軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

441 依 頼 3

あとは、概ね、いつもの通り。

何度も繰り返した『御使い様劇場』を少しアレンジした、『加護持ち巫女劇場』をやって、さっさと引き揚げ。

商会主から私のことを説明された奥さんは、驚いて恐縮していたけれど、私達が帰った後に商会主をかなり締め上げたことだろう。

女性が、知らない者達に寝顔を、それもやつれたノーメイクの顔を見られることがどれだけ恥ずかしいことかが分からないようなデリカシーのない男は、怒られて当然だ。

まあ、あの様子なら、夫婦仲は良好みたいだから、安心だ。

怒られるのも、軽いじゃれ合いみたいなものだろう。

……けっ、モゲロ!!

* *

「これで、一段落かな。 暫(しばら) くは王様やカルド商会……ダルセンさんの取引先である大店……の商会主絡みの治癒依頼は来ないと思う。

だから、私達3人は、みんなそれぞれの活動を進めようと思う。

レイコはハンター活動、恭ちゃんは貴族や金持ち向けの珍しい商品の販売、そして私は孤児院や、怪我人が多そうな場所、……ハンターが強い魔物相手に戦う森の出口近くとかを巡回して、名声と影響力を得よう。

……そして、時々3人で旅行しよう。他の大陸とか、秘境とか、色々なところへ……」

3人で、数日間の旅行に出たことは、何度かある。

でも、 王都(ここ) でお店を開いてからは色々とあったし、新規開店したばかりのお店が何日も休むのはアレかと思って、3人一緒に長期間不在にするのは避けていたのだ。

……でも、店員達も育ってきたから、私達が暫く不在でも大丈夫だろう。

というか、大丈夫であることのテスト、という意味合いもある。

もし何かあったとしても、『緊急時に押すボタン』というのが設置してあるので、安心だ。

すぐに私達が持っている端末に通知が来るやつだ。

秘密保持のため通話はできないけれど、緊急度や重要度によって何種類かのボタンに分かれているから、それに応じた急ぎ具合で、すぐに戻ってこれる。

「賛成!」

「うん、それでいいよね。暫くはのんびりしつつ日常生活を送ろうか……。

何せ、私達には時間だけはたっぷりあるからね」

ふたりも、賛成してくれた。

レイコが言う通り、時間はあるからねぇ……。

のんびり行こう、のんびりと……。

「久し振りに、3人でまったりできるね。

……何事も起こらなければ、だけどね!」

「「…………」」

恭ちゃんの言葉に、悪い予感がする、私とレイコ。

いや、恭ちゃんって、 言霊(ことだま) 使いの才能があるんだよ……。

主に、悪い結果が実現する、という方向において……。

レイコ 曰(いわ) く、『それは言霊じゃなくて、その後の恭子の言動が「有言実行」としてそうなるルートへと 驀進(ばくしん) しているだけ!』ってことらしいけど……。

うん、それだと、『言霊』じゃないか、確かに……。

そして、なぜか偶然にも、お店と借家の両方共、近くに警備隊の詰所ができたから、治安状況がいいんだよねぇ。

日本でも、交番の隣の家に強盗や窃盗に入る者は、あんまりいないよね。それと同じだ。

だから、どちらにいる時も、あまりおかしなのに絡まれたり襲われたりする心配がかなり低くなったのだ。

まあ、防犯設備がてんこ盛りだし、私達3人のうちの誰かがいれば、簡単に対処できるけれどね。

私ですら、特殊なポーションを封入したガラス玉とか、恭ちゃんに貰った護身用装備とか小型の武器とかがあるから、何とでもなる。

それに、私達が何もしなくても、多分建物の防犯設備だけで侵入者は無力化できると思う。

安全のため、そして仲間を護るためなら、3人共、容赦ないからね。うむうむ……。

* *

そういうわけで、一週間の旅行に出発だ。

メンバーは私達、KKRの3人。

ファルセットが『護衛として、自分もついて行く!』と言ってゴネたけれど、女神としての秘密の仕事があるから、とか、私達が不在の間に安心してお店や店員の護衛を任せられるのはファルセットだけだ、とか言って、何とか了承させたのだ。

……どうも、あまり納得してはいないみたいだったけどね。

お店は、お休みにはせずに店員達に任せることにしたのだけれど、その間、高額商品は販売しないことにした。安全と、トラブル防止のためにね。

店員達だけだと、護衛は商売の話には口出ししないだろうと思って、無理な値引きをゴリ押ししてくる者が出る可能性があるからね。

ま、安全第一だ。

そして、乗り物は居住設備付きの、やや大きめの搭載艇。

宿屋にも泊まるけれど、どこでも快適に過ごせるようにと、設備が充実している搭載艇を選択したのだ。

安全に眠れること、シャワーやトイレがあることは、必須条件だからね。

……勿論、移動が楽ちんだということもある。

今回の旅行先は、他の大陸だからね。小さな戦闘機とかに3人ギュウ詰めになっての長距離移動は、あまり嬉しくない。

そして搭載艇には、現地での移動用として、4座の小型飛行艇や、下駄代わりのホバーバイクとかも積んである。

今回の旅は、レジャー目的だからね!

勿論、ホバーバイクはみっちりと練習したし、衝突防止やら転倒防止やらの安全機構がこれでもかと付けてあるから、事故の心配は、ほぼない。

『リトルシルバー』のみんなには、用事があるから一週間は来ないよ、と伝えてあるから、心配ない。

これくらいの期間なら、前もって教えておけば、私達が不在であっても『見捨てられた』と思ってパニックになることはない。子供達はともかく、名馬を4頭も置き去りにすることはないだろうという安心材料があるしね。

……子供達がそういう考え方をするのも、どうかと思うのだけど……。

でも、この世界ではそう考えるのが普通らしく、いくら言っても矯正できないんだよなぁ……。

ま、それはまた今度、ゆっくり考えよう。

今は、恭ちゃんへのサービスを兼ねた、一週間のバカンス……実は、調査を兼ねた旅行なんだけど……を楽しもう。

「……両舷全速ぅ、搭載艇、発進します!!」

「あ~! 今、私が言おうと思ってたのにぃ~!」

「早い者勝ちだよ!」

レイコと恭ちゃんが、何やら低レベルの戦いを繰り広げている……。

* *

「ここが、私がこの世界に降ろされた大陸だよ!」

そう言って、恭ちゃんがメインスクリーンを指差した。

「「ほほう……」」

スクリーンに映っているのは、とある大陸。

飛行高度が高いので、大陸の全体が映っているのだ。

高々度を飛んでいるのは、地上から目撃されないようにというのと、高度が高い方が空気抵抗が少なく、速度が出るからとか……。

燃費も良くなるらしい。

……いや、地球の航空機だと、確かにそうかもしれない。

でも、この搭載艇の動力源、そんなの関係ないよね?

空気抵抗なんてパワーでねじ伏せられるし、燃料なんか、一度燃料ペレットを入れれば、交換が必要になるまで数十年は保つのだから……。

げに恐ろしきは、日本人の貧乏性、『 勿体(もったい) ない精神』……。

「ふたりがこの大陸にいると思って、随分探したんだよ!」

「「あ〜〜……」」

セレスのやつ、どうしてこんなに離れた場所に恭ちゃんを降ろしたんだよ……。

その方が面白いから、とかか?

……いや、セレスのことだ。多分、私がいる惑星上に降ろす、ということしか考えずに、適当に降ろしたに違いない。別に、悪気があったとかじゃなくて……。

自分達にとって惑星上の距離なんか関係ないから、『近くに降ろさなきゃ』なんてことは、発想すらなかったのだろうなぁ……。

今後も、セレスのそういうところには、要注意だぞ……。