軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

100話 ドンゴワについて調べてみた

ローナがマリリーンと仲良く交流しつつ、海底王国アトランの“聖地”開拓を手伝っていたところで。

「「――げぼく~っ♪」」

と、“聖地”の入口のほうから、水竜族の姫ルル×2の声が聞こえてきた。

『ローナのエサをとりに行ってくる』と出かけていたらしいが、ようやく帰ってきたようだ。

「あっ、ルルちゃん×2! ようやく帰ってき――」

「まったく、どこまでエサとりに行ってたのよ、あのバカ姫×2は――」

そう言って、ローナたちがふり返り……思わず固まった。

ルル×2が「るっ、るっ、るっ♪」と、かついで運んできたのは――。

――人間、だった。

(えっ、これが……私の……エサ……?)

ぐったりしたまま棒にくくりつけられた女性。

というか、どこか見覚えがあると思ったら、港町アクアスの冒険者ギルドマスターのアリエスだった。

「「げぼく、これやる!」」

ルルがアリエスを差し出しながら、『褒めて褒めて~♪』と言わんばかりに、ぶんぶんぶんっと尻尾を元気よく振る。

「えっと、ルルちゃん? そのアリエスさんはどうしたんですか……?」

「「るっ! なんか拾った!」」

「なんか拾っちゃったんだ……」

「る? ルルが拾ったんだが?」

「る? ルルが拾ったんだし」

「る? なんだやるか?」

「「――うるるるるるぅ~ッ!!」」

「ああ、また自分同士で争いを……あの、それより、アリエスさんが“私のエサ”ということですか?」

「「――えっ」」

「え?」

「「…………た、食べるのか……?」」

「食べませんよ!?」

と、ルル×2と話していたところで。

あとからやって来た、ルルたちの父――海王エナリオスが、説明をつけ加えてくれた。

「いや、ローナ殿。もう来ていたのだな。もっと早くに漁から戻るつもりだったのだが……このアリエス嬢がいつものように過労で倒れているのを娘たちが救助してな。娘たちの成長に思わず心がぴょんぴょんして、つい昔のアルバムを紐といてしまったからなのだ」

「ああ、そういうことですか」

「……いや、なに普通に寄り道しまくってるのよ」

なにはともあれ、アリエスはプチヒールをかけると、すぐに復活した。

「うぅ……もう 過労(つかれ) ちゃって……全然動けなくてェ……」

「あっ、よかった。目が覚めたんですね、アリエスさん」

「Oh! ローナちゃん、わたしをWatch……カワイイカワイイね……ふひっ……これでまた24時間戦えりゅ……っ!」

「いえ、休んでください」

「これと同じ血族とは思いたくないわね……」

とはいえ、アリエスにもおすそわけをしたいと思っていたので、ここで会えたのは運がよかった。

アリエスは冒険者ギルドマスターの激務をこなしながら、神官の仕事もこなし、さらには水竜族との外交官のようなこともしており……。

ローナのほうから会おうと思っても、なかなか会えない忙しい身分なのだ。

そこへ、さらに――。

「んだよ、さっきから騒がしいな――って、ローナの嬢ちゃんじゃねぇか。来てたのか」

「あっ、ドワーゴさん!」

聖地の鍛冶場で作業していたらしいドワーゴも出てくる。

最近は水竜族に鍛冶を教えているらしく、後ろにたくさんの弟子を引きつれていた。

というわけで、この辺りの知り合いも勢ぞろいしたところで。

ローナはさっそく、おすそわけをすることにした。

「るっ! “ばーべきゅぅ”! あちゅし!」

「でも、すーぱーうまし! 魚がしゃっきりぽんと舌の上で踊る!」

「ちょっ、このバカ姫×2! それはあたしが焼いてた魚なんだけど!? というか、エビは殻がこんがりするまで待つのがベストの食べ方で――ああっ、貝は表面から出た水分がぐつぐつするまでって言ったでしょう!? って、そんなにソースべったりつけちゃ、素材の味が台無しにっ!」

「はっはっは! “ばーべきゅぅ”というのは、海産物との相性もよいな! なにより、民たちとこうして騒げるのがよい!」

「へぇ、これが“ばーべきゅぅ”と“すいか”? どっちも港町アクアスと相性がよさそうね――えっ、“すいか”割り? ローナちゃんを合法的に目隠しできる……ってコト!?」

「ふーむ。この“ばーべきゅぅ”ってのぁ、酒がありゃ最高の宴会になりそうだな」

(――うん! みんなに好評でよかった!)

そんなこんなで、ようやく知り合いへのおすそわけも済んだ。

思っていたよりも時間がかかってしまったが……それだけ知り合いが増えたんだなぁと、ローナは改めて実感する。

それとローナ的には、“ばーべきゅぅ”がここまで好評だったのは意外だったが……ラインハルテの言うように、これも『ありそうでなかったもの』らしい。

というより、『洗練されていなかった』と言うほうが近いかもしれないが。

宴会の形式としても、『野外で料理を作りながら食べる』というものは今までになかったらしく、金網と焚き火台とソースがあれば再現できるということもあり、思いのほか興味を持ってもらえた。

(……といっても、“ばーべきゅぅ”はまだまだ試作途中なんだよね)

今のところは、とりあえず金網を2段に重ね、下の金網に薪や木炭を乗せて燃やしている感じなのだが……。

まだまだ火加減の調整が難しく、灰や燃えカスが飛び散って後片づけが大変だったりする状態であり――。

やはり、こういうときに頼りになるのは、ドワーフの天才職人ドワーゴだ。

「助けて、ドワえも~ん!」

「ど、どわえもん?」

「あっ、ちょっと言ってみたかっただけです!」

「お、おう……嬢ちゃんはあいかわらず、わけがわかんねぇな」

「それより、また作ってほしいものがあるんですが、いいですか?」

「おっ、またなんか作らせてくれんのか! そいつぁ、うれし――って、おいおいおい……なんだこれ? “ばーべきゅぅこんろ? ……マジか、こんな小さな炉でここまで空気の流れを緻密にコントロールできんのか……こりゃ分析すんのが大変そうだが……うちの炉にも応用できりゃあ……」

「あっ、それから“家電”という“神器”も作ってほしいなぁと。“掃除機”とか“冷蔵庫”とか、あとは箱に入れるだけで食べ物を温めたり時間を巻き戻したりできる“電子レンジ”というのも――」

「ま……待て待て待てっ! そんなすげぇもん、いっぺんに見せんな! さすがに、その数は無理……つーか、作りたすぎて他の仕事が手につかなくなっから、少しずつ見せてくれ!」

「あっ、ごめんなさい……もしかして、お仕事が忙しい時期でしたか?」

「あー、忙しい時期っつーか……ローナの嬢ちゃんのおかげで、ずいぶんと商売が繁盛しちまってな」

と、ドワーゴがどこか照れたように、ぽりぽりと頭をかく。

港町アクアスに活気が出たことで、『ドワーゴの武具屋』にも客が増えたというのもあるが……。

最近は“かき氷機”をきっかけに、ドールランド商会からも依頼が来るようになった。

さらには、水竜族に鍛冶を教えながら、海底王国アトランの鍛冶も一手に引き受けている状況だ。

ローナの突発的な思いつきや無茶ぶり(わりと楽しみにしている)に対応できるよう、いつもスケジュールに余裕を持たせてはいるが……。

それでもしばらくは、“ばーべきゅぅこんろ”を作るだけで手一杯だろう。

「ま、ひとまずは……“ばーべきゅぅこんろ”から作ってくとすっか。またあとで、うちの店に、あの絵が描かれた光の板を置いていってくれ」

「わかりました!」

「にしても、この前まで客のいねぇ店でのんびり腐ってたってのに……まさか『作りたいもんが多すぎて時間が足りねぇ』なんてことになるとはな。うれしい悲鳴ではあるんだが……こうなってくっと、やっぱ人手が欲しくなるよなぁ……」

そもそも鍛冶というのは、なにからなにまで、ひとりでやるものではないのだ。

時間を持てあましていた天才鍛冶師のドワーゴだからこそ、今までなんとかなっていたが……このままでは、いろいろと無理が出てくるのも時間の問題だろう。

「人手ってことなら、水竜族のお弟子さんたちは……?」

「いや、あのバカ弟子どもは、まだまだひよっこだからなぁ。どのみち鍛冶ってのは、ひとつの分野で一人前になるだけでも、5年や10年はかかるもんなんだよ」

「そ、そんなに!?」

「はぁ…… 故(・) 郷(・) にいた頃なら、そこらに手のあいてるドワーフがわんさかいたもんだが」

と、ドワーゴが昔を懐かしむような顔で、ぽつりと漏らす。

「ドワーゴさんの故郷っていうと……“地底王国ドンゴワ”のことですか?」

「ん? あー、まあな。追放されちまったから、もう戻れねぇが」

「あ、ごめんなさい……」

「ははっ。まあ、そんな顔すんなや。もうそんな昔のこたぁ気にしてねぇし……どっかの誰かさんのおかげで、今となっちゃ追放されてよかったと思ってるしな」

ローナと出会うまでのドワーゴは、故郷を追放されたショックで剣を打てなくなっていたりもしたが……。

今はもう完全に吹っ切れているのか、あっさりとそう言ってのけた。

「ああ、つっても、ドンゴワはいいとこだぞ? オレがいたのはもう10年ぐらい前になるが……職人たちが毎日のように面白ぇこと思いついて、毎日が祭りみたいな騒ぎでな……こっからは遠いとこにあるが、いつか嬢ちゃんにも見せてやりてぇなぁ」

「えへへ、なんだか楽しそうな国ですね! うーん……明日あたりに行ってみよっかなぁ」

「えっ、明日……? え……?」

ちょうどスローライフにも飽きたところだったし、いい機会かもしれない。

それに、前々からドンゴワの画像を見て、いつか観光してみたいとは思っていたのだ。

というわけで、ローナがさっそく地底王国ドンゴワについて調べようとしたところで。

「……ん?」

ふと――。

いつも見ている攻略サイトの“とっぷぺーじ”に、『ドンゴワ』の文字を発見した。

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▍最新情報

・6/1 期間限定イベント【爆炎伝説☆

ドンゴワラッシュ!】開催!

・神級ボス【曝炎神龍ラヴァドラ】攻略

・【召喚】に新レア度【ゴッドレア】追加

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「……期間限定イベント? ドンゴワ?」

よくわからなかったが、どうやらドンゴワで1週間前からイベントというのが始まっていたらしい。

少し気になって、ローナがさらにくわしく調べてみると。

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▍期間限定イベント/【爆炎伝説☆ドンゴワ

ラッシュ!】

▍開催場所:【地底王国ドンゴワ】

▍開催日時:6/1 ~ 6/21

▍参加条件:メインストーリー1部クリア

▍推奨レベル:50以上

▍概要

今回のイベントの舞台は【地底王国ドンゴ

ワ】!

イベントポイントを集めて豪華報酬ゲット

のチャンス♪

たくさん遊んでランキング1位を目指そう

☆(公式SNSより抜粋)

▍イベントストーリー

突如、異変が発生した地底王国ドンゴワ。

謎のモンスターの大量発生で、ドワーフた

ちの生命線である【ニコニ坑道】が閉鎖の

危機に!?

いったい、この地になにが起きているの

か!?

そして、異変の元凶である【溶岩魔人 G(グレート) 】

の謎に包まれた正体とは――!?

(公式SNSより抜粋)

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(な、なんか、たくさん情報が出てきたなぁ……イベントストーリー? っていうのは、長いし面倒だから読まなくていっか!)

とりあえず、ざっと調べてみた感じだと、この期間限定イベントというのは一種のお祭りのようなものらしい。

「わぁっ、なんだか楽しそう! これは絶対に行かないと!」

「ほ、本当にドンゴワに行くのか?」

「はい! 今はちょうどお祭りをやってるみたいなので!」

「祭り?」

「えっと、マラソンをして順位を競うお祭りらしいです。たくさん“走る”と豪華報酬がもらえるんだとか」

「あ、あん? マラソン大会ってことか? いや、そんな祭りあったかな……?」

「なんでも、ランキング上位者は3週間ほとんど寝ないで、起きてる時間はずっと“走る”らしいです」

「過酷すぎんだろ……」

なにはともあれ。

こうして、ローナが地底王国ドンゴワに行くことを決めたあと。

「あっ、ドワーゴさん。せっかくですし、故郷にお手紙などがあれば持っていきますよ?」

「手紙? そういうのぁ、オレのガラじゃねぇが……あー、そうだな。じゃあ、港町アクアスで作ってるキンキンに冷えたビールを持っていってくれ。ドンゴワは火山の中にあって暑いし、冷たい酒はかなりウケるはずだ」

「え? それだけでいいんですか?」

「ま、それで充分伝わるだろうさ。『今のオレはこっちでこんなに楽しくやってんぞ、うらやましいか?』ってな」

ドワーゴはそう言って、にかっといい笑みを浮かべるのだった。

「しっかし、それはそれとして大丈夫か? 嬢ちゃんが強ぇのは知ってるが、ドンゴワはけっこう遠いし……こう言っちゃなんだが、かなり行くのが面倒な場所にあるぞ?」

そう、地底王国ドンゴワに行くには、『なぜか無限に岩が転がってくる険しい山道を越え、さらに真っ暗な坑道やマグマの上をトロッコでタイミングよくジャンプしながら進み……』といった過酷な道のりを踏破する必要があるのだ。

だが、それはローナもすでに承知の上であり……。

そのうえで、ローナはにこりと笑って告げるのだった。

「――大丈夫です! “移動手段”については、私に考えがあります!」