軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

皇気纏いていざ参らん

「今日僕は突然の風邪で授業を欠席するし、大事をとって明日も休むだろう」

清々しい笑顔でそう言い切った磐斎氏の笑顔にやはり彼は我々と同じゲーマーであるのだと再確認しつつ……それはそれとしてこの人多分一日二日授業サボっても成績にはなんら問題がなさそうなのでやはり日頃の人間性能が違うのだなぁと再確認させられたり。

それはそれとしてレイ氏は既にログアウトしたのだろうか? まぁ流石に時間が時間だしな、むしろ今の時間まで生き生きと活動している【ライブラリ】の連中が元気すぎるだけというか。

「なぁ考察厨、さっき新しいエクゾーディナリー・スキル手に入れたんだけど検証しない?」

「いいね、何人集めればいい?」

「14人」

「あー、悪いねサンラク君。ここに来てるの五人だけなんだ」

まぁ途中途中に難易度高めの壁があるからな………必勝法を見つけるまでが難しく、必勝法があってもそこそこ手間なリヴァイアサンと違ってベヒーモスはおっしゃあテストだ! 一発勝負だぜぇ!! みたいな気合いが必要になってくる。小細工や抜け道探しを全面的に認めているだけ有情かもしれないが。

それはそれとして性能が気になるのでエムルとサイナを入れた合計八人パーティで「象牙」が出した戦闘用人形を仮想敵として………いやだからウチのサイナの前にそれ出すんじゃないよ!!

「全く…………えー、じゃあ検証開始っと」

磐斎氏、キョージュ、サイナ、エムル、ライブラリメンバー三人。七人のパーティメンバーが後ろで棒立ちしている状態で俺一人が前に出て…………いざ発動、 不世出の奥義(エクゾーディナリー・スキル) 「 皇金時代(ゴールデンエイジ) 」!!

「ふんっ!!!」

おおこれは凄い、水晶巣崖で使った時は「もしかして今光った?」みたいなしょぼいエフェクトで身体の表面が包まれるだけだったのだが、後ろに七人控えさせている今はそこそこ立派なスキルエフェクトが発生した。なんだろうな、漫画的な表現としての「闘気」みたいな……それも炎みたいに揺らめくやつじゃなくて電気みたいにバチバチ鳴るやつ。

「本当はスキル無しからやって欲しかったのだが……よし、じゃあまずスキル有りでの素手攻撃から検証しよう」

あれ、なんか俺が思ってたよりも本格的な検証になってないかこれ。まぁいいや、とりあえず無抵抗の奴を殴るのも味気ないので適当に攻撃行動を取らせて…………鋭角に、コンパクトに叩き込むアッパー!!

硬い感触、しかしめり込んだ拳が無機質なマネキンのような 戦闘用人形(サイナの親戚) の身体を吹き飛ばす。

「うーん……サンラク君、特にSTR補正のあるアクセサリーや他のスキルなどは使っていないんだよね?」

「特には」

「機動力偏重のステータスでその火力か………七枠でこれだとすると十四人揃えた場合の火力が俄然気になってくるなぁ。次、何かスキル有りで」

「了解、じゃあ百秀の神腕使うわ」

じゃあまぁ、特に下準備なく 百秀の神腕(サウィルダーナハ) 起動して…………王道故に愚直ストレート!!

ガードの姿勢をとった戦闘用人形の腕にめり込んだパンチ、握りしめた指から伝わる硬い感触が 撓(たわ) み、砕け………弾け飛ぶ!!

派手に吹っ飛びながら転がって行った戦闘用人形を眺めながらスキルエフェクトが書き換えていく腕を眺める……素のスペックにスキル一つでこれか。

「ガードを砕いてこのノックバックか……凄まじいな」

「いや確かに凄まじいですけどこれ多分見た目ほどダメージは出てないのでは?」

「俺も磐斎さんに賛成です。体力ゲージ見えないからなんとも言えないですけど、多分ガードは砕かれてるけどダメージは腕だけで完結してませんかね」

「成る程確かに、あの吹き飛び方は胴体までダメージが入った感じではなかったからね。とはいえ発動条件に目を瞑れば常時あのスペックで強化される……いわゆる 当たり(・・・) スキルだね」

なにやらテスターそっちのけで話し込み始めたぞあいつら……とはいえ性能調査は出来たわけだし好きにさせておこう。基本的にエムルとサイナで組むのがほとんどだから倍率は二人分がメインだろうしなぁ。

「………」

仮にだが、これフルスペックで殴ったらどうなるんだろう。まだギリギリ効果時間内に間に合うよな? スキル起動、スキル起動、スキル起動。アクセサリーで補助、強化、強化、強化……

「む、サンラク君何を……」

「威力重点、余さず受け止め抱きしめろ……!!」

最速! 最大! 最強! 不世出の奥義「 戦砕琥示(ウォールフェン) 」をノックバック重点ではなくあえて威力重点でフルスイングする!!

全速力のダッシュを助走代わりに振りかぶった拳を戦闘用人形に叩きつける!!

「むっ」

これまでに無い感触だ。思い切り殴った感触はあるのに威力が減衰したような……いや違うな、これは受け手側がほとんど動いていないからこちらのパンチが減速した ように(・・・) 処理されたのか? 「戦砕琥示」は二極化の片方を選択する一撃だ。ほとんどの威力を削ぐ代わりに莫大なノックバックを発生させる、あるいは、

ノックバックをほとんどゼロにする高威力の打撃となるか。

「お、おお?」

バギャ!! と嫌な音が響く。まるで内側で反響した衝撃が全身を駆け巡ったかのような挙動で全身に亀裂を走らせた戦闘用人形がその場に崩れ落ち、消滅する……どうやら体力が尽きたらしい。

「……………」

「……………」

「……………」

沈黙。予想以上にエグめの結果になったからか、それとも考察に新たな数値が追加されたためか。

「………サンラクサンは相手を内側から破壊する術を得たですわ?」

「いや、なんだよそのとんでも暗殺拳」

ぽつりと呟いたエムルの言葉をやんわり否定しつつさてどうしたものかとコロシアムから出る。

「………じゃ、ラボの方行くか!」

「 文句(おいコラ) :仮にも 当機(ワタシ) の同族を粉砕した直後に言う台詞がそれでいいのですか?」

「ふっ、言うじゃねーかサイナ………」

言うほど曇ってない、どうやら覚悟が決まったらしい。とりあえず【ライブラリ】のスキル検証が好きそうなプレイヤーからの追求をどうかわしたものか…………

……

…………

………………

もうそろそろログアウトしないとやばい時間帯になってきたが、最後は征服人形関連のイベント………アンドリュー・ジッタードールのラボ、その閉じられた扉を開くところまでは行きたいので焦る心を宥めつつ俺はサイナ、エムルと共にベヒーモス八層のとある区画に立っていた。【ライブラリ】はいない、この場にいるメンツで征服人形を持っているプレイヤーがいなかったため、どうせ付いていくことはできないだろうと八層の資料あさりに集中するらしい。

当然中に何があったのか後で教えてくれとキョージュや磐斎氏に詰め寄られたが………まぁそれくらいなら。どうせ俺一人のイベントってわけじゃ無い、遅かれ早かれ【ライブラリ】所属の征服人形と契約したプレイヤー……そう、例えばあのミレィなんかが来るだろうしな。

「で? 「象牙」のやつはお前が行き方を知ってると言ってたが」

「肯定: 当機(ワタシ) 達は生産段階でアンドリュー・ジッタードールについての情報をある程度保持しています。それを参照すれば………」

サイナはコンソールの一つを操作すると、なにやらファイルを開き始めた。何々………アイドルグループ「シュテルンブルーム」? 神代時代の情報だよな? アイドルグループってまた随分とニッチな………って

「回答:彼は、待っているのです。彼が愛したものを知るべくたどり着いた者を。そして………自らの創造物、 当機(ワタシ) 達征服人形を。いいえ、それは 当機(ワタシ) がそうであって欲しいと思っているだけかもしれませんが」

サイナがより詳細な情報を求めるべくコンソールを操作した瞬間、俺達の体が光に包まれる。知っているぞ、これは神代技術方式の転移──────

「行きましょう 契約者(マスター) 、我らが父……アンドリュー・ジッタードールのもとへ」