軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

405 攻 撃 1

「くそっ、どうなっているのだ、いったい……」

そう言って悔しがる商会主であるが、番頭達は何も言えなかった。

そもそも、状況を完全に把握している者の数が少なかった。

同じ王都の他の商店を襲わせるなどという暴挙は、さすがに知る者の数を絞っているため、従業員の大半はそのことを知らなかったのである。

なので、殆どの従業員は、ただ単に 客(カモ) のひとりに逃げられて商会主が不機嫌になっている、という程度にしか認識していなかった。

「ええい、あの小娘共に見張りを張り付けろ! 一日中、ずっとだ!!」

見張り程度であれば、あまりこの店の裏のことを知らない者も使える。別に犯罪行為というわけではないのだから……。

* *

「じゃあ、とりあえず裏の組織からね」

「はい。 本命(おいしいモノ) は、最後まで残しておくのが 通(つう) というものですからね」

「……お、おう……」

本当に、フランセットに似ているよなぁ、こういうトコ……。

まぁ、直系の子孫だし、本人から直接教えを受けているのだから、それも当たり前か……。

とにかく、先に実行部隊を潰して連中の手足を 捥(も) いで、じっくりと恐怖と後悔に震えさせてあげよう。

* *

どごん!

「うわあっ! なっ、何だ!!」

どがん! どこん!

「な、何が……」

「「 こんばんわ(グッド・イブニング) ~!」」

「「「「「「ぎゃあああああああ〜〜!!」」」」」」

* *

「……何? 裏の組織が壊滅しただと?

そんな馬鹿なことがあるか!

あそこは、上級貴族がバックに付いていて、官憲の上層部もカネと女でズブズブなんだぞ。手入れなんか入るわけがないだろうが!!

……え? 物理的に潰れた? 建物も構成員も、何もかも、全て?

何だ、それは……」

腹心の部下である番頭のひとりからの報告に、愕然とする商会主。

「はぁ、それが……。何でも、大きな音が連続して、その後、叫び声や悲鳴が続いて、…… 瓦礫(がれき) の山と手足が折れた男達が転がっていた、としか……」

「ワケが分からんわっ!」

「それと、その場に貼り紙が1枚あったそうで……。文面は、『次はお前だ』と……」

「……ひ……」

「ひ?」

「ひいいいいいぃ〜〜!!」

* *

「ビビってるかな?」

「……そりゃ、ビビっているでしょうね」

「反省してるかな?」

「反省はしていないでしょうね。

今頃は、大慌てで戦力を掻き集めている頃だと思いますよ。

……尤も、集まるかどうかは分かりませんが……」

* *

「……なぜだ! なぜ手勢が集まらんのだ!!

報酬は相場以上に 弾(はず) んでいるし、ハンターギルド、傭兵ギルド、裏稼業の奴らから捨て駒用のゴロツキやチンピラ共まで、広く声を掛けたのだろう! なのに、なぜたったこれだけしか集まらぬのだ!!」

「……情報が流れているせいかと……。

大手の裏組織がひとつ、決して手出ししてはならないモノに関わって壊滅した、と……。

そして、商家がひとつ、それに続くらしい、との噂が……」

「なっ……」

淡々とした番頭の説明に、驚きの声を上げる商会主。

「ど、どうしてそんな情報が流れているのだ! そんな話、我々しか知らないはず……」

「それと、相手側、ですね。知っているのは……。

つまり、自分達や、自分達に関わった者に手出しするとこうなるぞ、という見せしめのために選ばれ、そしてそのことを告知したわけでしょう、あちこちに噂を流すことによって……。

なので、この店に対する攻撃はもはや止められず、そしてそれに巻き込まれたいと考える者は、ハンターや傭兵どころか、ゴロツキやチンピラ達の中にも殆どいない、ということでしょうね」

「…………」

やけに冷静な番頭の説明に、絶句する商会主。

「……とにかく、集めることのできたゴロツキとチンピラ、そして当店の者達で防衛態勢を固めましょう。

何、敵は大した人数ではないはずです。しばらく持ち 堪(こた) えることができれば、王都警備隊が駆け付けてくれます!」

「う、うむ……。うむ、そうだ、その通りだな!

よし、防衛計画はお前に任せる!」

「はっ!」

商会主に忠誠を誓い、裏切る気など皆無の番頭の提言に、気を取り直した様子の商会主。

「裏組織の奴らは、奇襲を受けた上に、さすがに警備隊に助けを求めるわけにも行かず、混乱に乗じた敵にやられたのだろう。それも、まともに戦ったのではなく、いきなり建物の柱を破壊されて建物を崩されるという邪道な方法で……。

奇襲さえ防げれば、建物に籠もって防衛する側が、攻める側より圧倒的に有利! 警備隊が駆け付けるまでの僅かな時間を稼ぐことができれば、問題ないということか……。

裏組織の連中とは違い、うちは正規の商店だ。襲ってくる方が盗賊であり、正義は我にある!

よし、何の問題もない!!」

* *

「 草木も眠る丑三つ時(午前2時~2時半頃) か……。

じゃあ、そろそろ行こうか!」

「はい!」

『わん!』

『にゃあ!』

『カァ!』

……うん、鳥は 鳥目(夜盲症) 、っていうの、アレは都市伝説らしいよ。

アレは、身近で観察することができる鳥類である鶏が、元々視力が弱い上、夜には更に極端に視力が低下することからそう言われるようになっただけらしい。

それと、鳥類の大半は昼行性で、夜間はあまり飛ばないから。

そんなの、人間だって照明なしだと夜は視力が低下するし、灯りなしで夜の森で活動したりはしないよね。

つまり、そういうわけで、鳥さん達も普通に夜間作戦に参加できるというわけだ。

……せっかく 隣国(遠いところ) までついてきたのに、出番がないのは嫌だ、ってゴネられたんだよ……。

まぁ、動物さんチームがいてくれた方が、神秘性が増すから、いいか。

「よし、出撃!!」