軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

大陸は二つある

ヴォーパルバニーの国「ラビッツ」、ユニークシナリオ「兎の国ツアー」しか知らないプレイヤーからすればそれなりの重要度を持つ魔法を取得するユニークでしかない……が、ユニークシナリオ「兎の国からの招待」をクリアすればその裏に隠された意味を知る事ができる。

それはユニークモンスター「不滅のヴァイスアッシュ」の存在、そして地下深くのトンネルで繋がったユニークモンスター「無尽のゴルドゥニーネ」との因縁。

だがこれはあくまでもユニークシナリオ、シャングリラ・フロンティアという大きな流れからすれば寄り道に過ぎない。

だがここに聖女ちゃんが絡んでくるなら話は別だ。

慈愛の聖女イリステラ、明らかにメインストーリーに絡むタイプのNPCだ。ワールドクエストなるヤバげなフラグが着々とカウントを進めているが、絶対この聖女も絡んでくるだろ。

そもそも「聖女ちゃんは未来予知できる」なんて特大の爆弾投下されてこちとら結構パニックしてるんだぞ。

というか聖女ちゃんと会話するということはこの事実が露見するという事だ。それに気づかず親衛隊は俺を通した? あえて気づかせる事でなんらかの取引を持ちかけるつもりか? 成る程、先払いを無理やり受け取らせる事で俺からの引き出しを増やすのが目的か……

「………(何故聖女ちゃんはこんなにも可愛いのか? という疑問を発端に宇宙の神秘などを哲学的に思考する目)」

いや、やっぱり何も考えてないかもしれないなぁ……まぁいいかゲーマーは度胸だ、対策なんてものは死んでから考えればいい。

「承りました、その依頼お受けしましょう」

「ありがとうございますサンラク様、三柱の神々に誓ってこのお礼は必ず……」

ジョゼット、流石にゲーム内で鼻血は出ないと思うぞ。

「ってな訳で、新大陸に行く必要が出てきたってわけよ……っていうかぶっちゃけラビッツって新大陸にあるよな?」

「はいなっ! でもでも、ラビッツは島国ですわ? だからラビッツのお外に出ても大陸に辿り着くのは難しいですわ」

おいつまりゴルドゥニーネは海底掘ってトンネル作ったのか、一歩間違えたら崩落じゃねーか……

エムルを頭に乗せつつ、聖女ちゃん親衛隊に拉致られてから死んでいない俺は女モードのまま兎御殿を進む。

「とりあえず武器を整理したらファステイアに行く」

「……? なんでですわ?」

「無職に厳しい世の中だった、ってだけさ……」

いやまさかゲームの中で身分証明求められるとは思わないよね、ビックリしたわ。

新大陸調査船……名前は忘れたが三神教に伝えられる三体の神獣の名を持つ三隻の新規で造られた船。その船に乗る事ができる開拓者は組合……つまりギルドなどからある程度の実力を保証された者に限る。

実際のところフィフティシアまで辿り着いたプレイヤーはどこぞの狐くノ一のようにRTA並の最速到達でもしない限り、ギルドが掲示するクエストなどをクリアした開拓者は実力の保証をギルドがしてくれる……

そう、 ギルドに所属(・・・・・・) していれば(・・・・・) 、だ。

「そこら辺は聖女ちゃんのネームパワーでなんとかしてくれるらしいが、それでも無職はマズいんだってさ」

「よく分かんないけど世知辛いってことですわ?」

「船底に隠れて密航プレイもそれはそれで楽しそうだけどなー」

これぞ社会的ヴォーパル魂。大質量のモンスターに立ち向かうのとはまた別のスリルがあるな……ゲームにそんなスリルは求めてねぇよ、ペッ!

「とりあえず兄貴んところとビィラックんところに寄って武器整えたらアイテム買い占めて突撃だな」

座標移動門はイベント使用時以外はくぐる者が行ったことのある場所しか行けないようだし、セカンディルから逆行しないといけないか……うーん、寄り道すっか。

「とりあえず適当に死んでから行こうか」

「さらっと命を投げ捨てるのはヴォーパル的じゃないですわ?」

「ははは、 ダチ(蠍) の 家(崖) に遊びに行くだけさ」

「ダチ……?」

向こうは俺が来たことにすぐ気付くし、俺は彼ら(の素材と採掘アイテム)に夢中だからな……これをダチと言わずしてなんと言う。

自分で突っ込むけどまぁ「怨敵」……かな。

「おう、来たかぁ……」

「ウス、そんで兄貴例の武器に関しての話とは」

「ちぃと待ちな……この話はビィの奴にも聞かせるからぁよう」

兎御殿、ヴァッシュが座す玉座の間でしばし待つこと五分、なにやら緊張した面持ちのビィラックがいそいそとやって来た。

「オ、オヤジ……わちに 英傑武器(グレイトフル) について、お、教えてくれるって……」

「おぉうよ、ちゃあんと耳ぃかっぽじって聞けよう……!」

ブンブンと首を激しく縦に振りながら頷くビィラックを一瞥し、ヴァッシュは俺が手渡した「朽ち果てたアラドヴァル」を掲げてゆっくりと語り始めた。

「 英傑武器(グレイトフル) はぁよう、大抵はこいつみてぇに本来の力を損なっちまってるもんだぁ……だからぁよう、 俺等(おいら) ぁ達みてぇな鍛治師はなぁ……英傑武器が 求めているもの(・・・・・・・) をぉよう、分かってやらにゃあらなねぇ」

例えば朽ち果てたアラドヴァル、長年ゴルドゥニーネの龍蛇に突き刺さっていた槍剣の刃は朽ちてしまっている。であればその身に再び輝きを宿すために必要なものがある、とヴァッシュは説く。

「アラドヴァルはなぁ……竜の身を焼き滅ぼす劫火の劔よう。朽ち果てたこの身にゃあ、種火がねぇのさ……故に、サンラクおめぇさんはこいつを再び燃え上がらせる「種火」を探さなきゃあなんねぇ……」

「種火……」

「ただの火じゃあお話にならねぇ、それこそ「地の底より雄叫びを伴い天をも燃やす炎」でもねぇとなぁ……」

「………ん?」

地面の底から、大音量で、空をも燃やす………なんというかこう、これらのワードを全て満たす自然現象に覚えがあるというか……いや、だけど そこ(・・) って半裸で突っ込んだら絶対ダメな場所トップ5と言ってもいい場所では? ジュッ、てなるぞジュッ、て。

「溶けるのでは?」

「溶けるってどういうことですわ?」

「そりゃお前、地下深くから大量の煙と土砂を伴って噴き出す炎なんて一つしかないだろ」

「…………あっ! 火山ですわ!」

「というかワリャ、しれっと飛び込む前提なんじゃな……」

いやだって、まさか溶岩掬ってはいおしまい、とはならんだろう。絶対地下奥深くまで潜って溶岩の魔人的な敵と戦ってその核を毟り取るとかそういうアレだろこれ。

「装備問題は灼骨砕身で実質解決したから火耐性防具か……いや、そもそも旧大陸に活火山は無いしやっぱり新大陸案件……」

栄古斉衰の死火口湖、っていうくらいだしそもそも湖だ、火属性的なあれそれを期待しても望み薄だろう。

マグマダイバーとかそういう都合のいいジョブが当然実装されねぇかなぁ、などと考えていると

「あぁん? あの山ならまだ死んじゃあいねぇぜぇ?」

「……マぁジでぇ?」

曰く、あの死火山は極めて強引な物理的理由によって火山ではなくなった、らしい。全くもって意味がわからないのでそれとなく情報を催促したところ分かった情報は……

「 先々代の(・・・・) 「赤竜」をジークヴルムが物理的に「蓋」にして地中深くまで押し込んだァ???」

「意味わかんねぇよなぁ……ククク、だがそれができちまうのが彼奴なのよう」

いや驚いてるのはそこじゃない、いやそれもあるがドラゴンに先代今代の概念があることだとか、さっきの話と合わせればあの湖の底に……そう、ウェザエモンがいた「秘匿の花園」のような隠しエリアがあるという事実だとか、なんでそんな都合よく色々知ってんだこの極道兎は、だとか……

様々な感情をこねくり回して煮込んだような状態になった思考を、もうどうにでもなぁれと無理やり断ち切る。オンゲーモードだから頭がこんがらがるんだ、コンシューマーゲーモードになれ。

ストーリーを進める度に与えられる情報という餌、プレイヤーは口を開けて待てばいい。それが極上であれ、クソみたいなバグであれ咀嚼して飲み込むしかないのだから。

「実際潜るとしたら……こう、脚に重しを括り付けて……」

「どう見ても処刑とかそういう感じのアレですわ……」

「……ま、そこはおめぇさんが自力で考えな」

ぶっちゃけ解決策は二秒で思いついたので問題はない。まーた最強伝説が更新されてしまうな……あと懸念すべきは水圧くらいか?

「あぁ、それともう一つ……ビィラック」

「んあ?」

「アラドヴァルの修理……おめぇさんがやんな」

四、五メートルは跳び上がったビィラックを見て、あぁやっぱりこいつエムルの姉なんだなぁと再認識した。