作品タイトル不明
第二百十六話 HDARU戦
ライフル銃から射出された無数の弾丸が、俺に向かって飛んでくる。
流石に弾丸を避けることは難しいが、強化系の魔術によって身体能力は大きく向上しているため、俺はすぐさま魔術を使って、その攻撃を防いだ。
使った魔術は【魔力壁】と呼ばれるものだ。非常にスタンダードな魔術であり、スキルとしても同じようなものが広く取得されている。
どの探索者が使っても、違和感を持たれない防御手段であり、防御力も込める魔力に依存するため、レベルが高ければ高いほど、強度を高くすることができる。
魔術を周知させたくない俺としても、気兼ねなく使える魔術だ。
(動きによどみがない)
銃器による攻撃が効かないと判断してからの、彼らの動きは早い。
2人はまだ発砲を続けているが、残りの2人はサブウェポンであるナイフを抜いて、距離を詰めてくる。
【魔力壁】は一方のみを守る手段であり、何らかの手段で背後を取られたり、壁を飛び越えられたりすれば、意味を成さない。
普段の戦いでは、【結界】の方が遥かに優れている。ただ、【結界】に関しては、かなりアレンジというか、三重にしたりと自由度の高い使い方をしており、この場で使用するには、ぼろが出やすいと思われた。
(圧の掛け方が巧いな)
俺はナイフの攻撃を掻い潜りながら、模擬刀による攻撃を返す。
動きの速さはこちらが勝っており、特殊部隊とは言え、そこまで鍛えられていない。普段の任務や訓練に加える形でレベル上げを行っているのだから、探索がメインの探索者の方がレベル上げでは有利であった。
だが、連携という面では非常に洗練されており、一人を二人で対処することには慣れている動きをしている。
これがモンスターであれば、再生力や図体、硬さなどを考えて、一部の隙も与えずに削り切るように戦うべきなのだろうが、人であれば別であった。
思考をかき乱し、対処を遅らせ、確実に追い詰める。
人間を追い詰める戦い方の蓄積が、俺なんかとは比べ物にならない。
(周囲の感嘆も、俺に対してというより、HDARUに対してっぽいな)
最初こそ、動きの速さから俺に対して視線が向けられていたが、いつしか、HDARUの隊員たちに観客の視線は向いていた。
探索者は素人ではない。レベルを上げ、技術を磨き、経験を積んだプロである。
特に、ここにいる明星の探索者たちは、才能も技術も両方が優れている面々であり、技術に対しての理解も深い。
俺のように単に身体能力でゴリ押しているよりも、連携と技術に秀でているHDARUの方が、面白く映るだろう。
(だけど、もう慣れてきたな)
HDARUの隊員たちには、誤算が一つある。
それは、俺が怪物たちと日常的に訓練し、探索を行っているということだ。
「なっ」
驚きの声が漏れたのは、HDARUの隊員の方である。
俺はナイフによる攻撃を片手でいなし、手に持っているブレードでカウンターを放った。
先程までは、わりと防戦一方であったにもかかわらず、いきなりカウンターが飛び出たので、驚いたのだろう。
(掠っただけか)
まだ呼吸を完全に読めているわけではないので、カウンターはキッチリとは決まらなかった。
ただ、その一撃があるだけで、流れは変えることができる。
HDARUの隊員たちの隙間ない攻撃に、わずかに綻びが生まれたのだから。
「くっ」
俺はHDARUの隊員たちに対して、反撃を開始する。
ブレードを使って、隙間を縫うようにしてカウンターを仕掛け、徐々に隊員たちのリズムを崩していった。
そして、そのリズムの狂いは、こちらの攻撃をより強力なものへと変える。
(今っ)
ナイフが目の前を通り過ぎるのを見つつ、俺はブレードを上から振り下ろす。
バチンとHDARUの隊員のヘルメットに直撃し、隊員はそのままうつぶせに倒れた。
ゴム製のブレードであるが、直撃した場合には相応の威力が出る。
ブレードが直撃した隊員は意識を失っていた。
(あと、三人)
銃弾を【魔力壁】で防ぎながら、俺は残ったHDARUの隊員たちを視界に収めるのであった。