軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

442 他大陸への旅行 1

「とりあえず、今日は私が知ってる町に泊まろうよ。

ふたりを捜して旅をしていた時に、しばらく滞在していた町なんだ。名物料理もあるし、知ってる人もいるし……」

「うん、それでいいよ。私達は殆ど知らないからね、この大陸のことは……。

今回の旅行中のことは、全部恭ちゃんにお任せだよ。

頼んだよ、ツアーコンダクター様!」

「えへへ、任せて!!」

大役を任されて、恭ちゃんが上機嫌だ。

私とレイコの役に立てることを、すごく喜ぶんだよね、恭ちゃん……。

学生時代は、戦闘場面……物理的に戦うわけじゃなく、口撃やら精神的な攻撃やら相手を嵌めるやらの、 そういった戦い(・・・・・・・) のこと……では、私とレイコが 矢面(やおもて) に立って、恭ちゃんは私達に護られて、ってポジションだったからねぇ。

多分、それが少し悔しかったのだろう。

自分だけが戦いに役立っていない、って。護られてばかりで、護る方になれていない、って……。

だから、自分が具体的に私とレイコの役に立てる場面があると、すごく機嫌が良くなるんだ、恭ちゃんは。

別に、そんなことがなくても、私達は皆同じ、KKRの仲間なのにさ……。

「じゃあ、搭載艇は上空に待機させて、4座の小型飛行艇で降りるよ。

小型艇なら、アイテムボックスの中に入れておけるからね」

「うん!」

恭ちゃんが言っているのが、妥当な判断だ。

搭載艇でもアイテムボックスの中へ収納することはできるけれど、デカいから着陸できる場所が限られるし、収納時や取り出す時に、消えた場所に空気が流れ込んだり、出現時に空気を押し退けたりするから、かなりの突風が吹くんだよねえ……。

なので、着陸時は小さな乗り物の方が安全なんだよ。

搭載艇は上空で待機させておく。

衛星軌道だと距離が離れすぎて、万一の時に即座に精密砲撃するのに時間や精度に影響が出るといけないから、高度数千フィートあたりで不可視フィールドを展開しておけばいいだろう。

そのあたりのことを話した時、恭ちゃんが『いったい、何と戦ってるのよ!』とか言っていたけれど、石橋は叩いて壊す、と言われた長瀬一族の血が、私にそうさせるのだ!

石橋と鉄の悪魔は、砕いてナンボ、だ。

「じゃ、先に格納庫に行ってて。私は、カンコに以後の行動を指示してから行くよ」

「わかった」

「了解!」

恭ちゃんの指示に従って、私とレイコは一足先に、格納庫の小型艇へ。

……ちなみに、カンコというのは、『艦載コンピュータ』の略だ。

一応、人間のように言葉で遣り取りできるけれど、自我があるわけじゃないらしい。

でも、私達は元日本人だから、一応は意思を持つ相手であるかのように扱っているのだ。

但し、搭載艇や小型艇を含む全ての艦載コンピュータにそれぞれ名前を付けるのは面倒だし、とても覚えきれないので、母艦のものには艦名と同じ名を、その他のものには全て『カンコ』で統一している。船に乗っている時に、その船以外の搭載コンピュータの話をすることはないからね。

* *

「お待たせ~!」

私達に少し遅れて、恭ちゃんが小型艇に乗り込んできた。

この小型艇は、惑星の重力圏内とか、宇宙空間での短時間の飛行とかを行うためのものなので、燃料的な問題はないけれど、座席が狭いとか、お手洗いがないとかいう方面での制約から、飛び続けられるのは数時間である。

……まあ、一度着陸して お花摘み(・・・・) やら身体を伸ばすやらすればいくらでも飛べるし、それだけの時間があればこの惑星を一周できるので、惑星内での移動だけのために使うなら、この小型艇で何の問題もない。

だから、ここへ来るだけなら搭載艇は必要なかったけれど、安全を確保するための拠点として、そして野営……と言えるかどうか分からないけど……のために、搭載艇を持ってきたのだ。

「じゃあ、行くよ!」

そして、 操縦席(コックピット) に納まった恭ちゃんが、お約束台詞を叫んだ。

「恭子、行きま~す!!」

「宇宙船や小型艇の操縦ができると、色々とお約束台詞が言えるから、いいなぁ……」

レイコが、羨ましそうにそんなことを言ってるけど、……確かに、羨ましい……。

* *

恭ちゃん馴染みの町の近くの、森の中。

小さな泉の近くに木々が生えていない小さなスペースがあり、そこに着陸。

夜明け前で薄暗かったし、外に漏れる光源はないから、不可視シールドなしでも見つかる心配はない。

……そもそも、こんな時間帯に起きている者も、ましてや森の中をうろついている者も、いるとは思えない。

狩りに来て野営している者がいたとしても、不寝番が警戒しているのは地上であって、夜空を眺めている見張り役なんか、いやしないだろう。

ま、そういうわけで、着陸後、しばらくは小型艇の中で世間話。

いや、暗い森の中を歩く、なんて危険は冒さないよ。

いくらレイコの魔法や恭ちゃん提供の科学装備があっても、万一ということがある。

私達は、無用な危険は冒さないのだ。石橋、石橋……。

それに、泉なんて、魔物や動物が水場として利用しているに決まってる。

夜目が利く連中相手に、明るくなる前に出会うのは真っ平だよ。

……完全に明るくなってからだと人目につく確率が上がるから、着陸にはこの時間帯が一番良かったのだ。決して、何も考えずに降下しちゃったわけじゃない!

* *

「かなり明るくなったし、魔物や野獣の姿もないよ。スキャナーにも、感なし」

「探索魔法でも、近くに中型以上の生物はいないわね」

恭ちゃんとレイコが、それぞれ安全確認をしてくれた。

「よし、出発!」

「「お〜っ!!」」

それぞれ、用意しておいたリュックを背負い、小型艇から下りて……。

「収納!」

小型艇をアイテムボックスに取り込んだのは、恭ちゃん。

私とレイコは、自動的に操縦法が頭にインストールされるわけじゃないから、恭ちゃんが提供してくれた乗り物は、自動操縦か、私達用に操縦装置がすごく簡略化してあるヤツでなきゃ駄目なんだよ……。

なので、操縦担当は、恭ちゃんだ。

これは、恭ちゃんの出番を奪わない、という意味もある。

活躍の場が少ないと、拗ねるんだよなぁ、恭ちゃん……。

いや、気持ちは分かるんだけどね……。

「ここから町までは、歩いて1時間くらいかな。途中で細い道に出るから、そこからは少し歩きやすくなるよ。

夜行性の魔物や野獣はもうねぐらに戻っているだろうけど、昼行性の危険なヤツもたくさんいるから、あまり気を抜かないでね。

まあ、レイコの探索魔法と、私が提供した科学装備があるから出会っても大丈夫なんだけど、超至近距離で木の後ろとか樹上から突然飛び掛かられてガブリ、とかだと、対応できないからね」

確かに、恭ちゃんが言うとおり、思わぬ事態というのはいつでも起こり得る。

木々や丈の長い草が密生している場所では、パーソナルバリアを張って歩くと、突っ掛かったり挟まったりして歩きにくいから、バリアは使えないのだ。立ち止まって迎撃する時は使えるけれど。

なので、油断している時に首筋をガブリ、とかやられて即死になっちゃうと、ポーションでもどうにもならなくなっちゃうのだ。

ポーションを使っても、さすがに死者は蘇生できないから……。

それは、何度か魔物や動物で実験して、検証済みだ。

セレスの種族も、おそらくそのあたりはルールがあるのだろう。

刺身にポーションをかけると魚に戻ってビチビチと跳ね回る、なんてことになると、さすがにそれは生命に対する冒涜というか、常軌を逸しているというか……。

ま、世の中、最低限守るべきライン、絶対に超えちゃいけない線というものがあるんだよ、うん!

とにかく、そういうわけで……。

「行くぞペガス!」

「「ラーサー!!」」