軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第百四十二話

今日はヴァルと二人で、佐々木ダンジョンの第二十階層の探索を開始する。

今回は到達階層を更新する予定なので、第二十階層から二十五階層まで大体二時間ほどで探索を終えていた。

(さて、ここからは慎重に行くか)

いつも通り、初見である第二十六階層からは慎重に探索を進めていく。

今日の目標は二十七、八階層まで到達することだ。

東雲がいないので、俺が索敵もこなしているが、特に支障はない。

それこそ、いきなり最終階層のモンスターが出てくるなんてことになれば、厳しい戦いになるだろうが、現状相手にするモンスターでは、そこまでの危機的状況になる可能性は、かなり低い。

目標に到達してからは軽くモンスターの強さを把握して、二十五階層にまで戻る予定である。

(オーガ……か)

長野第五ダンジョンでもオーガとは戦ったが、佐々木ダンジョン第二十六階層のオーガは趣向が異なっている。

佐々木ダンジョンのオーガは、身長は四メートルほどもあり、さながら巨人といったイメージが先行する風貌だ。

戦い方も長野第五ダンジョンのものとは異なっており、刃渡り二メートル超の大剣を振り回す、乱暴な戦い方をしてくる。

そんなオーガであるが、距離感やカウンターのような技術的な部分を理解しているため、単にデカいだけという認識では、こちら側がバッサリとやられてしまう可能性があった。

(それでも、ヴァル程ではないことは間違いない)

ヴァルの近接戦闘の腕は随一であり、それはオーガ相手でも特に問題ないというのが、俺の読みだ。

第二十六階層の探索を進めていき、感覚的には階層の半分程度のところまで来たあたりで、オーガと 邂逅(かいこう) した。

「グガ」

オーガはこちらを見て、顔を歪めて笑った。

巨躯と見る者に怖気を走らせる表情、探索者でなければ失禁してもおかしくはない。

だが、俺たちは冷静であった。

「ヴァル頼んだ」

そう言いつつ、俺は【アイス・カタパルト】で牽制の一撃を放つ。

モンスターと探索者の決定的な違いは、戦闘経験の蓄積だ。

オーガは一瞬、面食らいながらも、引きずるようにして持っていた大剣を振るうことで、氷の巨塊を弾き飛ばしていた。

「たおす」

ヴァルが疾走し、オーガとの距離を一瞬のうちに詰める。

階層を更新していき、戦うモンスターが強くなったとしても、そのモンスター自体に戦いの経験は蓄積されていない。

あくまでも技術があるだけで、幾度も死を掻い潜って経験を積んでいるモンスターはいない。

(もし、そんなモンスターがいれば、相当な脅威になるだろうな)

今、戦っているヴァルのように。

彼女は大盾を持っているが、その重さを感じさせないどころか、むしろ大盾を利用して動きを鋭くしているようにも見える。

戦いの技術は日に日に磨きがかかっており、その戦闘力はこれからも際限なく伸び続けるだろう。

「グガァ!」

ヴァルに向かって、大剣が振るわれるが、彼女は大盾を振り回すことで応戦した。

巨大な金属の塊同士が派手にぶつかることで、火花が散り、その衝撃音はダンジョン内を容易に響き渡る。

「【バインド】」

場が拮抗した瞬間を狙い、オーガの四肢を拘束する。

幾度も連携して戦っていれば、自ずとベストなタイミングを見つけられるものだ。

オーガは次の動作に移ろうとしていたが、間隙を突くようにして【バインド】によって拘束され、確実な遅れが生じる。

「くりーんひっと」

ヴァルがその隙を逃すはずもなく、音すら置き去りにしそうな速さで、細剣が振るわれる。

高さの都合上、首は狙うことはできないが、腿と胴に斬撃を浴びせることは容易であった。

一瞬の間に幾度も剣が煌めき、赤い線を引く。

ドシンと砂塵をまき散らしながら、無言のままオーガはくずおれた。

「終わった」

ヴァルが晴れ晴れとした笑顔でこちらを見る。

第二十六階層での、初戦闘は、特に面白みもない快勝であった。