軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第百七十六話

「ありがとうございます」

身体に異常がないかをチェックしてもらった後、彼らは去っていった……なんて薄情な真似はせず、二人は護衛としてついて、安全な場所まで連れて行ってもらう運びとなった。

無言の状態が続いているが、仕事を邪魔するわけにもいかないので、俺も黙った状態で着いていく。

プロということもあり、足音の立て方から身体の運び方、銃口の向け方まで、先程のテロリストとはレベルの違うものであった。

(探索者っぽくもないな)

彼らは普段、ダンジョンでレベル上げを行っているそうであるが、その動き方は俺の知るものとは異なる。

効率的というか、無駄なく狭い空間を占領していくように行動しており、未知の空間を探りながら生存していく探索者との違いが如実に出ていた。

「止まってください」

角を曲がる寸前、隊員の一人が動きを止め、銃口を少しだけ出した。

瞬間、激しい銃声が鳴り響く。

角の部分はたちまち、銃創だらけになり、そのまま前に出ていれば、ハチの巣になっていることは明白であった。

(【探知】、【ショック】)

俺は魔術を使って、テロリストたちの人数、場所を突き止め、【ショック】という、対人用の魔術で彼らの動きを止めさせた。

(一人効きの悪いやつがいるな…【ハイ・ショック】)

恐らくはレベルの高いやつがいたのだろう。

【ショック】を浴びせても、ピンピンしているやつがいたので、高レベルの人間に効くよう調整された魔術、【ハイ・ショック】によって、完全に動きを封じさせた。

雷属性の魔術は、様々な属性の魔術の中でも、特に対人において有効であることが示されている。

魔術が一般化した世界での警察官は、必ず雷属性の魔術を修める必要があるほどに重要性の高い属性魔術だ。

「もしかして、無力化しました?」

俺を護衛していた一人、女性の隊員が聞いてくる。

「一応、そのつもりでしたが、どうですか?」

もう一度【探知】を使って、状況を確認する。

テロリストたちは全員、意識を失っており、既に無力化されたのが確認できた。

「まさか、魔法師だったとは。ウチに転職しませんか。お給金は弾みますよ」

もう一人の護衛である男性隊員が、冗談交じりに言ってくる。

「いやぁ、自分はダンジョン探索が性に合っているので」

「あの、もしかして、凄い稼いでいます?」

今度は女性隊員の方が、遠慮しがちに聞いてくる。内容は全く遠慮していなかったが。

「ええ、まあ」

そこで嘘をついても仕方ないので、正直に言うと、女性隊員の目が爛々と輝いた。

「私をお嫁さんにするのとかどうですか?家事もバリバリ頑張りますよ」

「お前が嫁になれるわけないだろ。そもそも、魔法師で探索者、それも明らかに上位の探索者だぞ。モテモテに決まってるだろ」

「黙れ、妻帯者。既婚者だからって、調子に乗るなよ」

急に愉快になり出した、隊員たち。護衛の必要がないほどに、実力があることを把握したからなのだろうが、一気に俗な面が見えてきた。

「では、私が率先して護衛しますので、着いてきてください」

「後輩、あまり張り切りすぎるなよ」

「わかってますよ、先輩。ではでは、こちらに」

「あの、一つお聞きしたいんですが、VIP参加者専用の部屋があるはずなのですが、そこは今どうなっているのか、知っていますか」

無言の空間では聞きづらかったが、今なら聞くことができる。

俺は絶対に答えさせようと、女性隊員の両肩を掴みながら聞いた。

「あっ、ええと、あそこは大丈夫だと思いますよ。ええ、ほぼ間違いなく」

女性隊員は顔を背け、若干言葉に詰まりながら言う。

俺は逃がさないとばかりに、顔を近づけた。

「それはどうして」

「それは、ですね。…あの部屋にはいるからですよ」

「なにが」

女性隊員が男性隊員の方を見る。

「話しても問題はない。状況が状況だ」

許可を得た女性隊員が、背けた視線を俺に合わせ、口を開いた。

「日本最強の探索者の一人、Sランク探索者の 篠森葵(しのもりあおい) がいるからですよ」