軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

432 御用聞き 6

「お呼びにより、参上いたしました!」

「う、うむ、御苦労である!」

登城したら、いつものように、すぐに少人数用の会議室……というには少し豪華な部屋へと案内されて、前回と同じメンバーである、王様、宰相様、王太子殿下と顔合わせ。

向こうの護衛は、なし。

……しかし王様、何だか時々言葉がブレるんだよねぇ……。

もっと偉そうにしてくれればいいのに、変に遠慮しているみたいで、時々言い淀んだり、敬語を使いかけたり……。

そりゃ、確かに王様と言えど人間だから、人間と女神の仲介役である聖職者は王族より女神寄りだと言えなくはないのだけど、それはまぁ建前であって、本当に聖職者は貴族や王族より上位だなんて思っている者はいない。……勿論、本人達を含めて、ね。

それだけ、信心深いのかなぁ、王様……。

あ、私が加護持ちだからか!

確かに、御使いや女神の愛し子程じゃないけれど、女神の加護があるということは、考えてみればかなりのインパクトがあるか……。

自分達で考えた設定なのに、ちょっと効力を過小評価していたかな。

いやいや、そんなことより……。

「一刻も早く患者にお会いしたいので、無礼な口利きをすることをお許しください。

……患者はどこに? 怪我もしくは病気の状況は? 危篤とかではなく、時間的な猶予はあるのですか?」

「怪我の子供がふたり、どちらも怪我をしてから少し日が経っておる。なので一刻を争うというようなものではなく、生命の危険はない」

「……」

やはり、前回は遠慮していたのか。

怪我をしている子供がいたのに、生命には別状ないからと、私の手を 煩(わずら) わせることを避けたのだ……。

「……次からは、余計な遠慮はなさいませんように!」

ちょっと強い『圧』を込めて、睨むようにそう言った。低い声で……。

あ、少しビビってるみたいだな、王様……。

「あ、ああ、分かった……。

では、すぐに案内する。怪我をしている子供の片方は移動させづらいので、その者の邸にもうひとりを行かせている。ついてきてくれ」

さすが王様、余計なことで時間を無駄にすることなく、すぐに案内……、って、他家の邸に行くのに、王様が自分で案内するんかいっ! そして、宰相様も、王太子殿下も……。

いや、勿論護衛が付くし、お付きの者が数人付いているけれど、情報秘匿のためか、そんなに大人数じゃない。王様達も、上着を替えて、兵士や文官に見えるような恰好になってるし。

でも、国王陛下と王太子殿下が城外で一緒に行動するのって、リスク分散というか安全対策というか、そういう観点から考えると、駄目なんじゃないの?

……まあ、怪我人の家族の感謝と忠誠心を王様に向けさせるには、本人が立ち会った方がいいというのは理解できるけどさ……。

王太子殿下もいれば、王位を引き継ぐ時にも味方してくれそうだしね、一門を挙げて……。

さすが王様、そのあたりのこともしっかり考えているのか。

そういう利用の仕方なら、いくらでもやってもらって構わないよ。私をうまく利用して、政情の安定に役立ててくれればいい。

そのままぞろぞろと歩いて行くのはちょっと目立つんじゃないかな、と思っていたら、勿論そんなことはなくて、お偉いさんチームと私達は、馬車に乗せられた。あんまり派手じゃなくて、王家の紋章とかも付いていない、割と地味なやつ。

……お忍び用かな?

まあ、地味といっても、王様が乗るにしては、ってだけで、充分金持ちっぽいやつだけどね、うん。

* *

そうして、お城を出てから少し経って、とある邸の敷地内へと入っていった。

……勿論、馬車ごと。

王都で、馬車が門から敷地内へと入れる邸。……つまり、豪邸、ってことだ。

まあ、上位貴族の邸なんだから、当たり前か。

勿論、事前に話は通してあるらしく、玄関前には当主夫妻らしき人と、使用人達が整列している。

ここで降りた後、馬車は馬車止めに移動して待機、かな。

出迎えの人達の周りには、護衛の兵士達がいる。

これって、様子から見て、この邸の護衛じゃないよね。

多分、先行していた王宮の護衛達だ。

ま、あんまり大人数でぞろぞろと移動するのは目立つし、先行部隊によって現場の安全対策を確認しておくのは当たり前か。

何しろ、王様と王太子殿下が一緒に行動しているんだ。警備が厳重で当たり前、というか、厳重じゃなければおかしいよね。

……よし、行くぞ!!

* *

「ようこそお越しくださいました!」

いくら変装していても、さすがに王様や王太子殿下、宰相様を見間違えることはないらしく、正しくそのお三方に向かって頭を下げる、当主夫妻を始めとする出迎えの人達。

それに対して、王様が 鷹揚(おうよう) に 頷(うなず) き、形式的なことはいいからさっさと案内しろ、というかのように手で合図した。

さすが王様、物事の優先順位が分かってるなぁ……。

まあ、こんなところで時間を取っていたら、万一襲撃者がいた場合には危険度が増すだけだしね。

さっさと邸内に入るべきだよね、そりゃ。

当主さんもそれは分かっているらしく、すぐに案内してくれた。

それに続いて、皆がぞろぞろと邸内へ。

そして……。

「娘のリエスと、クレツール伯爵家の方々です」

夫妻に案内された部屋……娘さんの部屋らしい……にいた人達を紹介された。

ベッドで寝ている、10歳前後の少女。他家の夫妻と、12~13歳くらいの少年。

その他の者はいない。秘密保全のため、最低限の者しか立ち会わないように指示されていたのだろう。普通なら、兄弟とか世話係のメイドとかが付いているだろうからね。

こっちは、王様、王太子殿下、宰相様の他にも、3人くらい付いているけれど……。

さすがに、護衛はドアの外に残してある。

王宮の護衛である、精鋭近衛兵が秘密を漏らすことなどあり得ないだろうけど、しかしそれでも余計な危険は冒さない。自分の身から護衛を遠ざけることになろうとも。

く~っ、渋いねぇ、王様……。

「リエスは、『お料理をしてみたい』と言って勝手に調理場に入り込み、事故で煮えたぎった油を被りまして……。料理人が庇ってくれたのですが、首筋から肩、背中に掛けて大火傷を負いました。

生命には別状ありませんでしたが……」

うん、貴族家息女としては、致命傷だ。

平民の商家にでも嫁げればいいけれど、ずっと小姑として実家住まいか、修道院へ行くことになるかもしれない。

政略の駒として使えない、とかいう問題以前に、娘の幸せを願う親としては、そりゃ辛いだろう。

娘さん本人は、火傷の 痕(あと) を見せたくないのか、顔の半分が隠れるくらいに毛布を引き上げて、固く目を閉じている。

眠っているわけではなく、人と目を合わせたくないのだろう。

……多分、訪問者が王様や王太子殿下だということは知らないな、こりゃ……。

知っていれば、さすがにこんな態度は取れないだろう。

というか、先に来ていたクレツール伯爵家とやらの3人の目から痕を隠すためにそうしていたのかも。

少女にとって、他人に酷い痕を見られるのは嫌だろうからねぇ……。

……って、ちょっと待て!

この父親、さっき、何て言った?

「……料理人が庇ってくれた? その料理人は?」

「はぁ、娘と同じく大火傷を負いましたが、今は仕事ができる状態まで回復しております。

事故は娘のせいで起こったものであり、料理人達には責任がありませんでしたから、勿論、娘を庇った功績を認め、クビにすることなく雇い続けております」

自分が寛大であり、使用人に対しても慈悲深い良き貴族であることを自慢するかのような、その言い方……。

はぁ? ふざけんな!!

「呼んでください」

「……え?」

「その、火傷した料理人を、今すぐ、この場に呼んでください!!」

自分の娘が大事なのは分かる。

……でも、女神の加護が与えられるというのに、娘を庇って大火傷をした使用人はスルーかい!

ふざけるんじゃないぞ……。

女神の加護には、身分なんか関係ないよ!!