軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

皇王亡命編4

結局、その夜のうちに、天幕から出立した俺は、近衛と共に未明には帝都へと帰還した。

ちなみに、隔離していた伝令や医官はもうしばらく隔離する。一方で、俺は病が治ったので客人をこれ以上待たせられないと、急いで帝都へ戻ってきた……という設定だ。

「お待ちしておりましたわ、陛下」

宮廷に戻ると、真っ先にロザリアとナディーヌが出迎えてくれた……別にそんなことしなくて良かったのに。一方でナディーヌはかなり眠そうにしている。

これはたぶん、叩き起こされたのだろう。

「出迎えご苦労。心配かけてすまなかった」

俺はそう言って二人の頭を撫でる。まぁ、二人にも仮病とは伝えてなかったから心配はかけただろう。

そう思っての言葉だったのだが、眠そうに眼をこすっていたナディーヌはこう言った。

「やっぱり、仮病だったの」

あれ、もしかして気が付いていたのか。まぁ、勘づかれてもおかしくはないが……。

「どうしてそう思う」

「清潔だから。重病なら入浴なんてできないでしょ」

天幕暮らしだったこの二週間、俺は確かに何度も湯に浸かっていたし、なんなら今日も入った。

野営なのにどうやってって? それはもちろん魔法で、だ。近衛の中には魔法が使える人間もおり、彼らに頼んで簡易的な風呂を作ってもらった。地面を掘り、岩で固め、水を張って温める。全部魔法でできるから便利だよな、この世界。

とはいえ、普段の行軍中だったらこんなことは絶対にしない。

いつ戦闘になるか分からないときに、魔力の無駄遣いは普通しない。それにそもそも、即席で作った小さな風呂では、兵士全員には回らない。一部の人間だけ良い思いをすれば、他の人間が不満を抱く。

まぁ、貴族の中には平気で自分のためだけに作らせる奴もいるらしいけど。兵士の人気も欲しい俺はそんなことはしない。

しかし、今回は帝都も近くかなり安全な場所で、ほとんど近衛しか残さなかったので兵士の人数も少なかった。

何より、天幕の人間には隔離生活をさせていたからな。少しでもストレスを和らげるためにと、今回は作らせたのだった。

もちろん、近衛とは接触しないように細心の注意は払わせた。

「濡らした布で体を拭いてもらっていただけかもしれないぞ。思い込みは……」

「あと、そもそも病み上がりだったら、こんな風に私たちの頭を撫でないでしょ」

……あ、確かにそうかも。熱が下がっても菌持ってたりするからなぁ。本当に病み上がりだったら、移さないように接触は控えるだろうな。

これは一本取られました。

「意外に目敏といよね、ナディーヌって」

「……どういう意味よ」

一段声が低くなったナディーヌに、ロザリアが朗らかに笑いかける。

「 揶揄(からか) っているのですわ、ムキになってはダメよ」

そうやって話していると、今度はこちらも飛び起きてきたのか、ニュンバル侯がやってきた。

「陛下」

ニュンバル侯は、また一段と濃い隈を目の下に作っていた。まぁ、普段の仕事に加えて、亡命してきた皇王らの対応もやってもらっていたからな。

「迷惑かけたな、助かった」

「陛下の御考えなど、この老いぼれめにはどの道、理解できませんので」

うわぁ、すっげぇ棘ある言い方! ついでに目が恨めしそうだ。これは内心、かなり怒っているだろう。

まぁ、この期間のしわ寄せは彼に行ってただろうから、この反応も至極当然だな。

「ただ、陛下の仕事が溜まっております。言いたいことはそれだけです」

うーむ、やっぱりかぁ。この二週間、俺は病の身ってことになってたから、書類の決裁なんかは全部やってなかった。

仮病も演技だ、やるからには徹底的にしなければ意味がない。仕事ができないくらいの重病なフリをしていたのだ。

まぁ、本当に緊急を要するものは送ってもらって処理してたけどね。

「了解した」

この感じだと、しばらく帝都からは動けなさそうだな。

「陛下、この後は 如何(いかが) いたしますか」

そう聞いてきた側仕人に、俺は肩を竦める。

「湯を張ってくれ、ティモナ。皇王に会うのだから身を清めなければ」

本当は、向こうで入ってきたからいらないんだけど。でもナディーヌみたいに怪しむ人間がいるとマズい。

「それとニュンバル侯、皇王は正装と『急ぎで用意できた中で最上の衣装』のどちらを好まれるだろうか」

俺は今、病が治ってから急いで帝都に戻ってきたという体裁を取っている。だから正装をきっちり着るか、または「正装を着る時間すら惜しみました」という 演技(スタンス) でランクの落ちる衣装を着るか、皇王に有効なのはどっちかと訊ねたのだ。

人によってはこういうとき、正装じゃない方が感激したりするだろう。

するとストレートというか、全く飾らない人物評が侯から返ってきた。

「……どうでしょう、どちらも問題ないかと……いえ、皇太子の方が浅慮で権威や伝統に執着がございます。そのようなアピールは効かないかもしれません」

あぁ、話で聞く感じ、確かにそういう人っぽいよね。

「では正装の用意を。それと、色々と聞いておきたいことがある」

***

皇王が帝都に来てからの二週間、俺がいない宮廷では色々と変化が生まれていた。

中でも、皇王に対するスタンスというか態度については、宮廷は真っ二つに割れているようだ。

真っ先に食いついたのは相変わらず楽をして美味しい思いできる「何か」を探す中小貴族連中。皇帝への忠誠心もなく、戦場に出る気もなく、ただ爵位を持っているだけの寄生虫みたいな連中だ。

そんな中で現れた扱い易そうな軽い神輿……それが皇王だ。奴らが飛びつかないはずがない。彼らは出世のために皇王一行に媚びて持ち上げている。んで、皇王はそれに気を良くして平気で受け入れるらしい。

一方で、皇王一行を歓迎しない勢力もいる。それは主に官僚……宮中で働いている貴族たちだ。

まぁ、私欲を優先するような貴族は即位式以後、少しずつ時間をかけて放逐していったからな。今残ってるのは比較的まともな人間だ。……ちなみにさっき言った中小貴族の中にはこの放逐された連中も交じっているし、何なら多かったりする。

真っ当な宮中貴族にとって、皇王なんて来たところで、問題ばかり増えて余計な仕事が追加されるって感じるのだろうな。

いや、皇王一行がもう少しまともだったらこんな過剰反応しなかったんだろうけどさ。

閑話休題、俺はいよいよ問題の皇王と対面する。

場所は謁見の間ではなく、会談室だ。これは皇王が謁見という形を嫌がったからだな。まぁ、言いたいことは分かる。腐っても皇王、皇帝とは対等とされる存在だからな。

そんで、ここからは面倒なパワーバランスの調整だ。

まず、貴族相手なら皇帝は相手を待たせる。遅れてやってきて玉座に座って「よきにはからえ」が普通の対応である。

ただ今回は相手が皇王だからな……しかも二回りくらい向こうの方が年上だ。だからこっちが多少は遠慮しないといけないだろう。

玉座どころか上座にも座らず空けておくし、俺は皇王より先に座って待つ。ただし、態度だけはあまり下手に出ないで行こうと思う。

そうして遅れてやってきた皇王一行だが、皇王の第一印象は「丸い」だった。脂ぎった肌に、弛んだ贅肉が目に余る。

日常生活に支障をきたすレベルで太ってるのはどうなんだ? 別に一般人が太っていようが何とも思わないけど、同じ君主がコレなのは正直イラっとする。

ニュンバル侯の誘導で椅子に座るが、この椅子は皇王専用の特別仕様だ。どうも特注で作らせたらしい。

普通の椅子だと窮屈なんだと……それにしても趣味悪いな。

流石に玉座ではないから宝石とかは使ってないけど、金ぴかで品のない椅子だ。間違いなく、この椅子を卸したのは俺が普段使っている商人ではないな。

その金? 帝国が払わされたよ。まぁ、いつか皇国に請求してやる。

それに続くのは二人。一人は恐らく皇太子……いや、失脚したから元皇太子か。こちらは痩せているが、目つきがなぁ。ドズラン侯みたいな野心を隠せていない目だ。でもあの男ほどのオーラはない。

皇太子だったはずなのに、どうして小者臭がするんだろうか。

もちろん、見た目で判断するのは良くないが、事前情報だけでもちょっと関わりたくないタイプだ。関わらざるを得ないんだけど。

そしてもう一人は恐らく、この亡命組についてきた……というか、巻き込まれたらしい男。ダロリオ侯アロイジウス・フォン・ユルゲンス……いや、こちらも元侯爵か。

元外務大臣で、真面目に仕事していた結果、気がつけば政争に巻き込まれ、皇太子と一緒に失脚させられたという、なかなかに可哀そうな男だ。欠点は運の無さと、宮廷での立ち回りの下手さである。

三人が着席すると、ニュンバル侯がそれぞれを紹介する。やはり、元皇太子ニコライ・エアハルトとダロリオ侯で合っているようだ。

「お初にお目にかかる。余がブングダルト帝国八代皇帝カーマインである」

さて、突如の対面となった訳だが……三人の反応はびっくりするほど分かりやすいな。

ダロリオ侯は俺の行動力に驚いている。ニコライ・エアハルトは俺の若さを見て舐めている。そしてヘルムート二世は……たぶんまるで何もわかってないんだろうな。

「ウム、朕がヘルムート二世である。随分と待たされたぞ」

その声は腑抜けた、覇気のない声だった。あと結構高めだった。そして何より、全く危機感と言うか、切羽詰まっている感じがない。まるで、自分の立場というか現状が、どれほど危険な状態なのか分かっていないようだ。

これは俺以上に演技の上手い大物なのか、とんでもない馬鹿なのか二択って感じだ。まぁ、事前に集めた情報では馬鹿だとされているが、それは傀儡時代の俺も同じだっただろう。油断をするつもりは無い。

「はっはっは。流行り病に罹ってしまいましてな……まさか陛下にうつしてしまう訳にもいきますまい」

俺の言葉に対する反応は三人とも特に変わらない。これを見るに、俺が仮病だったってことには気付いて無さそうだ。

ちなみに、この場にはティモナではなくヴォデッド宮中伯を連れてきている。だから、こいつらがどれだけ俺に対して失礼なことを言ったり、舐めた態度を取ったりしたところで、後ろから殺気を感じたりはしない。

「して、用件は」

俺が訊ねると、すぐに皇王から答える。

「ウム、朕を国へ戻す協力を頼みたいのじゃ」

……それだと今すぐお前を簀巻きにして突っ返してやってもいいんだけどな?

あと、愚帝の演技するときの俺そっくりの口調だなぁ、コイツ。

なぜだろう……俺の愚帝の演技が特徴をとらえた上手い演技だったって証明されているようなものなのに、なぜか不快な気持ちになる。

「亡命を! まずは亡命を希望いたします」

慌てて横から口を挟むダロリオ侯に、元皇太子が口を挟む。

「これダロリオ侯、そのように声を上げて見っともない。いやはや、我らの臣が申し訳ない」

なんか、自分はちゃんと振舞ってるって言いた気な態度である。お前も貴人同士の会話に割り込んでるんだけどね。

話によると、この男は皇太子の地位は剥奪されてるのに、未だに皇太子気分が抜けていないらしい。

「はっはっは。謁見の場ではいざ知らず、今は会談の場。余はそのようなことで一々文句など付けぬ」

意訳すると「謁見の場ならアウト」と「文句は言わないけど忘れないからな」って意味なんだけど、元皇太子の方には全く伝わっていない。

むしろアロイジウス・フォン・ユルゲンスの方が恐々としている。可哀そうに。その立場はさぞつらかろう。

「して、亡命と皇国への帰還か……余としても、斯くして頼られたのであれば応えたいのだが、余の一存では決められぬ。近く評定を開くのでそこで決めさせていただきたい」

まぁ嘘だけどね。実際は、その気になればたぶん俺の一存で決められる。けど実際に会議は開くつもりだし、諸侯の意見もちゃんと聞きたいから今は返事を保留にする。

「しかし、何故正当な君主がこのように追い出されることになったのか。余は不思議でならない。いったいなぜこのようなことに?」

知ってるけどね、大体の事情は。事の顛末を報告で聞いたが、その感想としてはまぁ、当然の結果だろうなとしか思わない。

「おぉ、ぜひ非道なる奸臣共の悪事をお聞きください」

するとニコライ・エアハルトが、自分たちのここまでの経緯を語りだした。もちろん、自分たちに都合の悪い情報は伏せ、虚飾まみれになった話だ。これでは語るというより騙ると言った方が正しいかもな。

***

それから皇王一行の主張を聞いた俺は、即座に宮中の諸侯を集めた。

皇王一行の悲痛な訴えを聞き、皇国貴族の蛮行に怒りを覚え、すぐさま皇王を救わんと招集した……ってことにした。

「そういうことになっているから、ちゃんと口裏合わせるように」

あからさまな嘘とか混ざってて、表情に出さないようにするのが大変だったよ。

俺が招集したのは、この時帝都にいた貴族の中でも信用できるメンバーだ。まずはニュンバル侯とヴォデッド宮中伯。このふたりはまぁ、言わずもがなだろう。

そしてエタエク伯の代役としてトリスタン・ル・フールドラン子爵。別にエタエク伯も帝都にいるんだけど、彼女は嘘とか下手そうだから代役を立てさせた。ちなみにエタエク伯は敬礼して即答して了承した。

そして次は、俺が病に罹ったと聞き本気で心配した組。

まずはラミテッド侯、ファビオだ。彼は前線のワルン公の名代も兼ねて、皇帝の容態を見るために帝都に来ていたらしい。たぶん仮病だって気付いているけど何も言われなかった。まぁ、呆れた表情はしてたけど。

ちなみに、普段ワルン公の名代として活動しているエルヴェ・ド・セドラン子爵は敵に包囲された要塞で籠城中とのこと。大丈夫なのかと聞いたら問題ないと返ってきたから俺はその言葉を信じることにする。

仮に苦戦してたら、誤魔化そうとせずにちゃんと伝えてくれる人のはずだから。

つづいて、同じく俺の容態を知るために派遣されたヌンメヒト女伯の名代、レイジー・クローム。

こっちは俺が仮病だったことに感づいてキレてました。そんなに俺のことを心配したのかと聞いたら、ヌンメヒト女伯に本気で心配させたことにキレてるらしい。まぁ、いつも通りだな。

しかしこうしてみると、本当に増えたよなぁ。昔はティモナと宮中伯しかいなかったのに。

そして最後に、この場にはもう一人いる。

「 某(それがし) はここにいてよろしいのでしょうか」

男の名前はシャルル・ド・アキカール。式部卿の三男にして、俺と唯一敵対しなかったアキカール家の人間だ。

今まではその血筋のこともあり、微妙な立場だったが……俺は今回、覚悟を決めて信用することにした。

「余は卿を信任すると決めた。それだけだ」

まぁ、ダニエル・ド・ピエルスからも推挙されたしね。あの老エルフ曰く、対抗馬として利用されるくらいなら手元に置いておくべき、とのことだった。これは俺もその通りだと思う。

シャルル・ド・アキカールは俺の親戚の中で、もっとも近い血縁にある敵対していない男性だ。俺に子供が生まれない限り、次期皇帝はこの男になる。

つまり、皇王たちが帝国で発言力を得ようとする、もしくは俺以上に言うことを聞く人間が欲しいと思った時、必然的に俺の対抗馬として立てやすい……と、諸侯は考えてしまうかもしれない。

実際にそうなるのか、そうなった際に本当にシャルル・ド・アキカールが俺と対立するかはまた別問題だ。

重要なのは、そうなり得ると諸侯が感じてしまえること。そうすると「そうなる前に災いの芽は摘んでおこう」となってもおかしくない。

つまりまぁ、放っておくと誰かがシャルル・ド・アキカールを殺そうとするかもしれないし、そうなったら追い込まれたシャルル・ド・アキカールが「殺られる前に殺らなければ」と強迫観念に駆られ、反旗を翻すかもしれない。

それを阻止するために、シャルル・ド・アキカールが取るべき立ち回りは一つしかない。

「卿は反皇王派として、皇王の受け入れに反対の立場をとるしかない。なら、色々と打ち合わせは必要だろう?」

俺は皇王たちを利用したいが、利用されるつもりは無い。だが、皇王一行は当然のごとく俺たちを利用しようとするだろう。

それに対し、こちらが一致団結して距離をおけば……今度はこちらが制御できない人間を引っ張ってくるかもしれない……ドズラン侯とかな。

あるいは最悪の場合、帝国から出ていかれてしまうかもしれない。

そうならないよう、食いつきやすいエサは必要だ。

「既に余がいない間に主張は固まっているようだし、ニュンバル侯とシャルル・ド・アキカールは反皇王の立場で頼む。ラミテッド侯は皇王擁護の立場で。ヌンメヒト女伯とエタエク伯については……どうしようか」

俺の言葉に、すかさずニュンバル侯が反応する。

「それはつまり、皇王陛下の前では意見を対立させ、裏では陛下の指示通りに動けばよい……ということですね?」

ニュンバル侯の確認に、俺は大きく頷く。

「ヘルムート二世は、その場の感情で行動し幽閉に追い込まれた。ニコライ・エアハルトは自身の権力のみを追求し失脚した。どうせこの二人は、亡命先でも変わらない。そんな連中に振り回されるのは卿らも御免のはずだ」

俺たちは利用される側ではなく利用する側にいなくちゃいけない。そのためならマッチポンプ上等だ。これ以上、帝国の人手不足を悪化させてなるものか。

それに今まで散々、皇国は帝国にちょっかいかけてくれたんだ。亡命してきた連中には、帝国の国益になるよう、たっぷりと貢献してもらわないとな。

「しかし、なぜ私が皇王擁護派に?」

俺の指示に、ファビオが疑問を抱いているようだ。まぁ、無理はない。ファビオは別に皇王らと縁も 所縁(ゆかり) もないだろうしな。

「宮中伯、例の書類はあるか」

「こちらに」

そして俺は宮中伯に渡された紙をめくる。

「実は密偵からヘルムート二世やニコライ・エアハルトの趣向なども調べてもらっていてな」

なんというか、皇王と元皇太子の趣味趣向はかなり有名で、皇国では普通に市民ですら知ってたりするらしい。お陰で知りたくなかったことまで知ってしまった。

特に皇王はバ……目先の感情で動く。嫌いなタイプの人間に擁護されても反発するかもしれないから、擁護派は皇王が好むであろうタイプに任せたい。

「皇王は男尊女卑の傾向が強く、さらに身分の高い者を好む。逆に貴族だろうが身分の低いものは卑しいと考える。若い貴族には目をかける傾向アリ。だからラミテッド侯は条件に合致しそうと思ってな」

ほんっと、我儘だよねこのオッサン。ちなみに好きな食べ物は甘いもの全般で、特に蜂蜜に目が無いらしい。袁術かな?

「そういう事情だ。ラミテッド侯、頼む」

「そういうことであれば」

「あとはヌンメヒト女伯とエタエク伯だが……中立ということにして、二人はあまり近づかない方が良いかもしれない」

俺がそう言うと、エタエク伯の代理であるフールドラン子爵が当然のごとく理由を訊ねてくる。

「それほどまでに男尊女卑が激しいので?」

……うーん、他人の性癖とか口にしたくないけど、これは注意喚起しておいた方が良いかも。大事な家臣がトラブルに巻き込まれるの嫌だし。

「いや……皇王が連れてきた妾、全員が男装姿で選ばれたらしい」

ただこれ、男装の女性が好きなのか、男が好きなのを誤魔化すための偽装なのか分からないんだよな。妾の中に 男(・) が三人交じってるし。

「もしや、幽閉された一因は……」

「これを見せられると否定はできん」

同性愛は許される文化圏もあるが、皇国の国教である聖皇派的には完全にアウトだ。なのに、妾の中に男がいるのとかも、皇国では公然の秘密らしいし。どうなってんだ、皇国は。

ともかく、念のため男装系の二人は近づけない方が良い。

ちなみに、元皇太子の方は病的なまでの女好きだ。そして権力を掌握しようとしてるときに、一夜を共にした貴族令嬢にうっかり計画を漏らしてしまい、通報されて先手を打たれたらしい。

……正直、思ってた数倍は酷いぞこいつら。