軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

450 異 変 3

昨夜は、ファルセットと一緒に『リトルシルバー』に泊まった。

相変わらず、ここへ来る時にはついてくるんだよ。他のところへ行く時には、ついてこない時もあるのに……。

ファルセットのヤツ、『カオル様の護衛ですから』とか言っているけれど、ここへ来るのには危険は殆どないこと、そしてもし何かあったとしても、私ならどうとでもできることは分かっているはずだ。

だからあれは、子供達の相手をするのが好きだからなのだろうな、多分……。

そして自分の仲間を増やそうとでも考えているのか、早朝から子供達に剣術を教えている。

……これ以上、子供達がおかしな知識や能力を身につけたら、どうするんだよ!

まあ、この世界では女性や子供も身を護る手段を身に付けておくべきだから、止めはしないけどね。みんなもそう考えているのか、真剣にやってるし。

そう、子供のお遊びではなく、本格的な訓練なんだよ、ファルセットが子供達に教えているのは……。

まさかファルセットのヤツ、自分が受けた訓練をそのままやってるんじゃないだろうな……。

その子達は、フランセットの血は引いていないんだぞ! 女神の守護騎士(エインヘリヤル) の能力を持たない、普通の子供達なんだぞ!

……分かってるのか、オイ!!

* *

結局、レイコや私の違和感に関しては、何の具体案も出ないまま数カ月の日々が過ぎ去り、『リトルシルバー』の子供達はぐんぐんと成長していった。

高々数カ月とはいっても、成長期の子供の身長が伸びるのは早い。それも、十分な栄養を摂れるようになった今は、以前の分を取り戻すかのように伸びている。十分な運動もしているし……。

……但し、アラルを除く。

いや、アラルも平均通りに成長してはいる。

ただ、アラルはまだ幼く、そして男子の第二次成長期が始まるのは女子より遅いため、今はまだ女性陣の成長速度に追いついていないだけなのだ。

あと数年経てば、アラルも女子達に追いつき、そして追い越すはず。

そうなった時、アラルのおねショタハーレムがどうなるのか……。

おねーちゃん、とっても心配だよ……。

* *

今日も、いつものように元気に目覚め、恭ちゃんは店番、レイコはハンターとしての仕事で狩りに、そして私は流しの野良巫女……怪我人がいそうな場所を、適当にうろうろする……に出掛けた。

ちょっと危険度が高い森の、王都方向への出口付近で待っていると、怪我人がパーティ仲間と共に現れるんだよね、割と頻繁に。

そりゃまあ、ちょっと大きな怪我をすれば、最寄りの町であり医師や薬師が多い王都へ向かうのは、当たり前だ。

そしてハンターは、怪我をした時に、大金を払って神官に祈ってもらうという者はあまりいない。

怪我をしたハンター仲間の様子を見ていたり、自分も何度か怪我をして治療や祈祷をしてもらった結果、頼るべきなのは神官ではなく医師や薬師だということを実感するかららしい。

ま、そりゃそうか!

でも、野良巫女……神殿とは関わりを持たない自由巫女は大金を要求したりしないから、たまたま出会って『祈りましょうか?』と言われれば、別に拒絶されたりはしない。ハンターは神官は信じていなくても、女神は信じ、信仰している者が多いからね。

……というか、セレスの実在は『客観的事実』なので、信じる信じないの問題じゃないか……。

ただ、あのセレスが『祈れば、怪我を治してくれる』ということを信じるかどうか、という話だ。

神様が姿を見せる世界での唯一神教って、神様がそれを自覚して、上手く振る舞ってくれないと困るよねぇ、信者も、宗教関係者も……。

宗教っていうのは、客商売なんだからさ……。

まあ、夜の『御使い様劇場』の噂があるし、私がこの場所で仕事をするのは初めてじゃないから、このあたりに出没する野良巫女の祈祷は効く、という評判が結構広まっているらしい。

なので怪我人を連れたパーティは私の姿を見つけると急いでやって来たり、怪我人があまり激しく動かせない状態の時は、私を呼ぶために仲間のひとりが全速で走ってきたりする。

まあ、ハンターの間でもそこそこ知名度が上がってきたというわけだ、うむうむ……。

「お~い、巫女様、お願いいたします~!」

あ、お客さんだ!

怪我人をこっちに連れて来ずに私を呼ぶということは、軽傷じゃないな……。

よし、お呼びとあらば、即、参上!!

「は~い、すぐ行きま~す!」

……何か、巫女様らしくない営業形態だなぁ……。

* *

「ふむふむ、やはりここ数カ月、森の様子がおかしいと?」

「へぇ。魔物の数が増えておりますし、何より、バランスが崩れているのが問題でさぁ。

中級クラスの魔物が増えているのに、下級クラスのが増えてねぇ。そうなると……」

「餌が不足した中級クラスの魔物が、普段と異なる行動を取る、と?」

「その通りでさぁ。巫女様、よくご存じで……」

それくらいは常識だけど、世俗から離れた巫女は、そういうことはあまり知らないのかな。

ま、テレビも新聞もないし、本も碌に出回っていないからなぁ。本は高価だし、平民の識字率は低いし……。

そして、やはり魔物の様子がおかしく、今までになかった状況のようだ。

このパーティの怪我人は、腕をザックリとやられていた。

やはり、いつもと違う魔物の行動に、不覚を取ったとか……。

いつものように止血して、本当は傷の深部まで消毒し修復しているのだけど、少し痛みが残るようにして『表面を塞いだだけ。数日間は無理をしないように』と言い、その後情報収集に努めているわけだ。

血が止まり、痛みが和らぎ傷の表面が塞がったのを見て、急いで医師のところへ駆け込む必要がなくなったハンター達は、ひと休みしつつ私の質問に快く答えてくれている。

……まあ、当たり前だ。下手すれば腕が駄目になる可能性もあったというのに、どうやら大丈夫そうな上、要求された代価が携行食の干し肉少々なのだから……。

予定より早く帰投することになったため、携行食は余っているみたいだしね。

いや、この干し肉、食事として食べるにはちょっとアレだけど、スープに入れたりお酒のつまみとして食べたりするには、そう悪くないんだよね。

それに、他に代価として貰えるようなものを持っていないからね、この人達……。

さすがに、完全無料はどうかなと思い、少しだけ形ばかりのものを貰い、喜捨や托鉢のような体裁を取っているのだ。

そして、やはり怪我をするハンターが増え、魔物に襲われる村や商隊も増えているようだ。

そろそろ、住民達にとって厳しい状況になってきているみたいだなぁ。重傷者や死者もかなり増えているみたいだし……。

そろそろ限界かな?

……よし、仕方ない。

あまりズルはしたくないから自粛していたけれど、無為に人命が失われるのを看過するのは、私達の性に合わない。

アレをやるか……。

* *

「そういうわけで、アレをやるよ」

「「「……アレ?」」」

お店の2階、私達の部屋で説明したところ、レイコ、恭ちゃん、ファルセットの全員に、首を傾げられた。

……あ、そうか! みんな、アレは見たことがなかったっけ……。

「これ」

そう言って私がアイテムボックスから取り出したのは、以前1回使ったことのある、セレスが各地で配って回ったという『セレス呼び出し用水晶』のパクリポーション容器。

左右反転もトレースもしていないし、私的使用なので問題ない。

これでまたセレスを呼び出して、今の状況を教えてもらおうというわけだ。

セレスは、別に『試練は人間が自分達の力で乗り越えなければなりません』なんてことは言わない。

ただ、『歪み』によって次元世界が崩壊するのを防ぐことと、地球の管理者に粉をかけることしか考えていないはずだ。

だから、私が聞けば、教えてくれるはず。

「セレスを呼び出すための水晶だよ。セレスを呼んで、状況を教えてもらう」

「……『 機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキナ) 』じゃないの……」

レイコが呆れたような顔でそう言うけれど、私達のちっぽけな意地やポリシーを守るために死人が増え続けるのを看過するわけにも行かないだろう。

それに、いつ私達の知り合いが被害に遭うか分からない。

ファルセットは、自分が 真祖様(フランセット) と同じく女神セレスティーヌをその目で見ることができるのかと、目をキラキラさせて感動している様子。

……頼むから、 真祖様(フランセット) に張り合って、セレスに往復ビンタをカマしたりしないでよ……。

ソレ、嘘だからね! さすがにフランセットも、セレスにビンタを喰らわしたりはしていないからね! アレは後世の歴史家が勝手に書き加えたデマ、捏造だからねっ!!

「よし、じゃあ……」

「ちょっと待ったあぁ!!」

あれ? 呼び出し水晶を発動させようとしたら、恭ちゃんに慌てて止められた。

「香ちゃん、室内でそんなもの発動させたら、女神様が天井を突き破って降臨したりしない?

こんな狭いところに出現したら、壁にめり込んだりしない? 頭の輪っかで柱が切断されたりしない?」

「あ……」

……悔しい。

選りに選って、ぽややんの恭ちゃんに私の致命的なミスを指摘されたよ……。