軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

459 軋 み 2

「……でも、どうして今、急に……。

この国って、周辺国との関係はそう悪くないって聞いていたのに……。

もしかすると、魔物のバランスが崩れたことで財政難になったとか、国民の不安や不満を外部に向ける必要があったりして?」

「あ~、地球でも、国民の不満が政府や独裁者に向かないよう、国外に敵意を向けさせるように偏向教育や嘘の情報で騙すというのは、常套手段だもんねえ……」

私の疑問に賛同してくれる、レイコと恭ちゃん。

ファルセットも、軽く頷いている。……確かに、脳筋一族の中では頭がいいと言われているだけのことはあるか……。

さて、どうするか……、って、そうだ!

「……ちょっと、王宮へ行って情報収集してくる!」

「「いてら~!」」

ちなみに、『行ってらっしゃい』の略語である『いてら』は、私の死後10年くらいの時点で、既に死語扱いだったらしい。

レイコと恭ちゃんは、地球の神様のおかげで昔の記憶が鮮明になっていることと、私に合わせるために昔の言い回しを使ってくれているんだよね。

とにかく、さっさと情報を集めに行くとするか……。

「スクランブル、ダアァ~ッシュ!!」

と、掛け声だけは景気よく、のっそりと立ち上がる。

勿論、ファルセットも一緒に立ち上がっている。

コイツが、私ひとりで王宮へ行かせるはずがないよね。

* *

いつものように、門番さんに顔パスで通してもらい、案内の人に王様の執務室へ連れて行ってもらった。

ファルセットはメイド服に着替えているし、剣は私のアイテムボックスの中だから、問題なし。

……勿論、隠し武器は身に着けている模様。

武器を隠し持って王様に会うとか、バレたらマズいんじゃなかろうか……。

途中で応接室みたいなところで紅茶とお菓子を出されたけれど、あれは多分、王様の手が空くまでの時間調整のためだろうな。

……いや、アポなし突撃の平民の小娘なんか、普通は門前払いだよね?

そんなのに会ってくれるだけで、王様、メチャクチャ良い人じゃん……。

待ったのも、たかだか10分そこらだし。

丁度紅茶を飲み終わるくらいの時間だったよ。

「こんにちは~!

……あ、いや、国王陛下にあらせられましては、御機嫌麗しゅう……」

ヤバいヤバい! 庶民の私にもいつも割と気軽に話してくださるし、良い人だから、つい近所のおじいさんに話し掛けるみたいな挨拶をしちゃったよ!

……これって、下手すれば不敬罪で牢屋行き、とかじゃ……。

「あ~、構わぬ構わぬ! 巫女様にそんな喋り方をされると、何だか背筋がぞわぞわするぞ……」

へ~い、私の柄じゃない、ってことね。分かりましたよ……。

まあ、もしあの件が私達の予想通りならば、王様も宰相様も、今は大忙しで大変な時だろう。

……そもそも、そんな時に私と会うために時間を潰すなんて、考えられない。正気の沙汰じゃないよ……。

なんてコト、張本人の私にだけは言われたくないだろうけどね。

とにかく、今、王様達の時間を無駄にさせるわけにはいかない。

なので、単刀直入に……。

「お忙しいでしょうから、用件だけ。

……現在国境に向かっている隣国の軍は、侵攻軍ですか? 宣戦布告はありました? 迎撃の準備はされていますか? 国民への布告は?」

「「…………」」

ありゃ、驚いたような顔をして、くるりと横を向き、……王様と宰相様が互いの目を見詰め合っているぞ。無言で……。

あれで、心が通じ合っているのかな?

……『キックオフ』かッ!!

いやいや、余計なことを考えるのはやめて、さっさと話を進めよう。

「どうして急に、そんなことに? 外交関係はそんなに悪くなかったと思うのですけど……」

「「…………」」

ありゃ? 王様も宰相様も、苦い顔だ……。

まあ、国家間の問題を、平民の小娘にペラペラと喋ったりはできないか。

「……使節は、来た。国境における敵対行為の真意を問う、という、強硬な文書を 携(たずさ) えた者がな……」

喋るんか~い!

「……敵対行為? こちらから何か仕掛けたのですか?」

「いやいや、そんなことをするはずがないだろう! 不作で食糧難、とかいうわけでもないし、下手に揉め事を起こして 戦(いくさ) になったりすると、周辺国につけ込まれるだけだ。

どこかの国が、我が国の仕業に見せ掛けて、というなら分からぬでもないが……。

なので、その可能性を指摘したのだが、聞く耳を持たぬ、という様子でな……」

あ~、余程怒っているか、この国の仕業だと思い込んでいるか、……それとも、 そういうことにしたい(・・・・・・・・・・) のか……。

まあ、戦争を吹っ掛ける時には、『向こうが悪い!』と主張するよね、普通は……。

「……で、どんな言い掛かりを付けてきたんですか、隣国の連中……」

「うむ、何でも、国境の森でこちら側から魔物を追い込み、隣国側で大量の魔物が森から溢れて町や村を襲うよう仕向けた、とか……。

そんなことをしても、我が国には何の益もない。ただの嫌がらせにしかならぬわ!」

……え?

「あっ、あの……、そっ、その森は、どのあたりにあるのでしょうか……」

……気のせいだ。

ただの、偶然。

私の背中を冷たい汗が流れているけれど、それは気温が高いせいだ。

……多分、そう。

きっと、そう……。

「王都から真っ直ぐ隣国との国境に向かったところにある、広い森だ。その森の真ん中が国境になっておる」

「……ぎ……」

「ぎ?」

「あ、いえ、何でもアリマセン……」

今、叫べば、不審に思われてしまう。

ここは、ぐっと耐えるのだだだ!!