軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第百四十話

「強さ…ですか?レベルではなく」

探索者の絶対的な指標は、レベルである。

探索者はレベルの高くなるほどに実績を積み上げるものであり、レベルの高さが探索者の経験、強さをより直接的に表している。

レベル=強さが、一般的な認識の筈であった。

「レベルと強さを同一視する者は多いが、例えば、儂はレベル1000を超えておるが、強さという面で見れば相応に衰えておる」

そう言って、グッと握りこぶしを作る。

血管が浮き出ており、筋力もそこまで衰えているようには見えない。

傍から見れば現役にしか見えないが、熟練の探索者でもある大田支部長の中では、全盛期とは全く違う状態なのだろう。

「レベルと強さは深い関係にあるが、そう単純なものではない。スキル、才能、経験によっても、大きく左右されるのが現実だ。儂もそこそこ才能はあったが、そこそこ止まりじゃったしの」

「それは流石に…」

つい、思わず、口を挟んでしまう。

憧れた人物のそんな言葉は聞きたくはない。

「ふむ、そう言ってもらえるのは嬉しいが、残念ながら、そこそこ、だったのじゃ」

少し遠い目をする大田支部長。

俺は現在、強くなり続けている状態であり、探索者として衰えるというのは壁を越えれなくなってからだ。

壁を越えることができなくなった人間に対して、実のところ俺は何も言う資格はない。

「それよりも、ユニークモンスターの出現についてじゃが、これは探索者の強さが大きく作用する。正確には、レベルこそ適正であるが、逸脱した強さを持っている必要がある」

太田支部長が、あらためて、俺たち三人を見る。

「この情報はBランク未満の探索者には、完全に秘匿されておるし、Bランク以上であってもこちらから公開することはそう多くはない」

先程レベルを測ったのに合点がいく。

そもそも、こんな重要そうな情報、というか、下手すると多くの探索者が死に飛び込みかねない情報を一般に公開するわけにはいかなかった。

人間、己は大丈夫であると思い込むものである。

俺ですら、探索中に危ない場面は多々あったわけで、スキルが大したことのない探索者であれば、少しでも油断していれば簡単に大怪我、場合によっては探索者生命を絶たれたり、命を奪われたりするはずであった。

探索者になった高揚感が抜けていない状態でその情報を手に入れてしまえば、意味を正確に理解せずに、勇んでダンジョンの奥へと進みかねないのは簡単に予想できた。

「東雲くんは既にBランクに昇格済みであるし、伊藤君は本日付でBランク探索者じゃ」

(東雲、いつの間にBランクに?)

東雲の方を向くと、ニッコリと笑顔を向けられた。

俺の記憶では、東雲一花という探索者はCランクだった筈だが。

(うん、黙っておこう)

無限の怖さが秘められた表情に、俺は視線を逸らす。

深入りしない方がいいというのは、明白であった。

「そんなことはないだろうが、もし、この情報を漏らした場合には相応の罰が待っているので、気をつけるように」

「どんな罰を受けることになるのでしょうか?」

「それは儂にも分からん。情報は時に命よりも重い時もある、その程度のことは言えるがの」

(こっちもこっちで、こえ~)

若干凄味のある顔で言う大田支部長から、ゆっくりと顔をそむける。

いったいどんな罰が待っているのか、考えたくもない。

「今日のところは、そんな感じかの。オークションについては追って連絡する」

「分かりました」

「あと、Bランク探索者用のカードと証明書は後日送付するからの。楽しみにしておくように」

そう言った際の大田支部長の目は少し優しく見えた。

こうして、俺たちはとんでもない情報を手に入れてから、支部長室を後にするのであった。