軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

470 決 戦 2

あれから、更に数日。

「あと数時間で、魔物の先頭部分が防衛ラインに接触するよ!」

母艦からの警報を携帯端末で受信した恭ちゃんの言葉に、即座に宣言した。

「よし、出動!」

いくら『防衛は、人々自身の手で』とは言っても、無駄に死人を増やさなきゃならない理由はない。

だから勿論、最初から手を出すよ。

みんなには、『自分達の力で人々を護ろうとする姿に感心して、女神が助力された』ということにしておこう。

……事実、強力な攻撃を無効化されている以上、 地元の人々(じもピー) の通常戦力による攻撃は必須だ。

戦闘用の装備に着替え、無効化されない程度の個人携行用武器を身につける。

中庭に出て、4座小型艇に搭乗。

そして不可視シールドを展開したまま、上空へ。

今回は、小型艇のままではなく、搭載艇に乗り換えてから向かう。

搭載艇の大口径主砲は無効化されるけれど、工夫次第でやり方はある。

今まで、何も考えずに無為に時間を過ごしていたわけじゃない。ちゃんと作戦を考えているのだ、うむ!

上空に待機させていた搭載艇の発着艦口から格納庫へと進入し、 搭乗橋(ボーディングブリッジ) を通って 艦橋(ブリッジ) へ。

それぞれ前回と同じ席に着いて……。

恭ちゃんが右手を挙げて、前方へと振り下ろしながら叫んだ。

「 発進(エンゲージ) !」

「あああ、クソッ! ここのところ、美味しい台詞は全部恭ちゃんに持ってかれてる!!」

「ぐぬぬ……」

さすがにレイコも、ちょっと悔しそうだよ……。

* *

「間もなく、現場上空!」

恭ちゃんがそう報告し、前方に森が見えてきた。

そしてそこから湧き出る魔物の群れと、手前に布陣する兵士達……。

「あれ、思ったより多いよ? それに、小さなグループがバラバラに出てくるんじゃなくて、纏まってる……。

それに、普通は捕食関係にありそうなのが、食い合いをせずに人間の方に向かってるし……。

これじゃ、本当に小説に出てくるような 大暴走(スタンピード) だよ!」

「確かに……」

恭ちゃんが言う通り、本当の……というか、日本のライトノベルに出てきそうな、典型的な『魔物の 大暴走(スタンピード) 』だ。

これも、セレスやそのアシスト機構の調整によるものか? それとも、たまたまそうなっただけ?

まあ、簡単に狩れて美味しい獲物が目の前にいるのに、 手強(てごわ) い上に固くて不味いヤツと戦う必要はないよなぁ……。

「ちょっと予想と違うけど、想定の範囲内だよ。私達がやることは変わらない。

作戦A-1! 軍が接敵する前に、攻撃を行うよ!」

「「 了解(ラジャー) !」」

私の指示に、元気良く応えてくれる、レイコと恭ちゃん。

よぅし、戦闘開始だ!!

「恭ちゃん、魔物の前に堀を!」

「分かった!」

恭ちゃんが素早くコンソールを操作し、搭載艇の下部から中口径の砲塔がせり出した。

口頭で 艦載コンピューター(カンコ) に指示しても良いが、精密射撃の必要がないアバウトな射撃なら自分でやった方が早いとでも思ったのだろう。

小口径では小さすぎ、大口径では威力がデカ過ぎるから、選択肢は中口径一択。

このあたりは、みんなで色々と検討したから、今更確認するまでもない。

そして……。

「ファイエル!」

恭ちゃんが自分で発射の号令を口にして、自分で撃った。

この辺りは、雰囲気重視なのだろう。

そしてビームを放ったまま、射線を大きく動かす恭ちゃん。

……うん、魔物と人間の間に、分子破壊砲によって大きな堀が作られたのだ。

直接魔物を狙えば、無効化される。

でも、魔物を攻撃せず、ただ 地面に穴を穿つ(・・・・・・・) だけであれば、関係ない。

分子破壊砲なので、爆発したり土石が飛び散ったりすることもなく、綺麗な大穴が穿たれ、射線を振ったことにより長い堀が形成されたのだ。

そして、次に……。

「熱線砲、発射用意……、発射!!」

分子破壊砲によって作られた、深く長い堀。

その中に向けて熱線砲が発射され、綺麗に堀をなぞる。

これによって出来上がるのが……。

「よし、テストは上手く行ったよ!」

恭ちゃんが、笑顔で私達の方へ振り返った。

そう、今のはテストだ。

まず分子破壊砲で深い堀を作り、次にその中へ熱線砲を撃ち込むことによって、『底に煮えたぎる溶岩を 湛(たた) えた堀』が出来上がる。

ただの堀だと、魔物が越えられるかもしれないし、魔物が堀の中にみっちりと詰まれば、その上を歩いて渡れる。

でも、異様に深くて幅も広く、オマケに下の方には溶岩が湛えられていれば、下に降りてから登って、という越え方はできないし、下から立ちのぼる熱気で魔物を寄せ付けないだろう。

……そう。強力な武器を無効化されたくなければ、直接魔物を攻撃しなければいいのだ。

これで魔物の勢いを止め、わざと残しておいた狭い通路から少しずつ越えてくる魔物を順番に倒すわけだ、 地元の人々(じもピー) が……。

完璧の母!!

強力な科学兵器で大量殺戮をするのでなければ、報復か嫌がらせみたいに魔物がポップアップすることはないみたいだから、数を大幅に減らせるだろう。

そりゃ、増産体制は変わらないだろうけど、一旦数を減らすことができれば、後はこまめに間引きを続ければ現状維持は可能だろう。

そして、セレスが戻るか、もしくは上位の分身体がセレスの不在に気付いて対処してくれるまで持ち堪えれば……。

あとは、それが『セレス時間』、つまり数十年とか数百年とかじゃないことを祈るしかない。

……頼むよ、セレス……。

いやいや、今はそんなことを考えている場合じゃない!

「恭ちゃん、作戦A-1のテスト結果良好につき、本格実施に移行!」

「了解! 溶岩の堀を作りまくって、魔物の進行ルートを制限するよ!

いくら数が多くても、進行できるのが丸木橋くらいの細いルートしかなければ、各個撃破でタコ殴りだよね。

……じゃあ、 艦載コンピューター(カンコ) 、事前に入力しておいたパターンで精密射撃用意!」

あ、恭ちゃん、手動でやるの、面倒になったな……。

まあ、コンピューターに任せた方が楽ちんだし、正確で安全だ。

……少なくとも、恭ちゃんがやるよりは、遥かに……。

そして……。

「「「ファイエル!!」」」

……うん、私とレイコにも言わせてよ!