軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

その在り方こそが輝き

今の気分は水を吸ったボロ雑巾だ。兎にも角にも身体が重い、眉間から前頭葉にかけてをコンクリートで固められたような疲労感というか。休憩無しのぶっ通しでテンション上げ続けてるとよくこうなるがやはり慣れない。

「うごごご……」

だがここで寝転がる程俺は愚かではない、何せ目の前には宝の山があるのだから!!

「皇帝陛下……確かにお前は 強敵(とも) だった……!!」

尻尾の「聖剣」を破壊するタイミング、最後の最後に剣ではなく盾を構えるという選択、一つでもズレていたら屍を晒していたのは俺の方だっただろう……。

時間制限付きの発狂モードだったり自在に動く剣鋏のアドバンテージの放棄だったり、勝てないように見えて実は後半の方が楽なのがモンスターデザインとして優れているなぁと勝った今だからこそ正しく評価できる。

これで負けていたら「クソモンス」の焼印を押し付けていただろうからな。いやでも最後のアレはまぁまぁクソだわ、フレーム単位の即死ギミックやめーや。

「ふ、ふふふふふ……」

ソロ討伐、ソロ討伐である。厳密にはサイナがいるのでソロではないが、このゲームのアイテムドロップ率は「プレイヤーの数」で増減する。つまり経験値効率を無視すればNPC十四人を引き連れたプレイヤー1人による十五人編成が最もアイテムドロップ的に効率が良いことになる。

「サンキュー幸運ステータス……」

ドロップアイテムの中でも一際輝きを放つ輝ける宝玉。通常の金晶独蠍であれば黄金そのもののような輝きを放つ宝玉なのだが皇帝陛下の核、すなわち心臓は一味違うようだ。

ふむふむ、「 皇金(おうごん) の 煌耀核(こうようかく) 」ね……宝石塔を食うという設定が反映されているためか、夜色の宝石であったり、漆黒の結晶であったりと明らかに黄金以外の材質が混ざってパズルのように一つの「玉」を作り上げている。美術館とかに飾ってあっても違和感なさそうだな。

むほほ、皇帝陛下め……随分とまぁ溜め込んでいらっしゃったようで。財産分与とか面倒臭いから俺が独占するね、有効活用するから安心して成仏してくれ。

だがどうやら"皇金世代"の亡霊は俺という革命家を生かして帰すつもりはないらしい。

「警告:周囲の水晶群蠍に動きが」

「見りゃ分かる、サイナ……うん、しかしお前見事に すっぱり(・・・・) 斬られたな」

「この状態での活動は困難です」

あの時、"皇金世代"の放った三度の超速光線……その最初の一発目は俺の脚を斬り裂かんとする低空の一閃だった。俺はジャンプで回避したわけだが後ろにいたサイナはそうではなかったらしく……全てが決着して後ろを振り向くと、そこには膝から下を切断されて土をペロっているサイナの姿があったのだった。

幸いその一発目で倒れたから二発目の動体狙いが上を通り過ぎたので怪我の功名と言うべきなのか……ともかく、この状態で戦闘は不可能だろう。

以前のように戦術装甲を装備させれば動けるかもしれないが、そもそもこの状況で歩けるようになったから何だというのか。足の本数がなんだ、タコもダルマも津波に飲まれたらおしまいよ。

「まぁいいさ、インベントリアに避難すればいいだろ」

「回答:不可能です」

「何故に?」

おっと兄弟落ち着けよ、そんなじわじわ包囲網を狭めなくてもいいだろう?

「格納鍵インベントリアの基本機能は装備時点で二号人類の肉体そのものにインストールされる為、インベントリア自体が欠損などで損失した場合であっても行使可能ですが、エンター・トラベルシステムに関しては演算および座標関連の……」

「長い、簡潔に頼む」

「インベントリア本体はリスポーンシステムが発動した時点で再構築されますが、現時点ではインベントリア本体が一時的な消失状態にあるため 当機(ワタシ) や 契約者(マスター) の格納空間への転送が出来ません」

「ふーん……」

ゆっくり、ゆっくりと包囲網を狭めるという蠍達の行動はこれまでに経験のないものだ。絶対に殺すという意志がすごい、なかなかエグいデストラップじゃねーのかこれ……それとも何か突破手段があるのか? うーん、分からん。

とはいえ逃げられないならサイナはどうにかしないとなぁ。俺はいいんだよ、ミンチになったって一分経たずにエイドルトのセーブポイントで目を覚ますだけだし。

さてどうしたものか、いや実のところ既に「答え」は手元にある。あとはそれをするかしないか……ただそれだけなのだ。

「はぁ、値千金の価値があると信じよう」

「─── 契約者(マスター) 、それは」

「気にすんな、元々枠が余ってたから無理やり埋めてたところあるし」

左腕からインベントリアが消えた事で転送が出来ない? アイテムの出し入れが出来るなら問題ない。アクセサリースロットからムカデ人形を外して枠を空け、代わりに別のアクセサリーを装備する。

……そう、 二つ目のイン(・・・・・・) ベントリア(・・・・・) をな。

「両腕に腕時計付けてるみたいだなコレ、なんか笑えてきた」

無限を二つ装備する、つまり今の俺は無限をも凌駕した男なのではなかろうか。茫然と俺の右手首を見つめるサイナをチョップしつつ俺は立ち上がって周囲を睨みつける。

悪いが兄弟、皇帝の亡骸なら爪の先まで俺が有効活用するために全部回収しちまったんだ。なんかこう、空に遺影みたいなのがぼやっと浮かび上がる感じで思いを馳せて弔ってやれ。

「どうしたサイナ、まさかこっちのインベントリアには避難できないとか言わないよな……」

「……いえ、可能です。ただ、この為だけに二つ目を装備するなど、」

「うるせー、後悔なら後で済ませとくから今はさっさと避難しとけ」

「……了解: 契約者(マスター) の行動に最大級の感謝を」

そんな感謝される事でもないんだけどな……所有物という言い方は悪いがそれなりに好感度を稼いでるNPCの命はインベントリアよりも重かった、それだけの話なのだから。

「さて、待たせたなブラザーズ」

おーおー、まさかここまで詰め寄ってくるとは。相撲の土俵くらいか? どういう感情で囲んでるのこれ? 殺意なの? 静か過ぎて怖いんだけど。

とはいえ僅かにでも動こうとすればガチンガチンと水晶群蠍が鋏を鳴らす……やっぱこれ生かして帰さんって事なんだろうか? まるで「最期に言い残す事は?」とでも問いかけられているようだ。

ではこう答えよう。

「手負いの獣が一番恐ろしいんだぜ……!!」

フハハハ! 見せてやるぜ愚民共! 貴様らの皇帝を倒した事で手に入れたこのエクゾーディナリー・スキル「 皇金時代(ゴールデンエイジ) 」の力をなぁ!!!

あの輝ける剣と光を操る蠍のスキルだ、それはもう一騎当千に相応しい攻撃スキ───

・ 皇金時代(ゴールデンエイジ)

発動時点で発動者が所属しているパーティの人数と、効果適用中に発動者を除く「戦闘に貢献しているプレイヤー、モンスター、NPCの数」を参照してその数が少ない程、発動者のステータスが上昇する。

あ、 バフ(そっち) 系のスキルなの? おっと、ちょっと待って兄弟、思ったより使いづらいスキルだったから一度立て直しを……あ、ダメ?