軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

5 はじめの一歩

魔力操作の訓練をするようになって数ヵ月。だいぶ上達したと思う。生活魔法のおかげで病気になる回数はかなり減った。たまに熱を出すが、もともと身体が弱いので仕方ない。生きているだけ上出来だ。

そして今日、私は立ち上がる! 1人立ちするのだ。ここまで大変だった。初めて寝返りがうてた時の感動は忘れないだろう。

ほふく前進で布団の上を移動出来るようになり、ハイハイ、お座りをマスターしていった。つかまり立ちまでは完璧だ。

ただ、1人で立つことだけまだ出来なかった。それも今日で終わりを迎える。なぜなら、【身体強化】が出来るようになったから!

と、1人で盛り上がっていた。あっさり立ちましたよ。足がプルプル震えて今にも倒れそうだったけど、立てた。スキルは使ったけど、確かに、1人で立てた。成長しているのを実感するね。

もちろん、誰も見てくれてないけど、それは気にしてない。そういえば、座っているところは母親に見られてたな。

そこにいるのを完全に忘れて、当たり前のように座っちゃったけど。次の日にはオマルを持ってきてくれたのは嬉しかった。これでオムツともさよならだ!

平行して喋る練習もしていたが、こちらは微妙だ。耳で聞いて覚えるものだと思うが、母親が話してくれないので聞きようがない。たまに話す内容は理解出来たので大丈夫だと思うんだけど。

神様にもらった言語補正が働いてくれることを祈ろう。

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何日も過ぎ、季節が変わり、日の長さが変わった。多分、異世界に来て1年くらい経っただろう。身体は痩せているが思ったよりも成長している。布団の上で出来ることはしたつもりだ。もう部屋から出てもいいだろう。

………しまった!?靴がない。

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「いりゃない ぬの くだしゃい」

母親の初めて聞いた言葉が【いらない布ください】だった。顔に出てますよ、気味が悪いって。私もそう思うけど。母親はドン引きしながらも布を持ってきてくれた。無言で渡されたけど、いつものことだ。

「ありゃと ごじゃましゅ」

通じたかな? 赤ちゃん言葉は恥ずかしいからもっと練習しないとダメだな。口が上手く動かない。言語補正はこれからかな。

まぁ、いいや、靴を作ろう。昔、学校の授業で農家の仕事を体験しようってのがあって、その時に草履の編み方を教わったんだ。

………って、この身体じゃ作れないな。

仕方ない、足に布を巻くだけでいいか。もっと大きくなったらリベンジしよう。ベッドから降りるのも大変だ。あとで登れるだろうか?

とりあえず、部屋の中を観察する。何もないけど歩く練習にはちょうどいい。床は泥や埃で汚れており、所々欠けている。

(転んだらあぶないな、汚れたりケガしたら魔法で治せばいいか)

頭が重いせいで上手くバランスが取れないがなんとか歩いてみる。母親に気付かれたらイヤなので足音をたてないようにゆっくりそっと歩いた。

ただ、しばらくは練習が必要だろう。部屋の外に行くのはちゃんと歩けるようになってからにしよう。

身体強化しながら歩いたり、強化せずに自分の筋力だけで歩いたりといくつかの実験を行いスムーズに歩けるよう訓練を始めた。

最初はヨタヨタしながら歩いてたのが段々真っ直ぐ歩けるようになり、スピードも早くなった気がする。

毎日毎日同じ事を繰り返して完璧に歩けるようになるまで頑張った。少しずつ体力もついてきたが、1つ困ったことがあった。

…食料が足りない。

産まれてたぶん半年ほどで離乳しているが、それ以降1日2回母親が食事を持ってくる。食べさせてくれたのは最初の数回だけで、スプーンが持てるとわかるとあとは放置された。

1人で食べるのはかなり難しかったが、悔しいので頑張った。めんどくさそうな顔をしながら食べさせられるより、放置されたほうが気が楽でいい。

身体が成長し毎日歩いてるからかすぐにお腹がすく。健康的に成長するには食事量が全く足りてない。母親に言っても嫌な顔されるのがわかってるので、自分でなんとかするしかない。

生活魔法のウォーターが使えるので水を飲んで誤魔化しているけど、出来ることならもう少し食べたい。というか、食べないと身体に悪い。

よし、食料を探しにいこう。

まずは家の中を探索しよう。産まれてから1度も部屋の外に出たことがないから、それだけで大冒険だ。部屋の感じからある程度想像がついてしまうけど、それでも楽しみだ。

ずっと同じ景色しか見てない私にとって、そこがどんな状況でも構わなかった。扉の前にきて愕然とした。

………届かない。

踏み台になりそうな物を探すがあるはずもなく、今回の大冒険は失敗に終わった。すごく楽しみにしていたのに出られない、という結果は私の心の何かに火をつけた。

(なんとしても外に出てやる! こんな時の為にスキルがあるんだ!)

……違うと思うが、ヤル気に満ちている私は気付かない。こうして、扉を開ける為のスキルを探すのだった。

(う~ん、届きさえすればなんとかなるんだけど)

ステータス画面を見ながら考える。身体強化してジャンプはダメだったが、それ以外の方法が思いつかない。いろんなスキルを見てみるが、これだっていうのがない。

開ける扉は最低でもこの部屋の扉と玄関の扉。もしかしたら、もっとあるかもしれない。何度でも使えるスキルじゃないと意味がない。そして、母親に頼むという選択肢もない。日本での生活を思い出しながらヒントを探す。

(自動ドアは電気使うからそもそもダメだしなぁ。扉を開けるんじゃなくて、自分の身体を成長させればいいのか?)

自分の腕が伸びるのを想像してみる。ゴムゴム的な。そんなスキルはないんだけど。しばらく考えているとだいぶ時間が過ぎていたようだ。母親が食事を持ってくる気配がする。

いつものように食事を置くといなくなった。なんとなく母親の気配を追っていると、2回ドアを開ける音がした。そして、家の外から足音がする。

そういえば、今まで外の音を気にした事なかったな。いつも、誰もいないし。新しく興味のあるものを見つけるとそっちに集中してしまうのは、私の悪いくせだ。

部屋の扉を開けることよりも外の気配を探るほうに意識が向いてる。足音が完全に消えるまで気配を追っていた。