どうせしれっと会社休みにしてるんだろ? 顔に書いてある」

「参ったな……洗って落ちるかな?」

「表情に油性水性あんのかよ」

新大陸、「海蛇の林檎」。普段の喧騒はどこへやら、俺含めて 五人(・・) しかプレイヤーがいないがらりとした酒場の中で俺達は作戦会議……というよりも、音頭をとった俺が計画発表をする、という形でテーブルを囲んでいる。

「あー……とりあえず自己紹介しとく?」

「今更過ぎねぇ?」

いや俺もこの場にいるのが俺が呼んだ ロリコン(サバイバアル) 、 乱射魔(ヤシロバード) 、 変態焼肉(ディープスローター) だけならさっさと本題に移ってたけどさ……

ちら、と四人分の視線がこの場にいるもう一人………ヤシロバードが「年末まで戦えるらしいから」と連れてきた追加人員こと、カローシスUQに向けられる。

「話はヤシロバードさんから聞きました。足は引っ張りませんよ、それに……」

「それに?」

「───フルダイブ状態なら五徹できますよ、リアルで瞼にガムテープ貼って三徹するよりはイージーだ」

すっごいキメ顔ですっごい悲しい台詞が飛び出してきたわ。えぇ……? これが日本の標準的な社会人の姿だとしたら俺国外逃亡したくなっちゃうよ……

ヤシロバードも所属している、午後十時以降じゃないとログインできないような社会人限定クランのリーダー、カローシスUQ。俺は何度か会った事があるが……なんだろう、アバターに変化はないはずなんだが 魂(中身) の鮮度が蘇っている。

「周回なら任せて欲しい、二十四時間戦える」

「社畜根性が漏れ出ている……」

「実際カローシスさんは強いし便利だよ、僕が保証する」

神秘の剣(レーツェル) 、話に聞く限りでは普段使いに死ぬほど向いてないという印象だが……デフォルト詠唱破棄で威力減衰しない物理前衛も担える魔法職、と考えれば神秘の剣を万全に扱える者は剣聖にも劣ることはないだろう。

「それでぇ? そろそろ僕らを集めてまで何するつもりなのか教えて欲しいなぁ……サンラク君?」

「そうだな………簡単に言うとゴルドゥニーネ絶対凹ますからその為にサブクエ全部回収する」

「 本当(マジ) に要点しか喋ってねぇなこいつ……」

とはいえ長々と語るもんでもないだろう。対無尽のゴルドゥニーネ戦線の構築はどちらにせよ必要なものだ、戦って分かったが軍団系、巨大系、そしてゴルドゥニーネ本体という強ボス系でもある複合タイプの超クソボスであるあの蛇女は、十人二十人でどうこうできるもんじゃない。

「クターニッドじゃない、ジークヴルムと同じ千人規模のレイド決戦タイプ………人も兵站も多すぎて困ることはないし、何よりLv.150で頭打ちのままじゃ勝てねぇ」

その為にいちいちリアクションが鬱陶しいディプスロを酷使してまでいろんなところを駆けずり回って今に至る。

なんかこいつに借りを作るとなんか上がっちゃいけないゲージが上昇してそうで不安になるが、毒食わば皿までだ。死ぬ事に変わりないならドリンクにもう一杯毒をくれ、たまに毒ダメ関連で称号出る時あるから油断ならん。

世の中には無双ゲー系のくせに何故かNBC兵器が充実してるコンセプト完全否定ゲーなんてものもある。無双ってのは「千人来ようが俺一人で全員倒すぜ!」って意味であって「ククク、このボタン一つ押すだけで千人の命が容易く消える……!」って意味じゃねぇんだ。

大量殺戮兵器開発ゲーとして見ると不謹慎だがちょっと楽しかったのがまた何とも言えないクソゲーの味わい。

余談だが界隈では炎上したゲームメーカーの顛末を見届ける事を「花火大会」と言う。他者の破滅をエンターテイメント扱いしてる辺り、 ウチの界隈(クソゲー好き) が一番どうしようもねぇな!!

「というわけで自己強化プラス未クリアのユニークとか諸々全部やりつつレベリングします」

「ん? レベルダウンしたのかよ?」

「ちょっとな」

今の俺はレベル140。下げて分かったがこれ 到達技能(プライムアーツ) はレベル150以下になると機能停止するんだな……パッシブなので試しに樹海で戦ってみたが結構動きに違和感を感じたのでさっさと150に戻さないとな……

「10だけ下がるってのは既存のレベルダウンじゃ無理だよね? バハムート関係?」

「そう、ベヒーモスで下げてきた」

そう、ベヒーモスで………うっ、頭が………

………………

…………

……

「エ、エタゼロ……お前、一体何が……!?」

エタゼロ。ベヒーモス攻略の際に何というか、 極(キワ) まったモノを感じさせる活躍で共にベヒーモスの最奥に辿り着いたプレイヤーの変わり果てた姿に……この俺をして、絶句するしかなかった。

「へへへ……っ、後悔はしてねぇ。後悔はしてねぇんだ、サンラク……俺は、望んでこうなったんだ」

「望んで、って……お前、こんな……」

狂気。ああそうだ、間違いなくエタゼロは狂気に侵されていた。だが……なんて澄んだ眼差し。

「ここに来たって事はよ……お前も、 キメ(・・) に来たんだろ? 知り合いのよしみだ……いろいろ、教えてやるぜ?」

あの、隆々たる筋骨のエタゼロは……死んだ。ここにいるのはその成れの果て………

「エタゼロ……本当に、後悔してないんだよ……な?」

「ああ……俺の人生は、今最高に充実している」

見下ろした(・・・・・) 先、そこには5歳児程度にまで 縮んだ(キャラメイク) されたアバターと、レベルを捧げて試験管……言うなればベヒーモスの「胎内」と言っても過言ではない場所に通い詰めた 男(Lv.15) が、確かにいたのだ………

彼は、とても幸せそうな顔をしていた。