軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

408 攻 撃 4

「……うちに商品を売りに来た女だな?」

今現在の状況的には相手の方が優位であるが、それは暴力的かつ不法行為による威嚇のためであり、商売としての交渉とは関係ない。

脅しで取引の内容を意のままにされたのでは、商売などやっていられない。

なので、脅しには屈しない。

もしその場で強制的に契約させられたとしても、その後すぐにその契約が強制されてのものであると訴え出て無効にさせるし、それとは別に、キッチリと報復を行う。

相手と同じ、非合法な手段であったり、罠に嵌めて大損をさせたり、金の力でジワジワと追い込んだり……。

なので、相手に今、自分を害そうというつもりがないと分かれば、割と強気な態度で交渉することにしているのである。

もし相手が頭の悪そうな粗暴な男であったなら、勿論、こんな態度は取らない。馬鹿は、感情で短絡的な行動を取ることがあるので……。

相手を見極め、その場における最良の選択肢を選ぶ。

それが、金儲けの秘訣である。

「こんな真似をして、どうなるか分かっているのか? 商品を高値で売りたいなら、馬鹿な真似はせず、昼間に来て、普通に交渉すれば……」

「いやいや、アンタがそれを言う? じゃあ、もう一度だけ聞くよ?

……どうして、あの店を襲わせたのかな?」

「…………」

(どうも、様子が違う。

この娘には既に何の利害関係もなく、賊に襲われようがどうしようが無関係の商店のことに、なぜこんなに拘るのか。

目的は、自分が持ち込んだ商品をいかに高値で売るか、ということではないのか。

……そして、普通に商談して価格を交渉すれば良いというのに、なぜこのような非合法な手段に訴えたのか。

金になる商品を持っているのは自分の方なのだから、それを最も高値で売る方法を考えるのが常識であろう。

なのに、なぜ下手をすれば全てを失うことになるような、馬鹿な真似をする?)

そのあたりがどうしても理解できないが、向こうが話をしたいと言うならば、付き合ってやってもいい。どうやら、こちらに危害を加えるつもりはないようであるし……。

そのうち、警備兵が駆け付けてくる。

……つまり、時間は自分の方に味方するのだから……。

そして上手く立ち回れば、賠償としてあの商品を手に入れることも可能かもしれない。

そう考えた商会主は、落ち着いて話し相手を務めることにした。

「あの店、とは? いきなりそのようなことを言われても、ワケが分からん。

うちは商会だから、取引先が多いからな……」

適当に、そう返す商会主であるが……。

「あ~、まだそんなことを言ってるのかぁ……。

じゃあ、警備隊の人が来たら、全部説明するかな。

うちの商品を狙って、私が取引したと思った店を襲わせたり、それより以前に、隣国でオーリス商会……、ダルセンさんの商隊を襲わせたりしたことも、全部、ね。

証拠なら、あるよ?

裏組織の連中や実行犯を捕らえているからね。証人には事欠かないよ。

商隊を襲った連中は、全員確保してるし……」

「なっ!!」

「だから、いつまで待っていても、オーリス商会の商隊が運んでいた荷は届かないよ。

それに、襲われた時の荷は、珍しくはあるけれどお酒だからね。私が見せた商品程の価値はないよ」

「…………」

期待していた、オーリス商会の荷の奪取が失敗。

しかも、実行犯が捕らえられ、全てを吐いた。

……でないと、全てがバレていることの説明が付かない。

なので、言葉に詰まる商会主であるが……。

「まあ、いくらうち関連の商隊が襲われても、絶対に積荷が賊の手に渡ることはないのだけどね」

「え? そっ、それは、どうして……」

そんなことを言われれば、気になるのは当たり前である。

それに、誰でも抱くような疑問なので、そう尋ねたところで、別に自白したことにはならないとでも考えたのか、それとも、何も考えずに反射的に尋ねてしまっただけなのか……。

「ふふふ、気になる?

実は、馬車に仕掛けがしてあるんだよね~。

もし正しい手順を守らずに積荷を降ろそうとすれば、荷台が壊れて積荷が落下、全てが粉々になるようになっているんだよね。

それに、何もしなくても、一定の日数ごとに仕掛けの一部をリセットしないと、同じく全ての積荷が駄目になるようになっているし……」

「ど……、どうしてそんなことを……」

商会主の顔色が、悪くなっている。

確かに、そのような、下手をするとちょっとしたミスで商品を全滅させるような危険な仕掛けを付ける意味が分からないのであろう。

「いや、勿論それは、悪党を儲けさせないためだよ。

うちの荷馬車を襲っても、銅貨1枚の稼ぎにすらならず、抵抗されて被害が出た分だけ大損、ってことが知れ渡れば、誰もうちの商隊を襲わなくなるでしょ?

うち関連の商隊を襲って大儲け、なんて成功体験をさせれば、次もまた襲われるじゃないの。

いくら襲っても、稼ぎはゼロで、被害だけが残る。そういう噂が広まれば、うちの商隊が襲われることはなくなるじゃない」

「…………」

商会主の目が、泳いでいる。

既に襲撃が失敗したということを教えられているが、もし成功していたとしても、商品は決して無事な姿で届くことはなかったのだと知って、動揺しているのであろうか……。

おそらく、奪った馬車がここへ到着するまでに、雇った連中が積荷を調べるに決まっているとでも考えているのだろう。……勿論、荷の一部を中抜きするために……。

それに、もし連中が積荷を調べなかったとしても、時限装置が作動する、と……。

つまり、最初から商隊の商品を手に入れられる可能性はゼロであったということである。

勿論、仕掛けの件は、カオルの ハッタリ(ブラフ) である。

いくら何でも、僅かなミスで商品を台無しにするような仕掛けをする商人はいない。カオルとダルセン氏を含めて……。

そんなことをしなくても、後で商品の回収と、報復をすれば済むことである。

なお、 ハッタリ(ブラフ) である、時限装置による自爆機能については、カオルがアポロノーム(小沢さとる先生の方)のものを参考にした。

リスペクトとオマージュ、引用と参照、左右反転である。

(……遅い……。もう、とっくに来ていてもよい頃だろう!)

商会主は、 焦(じ) れ始めていた。

この 侵入者(しょうじょ) とダラダラと話しているのは、どうやら自分に危害を加えたり誘拐したり、というようなつもりがないらしいと安心して余裕ができたことと、時間稼ぎのためである。

さすがに、この騒ぎは近隣の家屋や商家に聞こえているであろう。

ならば、複数の家から警備隊詰所に連絡が行き、すぐに警備兵が駆け付けるはず。

……なのに、かなりの時間が経過したというのに、一向に警備兵到着の気配がない。

さすがに、そろそろ不審に思い始める頃であった。

どうやら、商会主は知らなかったようである。

自分と、自分の店がどれだけ嫌われているかということを。

……そして、皆が関わりたくないと思い、知らぬ振りをしているということを……。

更に、裏の組織の謎の壊滅事件の後で、警備隊が 何処(いずこ) からか『決して関わってはならないモノの存在』に関する情報を得ており、もし通報があったとしても、 様々な理由により(・・・・・・・・) 、その出動が大幅に遅れることになるということを……。

そして、カオルは考えていた。

(まだ、時間の余裕はあるよね……)

そして、ファルセットも考えていた。

(出番は! 私の出番は、まだですか!!)