軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

402 無 謀 5

「来ません……」

「うん、来ないねぇ……」

あれから、第3次攻撃隊が来ない。

正攻法は 諦(あきら) めたのかな?

いや、そうなれば次の段階に進むから、私は別にいいんだけど……。

ただ、ファルセットの機嫌がよろしくない。……出番がないから。

今まで、全ての戦闘を独占していたくせに……。

いや、動物さんチームにも、少しは仕事を回してあげなよ。

近接戦は全部ファルセットが片付けるものだから、動物さんチームの出番がないじゃん。

せっかく、頑張って遠くまで付いてきてくれたのに……。

私が宿にいる時には、宿屋の周りに。

そして出掛ける時には、周囲の者達に不審に思われないよう、バラけて距離を開けてついてきてくれているのだけど……。

ファルセットが毎回獲物を独占するものだから、みんな、ショボ~ン、って様子なんだよねぇ。

動物さんチームは、敵を尾行してねぐらを確認するのが得意なのに、今回は始めから相手が分かっているから、出番がない。人間の言葉が分からないから、諜報活動もできないし……。

だから、こちらから総力で襲い掛かる時以外には、私の護衛くらいしか役目がないというのに……。

そのあたりの配慮がないんだよねぇ、ファルセット……。

動物さんチームも私を護衛する仲間として認め、手柄を譲り合おうよ……。

連れてくる者の人選を誤ったか?

ファルセットは恭ちゃんの護衛に残して、レイコとふたりで来るべきだったか?

何か、その方が良かったような気がする、今日この頃……。

……レイコとファルセットを残して、恭ちゃんを連れてくる?

あは。

あはははは……。

私、そこまで無慈悲じゃないよ……。

とにかく、向こうに動きがなくなったので、今度は私のターン!

「……で、何か情報は?」

「はい、エディス様襲撃の依頼を受けた裏組織の拠点、幹部クラスの自宅や家族構成、その他諸々は確認済みです」

うん、勿論、組織の名前は片足島の連中から聞いている。

拠点の場所も聞いているけど、知らない町の特定の場所を口頭で説明されても、よく分かんなかったんだ。それを、きちんと調べて確認した、と……。

更に幹部連中の自宅を掴めたのなら、脅しに使えそうだな。

ああいう連中は、自分達はいつも他人を脅すくせに、自分が脅される側になると焦るんだよね。

獲物(被害者) がいくら懇願しても笑いながら無視するくせに、自分はすぐに命乞いをするし。

「 恐喝行為(カツアゲ) をしてもいいのは、される覚悟がある者だけだ!」

「何ですか、突然……。

そして、覚悟があろうがなかろうが、 恐喝行為(カツアゲ) は、やっちゃ駄目ですよ……」

「確かに……」

ちなみに、日本じゃ恐喝罪の刑罰は10年以下の懲役で、罰金刑はないらしい。

無罪になることはないだろうから、懲役刑か禁固刑、確実か。

ここだと、数年か十数年の有期犯罪奴隷くらいかな。

悪質で暴力的な犯罪だから、鉱山行きか、下手をすれば戦場行きかな。うむうむ。

とにかく、『女神の眼』の若手連中にも、何か出番を与えてあげなきゃならないから、ま、色々と調べてもらっているわけだ。戦闘以外の方面で。

ファルセット程じゃないけれど、この連中も活躍したくてうずうずしているだろうからなぁ……。

* *

「くそっ、裏組織の奴ら、依頼をキャンセルしてきやがった!

小娘ふたりを相手に、どういうことだ!!」

「被害甚大とのことでしたから、やむを得ない選択なのでは……。

旦那様が意図的に対象に関する情報を隠していたという疑いが保留になりましたのは、 重畳(ちょうじょう) でございましたね」

大番頭の言葉に、顔を顰める商店主。

「保留だぞ、保留! まだ完全に疑いが晴れたわけではない!

全くの冤罪だというのに……」

「しかし、背信行為があったと判断されていたら、間違いなく始末されておりましたよ。

ここは、喜ぶべきでは……」

「喜べるかっ! まだ、いつ有罪だと決めつけられるか分かったものではないし、小娘の件は全く進展しておらんのだぞ!

全て、あの小娘のせいだ!!」

雇用主をあまり激昂させてはならない。

そう考えた大番頭は、商店主を 宥(なだ) める話題を振った。

「そう言えば、隣国の商人に差し向けました者達が、そろそろ戻ってくる頃です。

あれも裏組織が受けた案件ですから、うちの店が良き依頼主であることを思い出してくれることでしょう」

「う……、うむ。確かにな……」

大番頭の言葉に、ほんの少しではあるが、商店主の表情が緩んだ。

組織の心証うんぬんは別にしても、今、隣国の上層部で話題になっている特別な商品が、荷馬車4台分、丸々手に入るのである。

上級貴族でさえ必死に入手したがっているという商品が……。

しかし実は、今回ダルセンの商隊が運んでいた荷は、この商店主が思っているような超高額で取引されるクリスタルガラス製品や陶磁器等ではなく、人気は出るであろうがひとつひとつにはそこまでの価値はない、酒類や珍しい食材とかである。

それでも荷馬車4台分となれば、かなりの金額ではあるが……。

まあそれも、実際には届くことのない荷なので、関係のない話である。

「しかし、困ったな……。裏組織が使えないとなると、あの小娘をどうするか……。

そのあたりのゴロツキ共を使えば、後で恐喝のネタにされて骨までしゃぶられかねんからな。

犯罪者に弱味を握られるなど、自殺行為だ。

その点では、同じ犯罪者とはいえ、信用第一で配下の者をしっかりと掌握している裏組織は安心して使えて重宝しているが、この件に関してだけは一切依頼を受けないと念押しされたからな。

……仕方ない、店の者を使うか……」

商会主の個人的な悪事はともかく、店としての違法行為のことを知っているのは大番頭と番頭、そして一部の手代達だけであり、手代の大半と丁稚達は、この商会がかなりあくどいやり方をしていることは知っていても、裏組織に商隊の襲撃や少女の誘拐をさせるというような凶悪な犯罪に手を染めていることは知らない。

なので、使うとすれば、番頭のひとりに指揮を 執(と) らせて、この店の裏の顔を知っている手代のうちから何人かを選ぶしかない。

もしその者達が全滅すれば、たとえ全員が殺されて身元がバレなかったとしても、中堅層の中の、店の本当の顔を知っている主力達がごっそりと抜けて、店が大打撃を受けることになる。

「まあ、裏組織の奴らと同じことをするような間抜けではないからな……」

そう言って、にやりと笑う、商店主であった……。