軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

336 鳥と犬 2

「あなた、マリアルの、……いや、マリアルの部下からの使いなの?」

『ツレテクル? ツレテイク?』

「う〜ん、それ程頭が良くないのかなぁ。それとも、マリアルから直接指示を受けてから日数が経っていて、伝言内容がうろ覚えなのか……。

とにかく、相手に会わざるを得ないか……」

「カオル、大丈夫なの?」

『香ちゃん……』

レイコと恭ちゃんが心配そうな顔でそう聞いてきたけど……。

「大丈夫、心配ないよ。ほら、前に話したでしょ、『馬の恩返し』。あの時の貴族のお嬢様だよ。

まず、絶対に裏切られることはない……と思う。

……でも、今、何歳だよ……。

あの時に15歳の成人寸前で、私のアイテムボックスの73年と、それから1年くらい経ってるから、88~89歳くらいかな? この世界じゃ、超高齢者か。

爵位も陞爵したみたいだし、マリアルの奴、人生、頑張ってるなあ……」

それじゃあ、今日はもう遅いから、とりあえず……。

「明日、人目を避けて、どこかで会う。伝えて」

『ワカッタ。アス、ヒトメヲサケテ、アウ。ツタエル』

「あれ、思ったより記憶力がいいなぁ……、って、老体のマリアルが来ているとは思えないから、鳥語での伝言じゃ伝わらないじゃん! ちょっと待ってて、紙に書くから、それを持って帰ってね」

『ワカッタ、マツ……』

そして、紙片を足に 括(くく) り付けたのだけど……。

「どうして帰らないのかな?」

『メガミサマ、サワッテ……』

「はいはい」

頭と首の辺りをコリコリと掻いてやると、眼を 瞑(つむ) って気持ちよさそうな顔をしている。

そして、充分 堪能(たんのう) した後、小鳥……と言うには少し大きい、その鳥は帰っていった。

「 女神の守護騎士(エインヘリヤル) に続く、第2勢力ね。この宿じゃ目立つから、会うのはどこか別の場所がいいわね。

念の為、相手の本拠地というのは避けた方がいいでしょ。

……私とファルセットも一緒に行くわよ」

「うん」

レイコの提案に、素直に頷いた。

……まぁ、ついてくるよねぇ……。

私はああ言ったけれど、あれから74年だ。それだけの年月があれば、どんな人間でも変わるだろう。

今のマリアルは、この世界の人間としては、いつ死んでもおかしくないというか、まだ生きているのが不思議なくらいの年寄りだ。

……そしてここに、この大陸中で超有名人である『絶対英雄、鬼神フラン』、あの、勇者フランセットを生き返らせたり若返らせたりした女神様がいる。

そりゃ、魔が差しても仕方ないだろう。

それに、マリアルはそんなことを考えていなくても、部下が己の欲望で、もしくはマリアルのためを思って暴走するという可能性も、ゼロじゃない。

用心を重ねるに越したことはない、ってことだ。

『私も……』

「きょ……」

「恭子は来なくていいわよ!」

私が言おうとした言葉を、レイコに先に言われた……。

* *

「来たか……」

昨日、あれから小鳥……にしてはちょっと大きいやつ……が再度来訪して、時間と場所が書かれた紙片を渡された。

でも、それには明朝迎えを寄越すことと、話をする場所が連中の拠点だと書いてあったため、こちらから『場所は中央広場の女神像前。迎えは不要、現地集合』と書いた紙を持たせて帰した。

うん、この大陸じゃあ、ほぼ全ての国において、王都にはセレス像がある大きな公園があるんだよね、中心部というか、王城と神殿に隣接したあたりに……。

ま、何かあった時の王都民の集合場所とか、色々な目的に使われるのだろう。イベントとか、広域災害時の避難場所とか……。

王城と神殿の前で、不埒な真似をする者がいるとは思えないからね。

王城の門番とは別に、警備兵の詰所もあるし。

人通りもそこそこあり、……ま、若い女性を襲ったり連れ去ったりするには、この王都内では一番不適な場所、ってわけだ。

それに、女神か御使い様である私が待ち合わせ場所にセレス像の前を指定するのは、全然おかしくないしね。

……そしてまた、了解した旨の返事が……。

うん、向こうのホームへのこのこと出掛ける程の馬鹿じゃない。

伏兵、飲食物に眠り薬、その他諸々、何が仕掛けられているか、分かったもんじゃないからねぇ。

……勿論、薬の 類(たぐ) いは事前に解毒ポーションを飲んでいれば問題ないけれど、私達には薬物は効かない、という情報をわざわざ相手に教えてあげる必要はない。

知っていれば、対応策を講じたり、他の方法を考えたりするだろうからね。

余計な情報は、極力与えないに越したことはない。

それと同じ理由で、落ち合う場所に飲食店を指定したりもしない。

前日から場所が分かっていれば、無関係の客の振りをして仲間を大勢配置しておくとか、お店に手を回して提供する飲食物に薬品を、とか、何でもできるからねぇ。

もし話が長引きそうなら、会ってから適当な店に移動すればいいだけの話だ。こっちが指定する店に。

……そして結局、鳥さんに3往復もさせてしまった。

最初に、こちらから場所を指定しておけば良かった。それなら、2往復で済んだのに……。

ま、鳥さんは、その都度頭と嘴のちょい上と首回りを掻いてやると眼を瞑って幸せそうな顔をしていたから、問題ないか。

実家では、桜文鳥のピピと白文鳥のジャジャ子の世話をしていたから、鳥の扱いには慣れている。

そして、犬と猫の世話も慣れていて、私は割とモテるのだ。

……動物には。

なのに、なぜ人間の男性や幼女には……。

ドちくせうがッッ!!

……はぁはぁはぁ……。

いや、まあ、とにかく、そういうわけで、女神像の前に立っている私に向かって、6人の男性が真っ直ぐに近付いてきたわけだ。

今の私は、エディス・モード。

連中は『自由巫女、エディス』に会いに来たのだから、当然だ。

そしてキャン・モードのレイコとファルセットは、近くで無関係の他人の振りをしている。

王都中央広場の女神像前、なんて、お 上(のぼ) りさん達の待ち合わせ場所の定番だから、似たような待ち合わせの連中は多く、そう目立ってはいないはず……なのだけど、迷う素振りもなく、一直線にこちらへ向かってくるなぁ……。

やはり、私の今の外見は調査済みか。

あの、遣り手のマリアルが仕込んだ連中なんだ、それくらいは当たり前か……。

互いに『女神カオル真教』の仲間だし、そしてこのタイミングなのだから、おそらくファルセットのことも把握しているだろう。

一応変装させているけど、気付くかどうか……。

でも、さすがにレイコ……Cランクハンター、キャンのことは知るまい。

エミールと会った時に一緒だったけれど、まさか私の同類だとは思わなかっただろうから、一時的な連れか案内役だとでも思った程度だろう。 なので、『女神カオル真教』の仲間達に流されたであろう情報にはレイコのことは『連れの女性がいた』くらいにしか書かれていないだろうし、遥か遠くのこの国での『新人ハンター、キャン』のことなど、知る 由(よし) もないだろう。

……そして当然、私との関係とかも……。

私が雇った護衛の存在くらいは掴んでいるかもしれないけれど。

変装してるしね。

いくら優れた諜報組織であっても、情報の 欠片(カケラ) もなく、その存在すら知らないことに関しては、調査のしようもないだろうからねぇ……。

なので、相手の不意打ちに備えて反射神経……緊急対処能力……に秀でた変装ファルセットをやや近くに配置し、レイコは少し離して、全体が見渡せて状況が把握でき、自分の身を護ることは気にせずに私とファルセットを護るために魔法を使えるところに配置した。

いや、あの鳥さんの存在から、この連中がマリアルの配下だということはほぼ間違いないだろうし、マリアルが私への使者におかしなヤツを選ぶとは思っていないよ。

……でも、物事は、常に最悪の事態を想定して考え、対処すべきだ。

それが、長瀬一族の、そして我ら『KKR』のやり方だ!!