軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

シャロン司祭とカラドリウス

領都に来たので、久々に教会へ寄る事にする。ガイは快く教会へ馬車を向けてくれた。

「……先生とお兄様は何処かで時間を潰されます? それともご一緒致しますか?」

どう見ても敬虔な雰囲気ではないふたりだ。

そんなクロードとフォーレが顔を見合わせると、クロードが口を開いた。

「時間が掛かりそうか?」

「いえ、それ程は。司祭がいらっしゃらなければ、すぐ戻ります」

そういうマグノリアとて、けして敬虔な信徒と言う訳ではないのだが。

「司祭に用があるのなら、面会の依頼をかければ良いものを」

「用事がある訳ではなく、ただのご挨拶ですから……司祭もお忙しいでしょうから、わざわざ挨拶にお手間を取らせるつもりは無いのですよ」

色々世話になった事もあり……日本人の心を持つマグノリアとしては、礼を欠かさない様にしているだけなのである。

「……時間が掛からないのであれば、このまま待っている」

馬車の中で待機を選んだふたりに、マグノリアは了承したと頷いた。

祭壇のある講堂は、基本いつでも開かれている。

救いを求める迷える子羊が、いつでも助けを求められるように。

そして用事がない限り、シャロン司祭は祈りを捧げているのだ。

扉をゆっくり開けると、やはりシャロンが祭壇の前で熱心に祈っていた。

マグノリアの頭の上で眠っていたラドリが目を覚まし、首を左右に振って場所を確認すると、珍しく小さな翼で羽ばたく。

「マグノリア様、お久しぶりでございます」

「お久しぶりです、シャロン司祭」

祈りがひと段落ついたのか、人の気配を感じたからか。

顔をあげた司祭が立ち上がって頭を下げる。

ゆっくりと講堂を一周すると、ラドリは静かにマグノリアの肩に留まった。

肩の上の小鳥をまじまじと見ると、司祭は首を傾げた。

「おや。これはカラドリウス?」

『そう! 僕はカラドリウスの『ラドリ』」

そう自ら答えると、ドヤァと小さな鳩胸を突き出した。

可愛らしい小鳥の様子に、シャロン司祭は顔を綻ばせ……マグノリアは苦笑いをする。

「……シャロン司祭は『カラドリウス』をご存じなんですか?」

「はい。そう申しましても、書物の中ででございますが……カラドリウスは、神話の中でもかなり古いものに描かれている伝説の神鳥です。病気や厄災を取り除き、持っている鞄に溜めるのだそうです」

そう言って、斜め掛けされている小さなポシェットを見遣る。

「そして一杯になると、それが新しい卵になるのだそうです」

「そうなのですね……」

元々は吸い取った病や厄と言う事か(怖っ)。

何とも不思議な生物だが……もしかすると本当に、マグノリアが思うような『生物』ではないのだろう。

それにしても、司祭は良くこれが『カラドリウス』だと解ったものだ。

……見た目が初めとだいぶ違う気がするのだが、本来はこんな風なのだろうか?

伝説の神鳥。

どんな意図でなのか、マグノリアは卵を託して来た曾祖母に向かってため息をつきたい気分だ。

司祭はもう一度、ラドリを優しい瞳で見つめる。

「お名前をつけられたのですね」

「……ええ。くしくも」

名づけの経緯を思い起こし、何とも微妙な返しになる。

司祭は司祭で、経緯を知らないまでも何やら察せられる事があるのか、頷きながら微笑んだ。

「神の思し召しでございましょう。マグノリア様と『ラドリ』に神のご加護を」

そう言い手をふたり……ひとりと一羽にかざすと、ちらちらと小さな光の粒が降って来た。

(……これ……)

神の祝福?

マグノリアは驚いて司祭を見ると、笑って人差し指を唇にあてる司祭がいた。

内緒と言う事だろう。

(どういう事?)

「私ではありません。神々のお力です」

その光に反応するようにラドリがふわりと肩から飛び立ち、マグノリアと司祭の頭の上を一周する。まるで祝福をするように。

飛び終わると、再び肩へと戻って来た。

そして。

以前感じていた誰かに見られている視線を感じて、その方向に瞳を向けると。

すぐ隣に……肩の上の黒いつぶらな瞳に行き当たる。

「……え」

『ぴちゅ♡』

(お前かーーーーーーっ!!)

(当たりーーーーーーっ!!)

無駄に念話で返して来やがった。

そんな静かな攻防を知ってか知らずか、笑いながら司祭が口を開く。

「見守っていらっしゃったのでしょう、ずっと」

「……一体、何を何処までご存じなのですか?」

マグノリアが司祭にジト目でかえすと、穏やかに笑って首を振った。

「私は何も」

絶対嘘くさいのだが。

とは言え何も話してはくれなそうなので、暇の挨拶をして帰る事にする。

何とも釈然としないが。

疲れたような様子で戻ってきたマグノリアに、クロードは不思議そうに首を傾げた。

「……何かあったのか?」

「いいえ、特には」

『反抗期・更年期☆』

ぱたた、と短い翼で浮き上がった小鳥のくちばしを、マグノリアはギュッと摘まんだ。