軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第百六十四話

オークションを翌日に控えていたが、前日をフルで休みにする必要もないので、俺たちは佐々木ダンジョンの探索を通常通り行っていた。

今日は、俺と東雲、ヴァル、そして、ソフィのチームで、佐々木ダンジョンの第三十階層から第四十階層までの探索を行う予定である。

既に、佐々木ダンジョンの第三十階層から四十階層までの攻略は済んでいるが、レベル上げや素材集めなどは充分にできるため、再び、このメンバーで探索に臨んでいた。

この探索を終えれば、概ね3000万近い収入になるので、稼ぎとしては十分である。

これからは装備代も探索数回分の額が飛ぶようになる時も出てくるだろうが、既に安定して数千万を稼げる位置にいるので、そこは問題ない。

むしろ、油断などによって死ぬリスクを考えるよりも、理不尽なことによって死ぬリスクが高まるので、装備代にガンガン回していく予定であった。

( 花眼人形(かがんにんぎょう) と戦うのは、これで三度目か)

初戦闘時には大いに苦戦し、死にかける羽目になった花眼人形であったが、二度目の探索で攻略を済ましている。

頑丈で素早く、デバフもかけてくる強敵であったが、東雲のサポートがあれば、あっさり倒すことができた。

既に四十階層を攻略していて、レベルが上がっている為、強敵というよりは一般モンスターのような位置づけとなっている。

新しく購入した槍を使った戦い方が、ヴァルに嵌っており、俺抜きでも花眼人形をボコボコにして討伐できていた。

「そろそろ来ますね」

東雲の言葉に、先頭にいたヴァルがより前に出る。

最早連携をする必要性はなく、ヴァル単騎でも余裕を持って相手をできる。

ヴァルは新調した大盾、槍を手に持ち、細剣は腰に差した状態であり、今回の戦闘も槍を主体とした戦い方で行く予定であった。

「ヴァル、頼んだ」

花眼人形が姿を現し、花弁を赤く染めても、なんの威圧感も感じない。

ヴァルが一人で前に出て、花眼人形と対峙する。

緊張感が高まっているのを感じるが、それでも俺の心の余裕は消えなかった。

(二度目の戦闘の時はちょっと怖かったけどな)

その恐怖心を払拭するほどに、現在の俺たちの強さは格の違うものとなっている。

ヴァルが一歩ずつ近づいていくのに合わせて、花眼人形も少しずつ近づいていた。

そして、その距離が十メートルを切った時、両者が一気に距離を詰め、戦いが始まる。

「むだ」

ヴァルが槍を下段に振るい、花眼人形の足を払った。

花眼人形は両腕を使って、ヴァルに攻撃を仕掛けようとしていたが、完全に足をすくわれてしまい、前のめりに転倒する。

ヴァルはすぐさま、槍で頭を粉砕しようとしたが、花眼人形も転がるようにして、攻撃を回避した。

だが、その程度ではヴァルの攻撃からは逃れられない。

ヴァルの槍に意識を持っていかれていた花眼人形は、もう片方の手で持っている大盾という武器の存在を失念していた。

大盾が唸るような勢いで振るわれ、花眼人形の胴体を無理やり押し潰していく。

花眼人形の肉体は強固な素材でできており、容易には破壊できない。

硬い花眼人形の外殻を粉砕し、大盾の重さを利用して強引に潰しにかかるのは、ヴァルの膂力があって初めてできることであった。

(槍で頭を潰したか。これでチェックメイトだな)

胴を両断しても、花眼人形は倒しきれない。

それは初戦闘で学習したことなので、ヴァルは確実に倒しきるため、槍を使って頭部を粉砕していた。

花眼人形も機能を完全に停止しており、ヴァル一人の活躍によって、かつての強敵は物言わぬ骸となるのであった。

♦♢♦♢♦

(次は俺の番か)

第三十階層の攻略は続いていく。

ダンジョンを探索する際には、事前に調整も行うが、最初の階層で実戦の感触を確かめておくのが通例だ。

余裕がなければ、チームでの戦闘で感覚をしっかりと取り戻したりするが、既に明確な差が存在していれば、一人で討伐してしまっても問題はない。

むしろ可能であれば、色々なパターンで実戦練習を行うのが理想である。

「伊藤さん、頑張ってくださいね」

階層の奥へと進んでいくと、再び花眼人形と接敵した。

佐々木ダンジョン、第三十階層はレベル300~350相当が適性の階層である。

恐らく、最初にこの階層に到達した時も適正水準ではあったような気がするが、如何せん、二人での攻略だったので、苦戦してしまった。

「【アイス・カタパルト】」

最近は初動で使うようになった、【アイス・カタパルト】を同時に十発、お見舞いする。

直径一メートルの氷塊を避けるというのはなかなかに大変ではあるが、花眼人形は本当に動きが速いため、十発程度同時に撃ちこむ必要があった。

予想通り、流石に十発も同時に撃ち込めば、二、三発は直撃し、多少はダメージを入れることに成功する。

「【マジカル・ネット】」

更に、捕縛に特化した魔術、【マジカル・ネット】を三つほど発動し、完全に拘束しにかかる。

初動で拘束しにいってもよいのだが、【アイス・カタパルト】によって動きを止め、【マジカル・ネット】を使った方が、効率よく花眼人形を無効化できていた。

「【極光】」

ここで高威力魔術である、【極光】を二発、頭部と胸部に向かって放つ。

この魔術は、本当に戦闘特化の魔術であり、対モンスター戦でも遺憾なくその威力を発揮してくれる。

花眼人形を見ると、【極光】が直撃した頭部と腹部は、完全に溶けていた。

(魔核は無事だな)

花眼人形の魔核は胸部にあるため、倒す際には頭と腹部を潰すのが重要である。

そうすることで、安全かつ、魔玉という重要な換金素材を損なうことなく、倒すことができるからだ。

(ホント、馴れてしまえばあっさり倒せるな)

初見のモンスターは厄介であると、しみじみ感じる俺であった。