軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

425 店員の雇用 3

イルン(女)11歳

ティナ(女)12歳

タリア(女)14歳

ウォン(男)12歳

オルト(男)13歳

これが、従業員として採用した、孤児院の子供達。

孤児院の例に漏れず、子供達の名は、みんな短い。

これは、危険な行為を制止する時に、速く、鋭く名を呼べるようにという実利面と、新しく来た子供が皆の名前を覚えやすいようにとか、名前の長短で揉め事が起きないようにとか、様々な理由があるのだそうだ。

だから、孤児院に入る時点で正式な名前があり、それが長いものであった場合には、短い愛称で呼ばれるようになるとか……。

そういえば、『リトルシルバー』のミーネも、本名は確か、ミーネットだったな。

ミーネットくらいなら、まだそんなに長くないけれど、フランソワーズとか、エリザベスとか、フィーフィリズ、リュテセリア、ジュゲムジュゲムゴコウノスリキレ、とかだと、複数の者を呼ぶ時には、ちょっと面倒か……。

それに、『ウェスメイントルドージュニア』というような名前の子と、『ポチ』というような名前の子が混在していたら、絶対に揉め事の 種(タネ) になるよねえ。

子供達は、そういうのには結構残酷だもんなぁ……。

人選は、女の子の方を多くして、更に最年長の者をしっかりしたタリアにすることで、男尊女卑の世界であるここで男子達が調子に乗って、仕事を女の子達に押し付けたり傲慢な態度に出たりすることを防ごうと考えたのだ。

いくら孤児院ではみんな平等で暮らしていても、外の社会で男尊女卑の実態に触れれば、毒される可能性があるからねえ。

いや、まあ、そんなことはしそうにない、真面目そうな子を選んだけどね。

でも、人は環境によって変わるものだからね。

ま、ふざけた態度をしてくれたら、すぐに チェンジ(・・・・) をお願いするけどね、勿論。

孤児院には、働きたがっている子供達は大勢いるのだから。

……アレだ、アレ! リアル『お前の代わりなど、いくらでもいるんだからな!』というやつだ。

日本だと、そんなことを言っていると人手不足倒産とかになっちゃうことがあるらしいけれど、少なくとも、この国の孤児業界は人余りで、買い手市場なのだ。

日本とは違い、雇用主の権限が大きくて、従業員の権利なんか殆どない世界だしね。

それに、チェンジの時に、『次もふざけた態度を取られたら、もう男の子は採用しないか、孤児を雇うこと自体をやめる』とでも言えば、効果があるだろう。

それって、連中が一番恐れるやつだからね、『自分のせいで孤児院の名が落ちて、後輩達の就職先がなくなる』っていうの……。

雇うのを全員女の子にすれば、とも思ったけれど、女の子ばかりだと安全面で少し不安だったのだ。ただでさえ舐められやすい孤児の店員なのに、その全員が女の子というのは、心配で……。

そのための護衛なんだけど、安全対策には上限というものはないからね。

それに、『女の子しか雇わない』なんて言えば、男子達が暴動を起こしかねないからねぇ……。

孤児院で従業員募集のことを子供達に話した時の、あの、異様な空気……。

ぎらつく目。

絶対に自分が、と思いながらも、それを表には出さず……バレバレであるが……、他の者達をそれとなく牽制し、圧力を掛ける者達。

15歳の誕生日が迫っているらしき年長者達の、あの、血走った目。

……いや。

いやいやいやいや!

あそこで、採用は女の子のみ、なんて言える勇者はいないよ!

何しろ、あのファルセットですら、少し引き攣ったような顔をしていたからなぁ……。

まともな職が得られるかどうか。

一生に一度、あるかないか……ない方が、圧倒的に多い……の 機会(チャンス) なんだ。

そりゃ、自分の人生が懸かっているとなれば、いくら仲良しの仲間達であっても、譲れるもんじゃないか。

護衛の方は、予定通り、ふたり雇った。

ウェイン(男)46歳

リック (男)38歳

どちらもCランクで、ソロ。

ふたりは、ハンターギルド支部で顔を合わせたことはあるけれど、別に知り合いというほどの関係ではないとか……。

まぁ、この歳でソロなんていうのは、事情があるに決まってるよね。

というか、勿論、そのあたりは面接で確認済みなんだけどね。

そこを確認しなくて、何のための面接か、ってことだ。

年配の方のウェインさんは、ハンターとしては珍しく、温和に見える。

……多分、 そう見えるだけ(・・・・・・・) 、なんだろうけど……。

いや、別に擬態している悪人、とかいうわけじゃなくて、本当に温和なのだろうとは思うよ。

……普段は……。

だって、本当に根っからの温和で優しい人なら、この歳までハンターや傭兵としては生きていられないだろうからね。

なので、やるべき時には、平気で非情な判断をするはずだ。

ソロなのは、右膝を痛めてしまい、パーティで活動すると他のメンバーの移動速度について行けなくなったからだとか……。

移動に問題があるだけで、戦闘力そのものには大きな影響はない、とか……。

だから、ソロでマイペースでできる狩りや採取、新人や10歳未満の子供達の集団採取の護衛とかの、稼ぎが少ない依頼を受けていたそうな……。

そこに、割と条件の良いうちの依頼が出たものだから、飛び付いた、と……。

そりゃ、戦いが長引けば影響が出るかもしれないけれど、お店の警備で、ひとりで長時間戦い続けることなんか、あり得ないよね。

王都のほぼ中心部なんだから、すぐに警備兵が来てくれるに決まってるよ。

それと、謝礼目当ての、近くにいたハンターとかも……。

兵士にもハンターにもなれなかったヘナチョコのチンピラ相手に数十秒戦って、小金貨数枚の謝礼が貰えれば、そりゃ大儲けだもんねぇ。そりゃ、大喜びで参戦するよね、近くに居合わせた、腕に覚えのある連中……。

カッコいい、正義の味方をやって、礼金を稼げる。こんなチャンス、見逃す奴はいないよね、そりゃ。

リックさんの方は、そろそろ年齢的にハンター稼業がキツくなってきたそうで、狩りや商隊の護衛とかの依頼を受けるのはやめて、危険が少なくて体力的にもそうキツくない、町の中での警備員やら人身警護やらでもう少し働いて、その後、小さな店でも開きたい、とか……。

なので、警備の仕事をして稼ぎながら、商売の仕方が見られるのは参考になるかも、と考えたとか……。

いや、納得のできる、堅実な応募理由だ。

……うちのお店のやり方が、参考になるかどうかは別にして……。

というわけで、全員集まっての顔合わせは、無事終了。

明日からは、 OJT(オンザジョブトレーニング) ……実際の仕事を通じての指導……が始まる。

店員チームは、とりあえずふたりと3人の2チームに分かれて、1日交代で。

一度に5人に教えるには、店の売り場が狭すぎるし、教えるのとお客さんの対処の両立が難しいから、二度手間になるけれど、半分ずつ教えることにした。

警備員の方は、別に教えることは殆どないから、OJTの必要はない。

なので、早速、明日から普通に勤務開始。

うちの、ゴロツキ共に対するスタンス……悪党共には、慈悲もなし……を伝え、余裕があればなるべく死なせないように、余裕がなければ生死を問わず、とだけ言っておけば、他には何も指示することはないからね。

彼らは、この手のことには私達より遥かに詳しい、プロなのだから……。

犬、猫、鳥が万引きGメンだとか、会計を通さずに店から商品を持ち出すと警報音が鳴るとかいう説明にはかなり驚いていたけれど、『他国で発明された新技術です』とか、『真の巫女であれば、女神の加護で動物と心を通じ合えるのは、ごく普通のことですよ?』と言って、納得させた。

女神の神罰を心配することなくセレスの名を利用できるのは、女神の実在を疑う者がいないこの世界では、とても便利なのだ。ふはははは!

あ、ファルセットが、警備要員のふたりに何やら説明してくれていた。

そして、今日はこの後レイコがずっと私と恭ちゃんと一緒にいるということを確認した後、警備の先任者としてふたりに夕食を奢りながら色々と話をする、と言って、恐縮するふたりを連れて、繁華街の方へと消えていった。

うん、おそらく、 後輩(・・) ができて、嬉しいのだろう。

……ふたりとも、自分の2~3倍の年齢の、おっさんだけどね……。

まあ、脳筋の世界では年齢ではなく実力、そして先輩後輩の関係がモノを言うのだろう。

多分……。

よし、これで、私達の自由度が大幅にアップ!

いや、私達全員がお店にはノータッチで従業員に丸投げ、ということじゃなく、普段はレイコと恭ちゃんか、私とファルセットの、どちらかがお店にいるよ。

……この組み合わせなのは、勿論、特別な場合を除いて、ファルセットが私の護衛の任に就いていて、離れないからだ。

レイコが私と一緒にいる時には、短時間であれば離れる時もあるけれど、普通は一緒にいる。

それに、会計台には非常ブザーがあって、押すと私達が持っている受信機に信号が送られる。

それ以外にも、防犯カメラと集音マイクが設置されていて、遠くからモニターできるようになっているし……。

なので、私達が不在でも、何かあればすぐに駆け付けられるのだ。

そう。私達が、子供達を危険に晒すわけがない。

警備員は、ファルセットがいない時に、簡単な揉め事を超常の力なしでクリアするためと、私達がいない時に、私達の到着までに子供達に被害が出ないようにするためのものだ。

それと、揉め事の発生を未然防止するための、抑止力のための要員。

子供達に、心理的な安心感を与えるためでもある。

そういうわけで、念願の人手不足を解消できたから、3人で色々と遊び回れる……、って、ファルセットの不満そうな顔が、脳裏に浮かんだ……。

あ~、ハイハイ、ファルセットも入れて、4人で、ね。