作品タイトル不明
摂食障害〜果梨
私は少し前までグラビアアイドルをしていた。
子供の頃は、ぽっちゃりしてたし、デブとかブスとか言われたこともある。
それでも、笑っていられたのは、ニコと呼んでくれる男の子がいたから。
いつも笑ってて可愛いなって言ってくれてニコニコしてるから、ニコだなって。
10年以上会ってないけど、ニコと言うのは、私の心の支えになっていた。
その男の子に釣り合うように、痩せてキレイになりたい。
そう思ってた頑張ってモデルを目指していたら、なぜかグラビアアイドルになっていた。
胸を見る不躾な視線、触ってもいいんだろう?みたいな勘違いのセクハラ、誰の相手でもするんだろう?みたいな侮辱の数々。
私の精神は、ストレスで疲弊していった。
たぶん、この辺りから壊れていたのだと思う。
食べることがやめられず、食べ続ける。
太ってはいけないと言う強迫観念から、食べたものを吐く。
食べて吐くを繰り返して、肌も内臓もボロボロになって仕事が出来なくなった。
病院で診察してもらったら、摂食障害だと言われた。
治療方法をきいたけれど、出来る気がしなかった。
それが出来るなら、最初から摂食障害になんてならないだろうと思った。
そして、こっそり、ひっそり、誰に知られることもなく、芸能界を引退した。
もう人前にでる仕事はしたくない。
しばらくはのんびりと過ごしたい。
どのくらいひきこもっていたのだろう。
ある日、グラビアアイドル時代にお世話になっていたメイクさんから、オススメの化粧水と保湿クリームの情報が流れてきた。
絶対、かりんちゃん気にいると思うからって。
ブランド名と、ショップの地図が添付してあった。
なぜか行かなくちゃ、と思った。
わからないけど、そう思った。
久しぶりに出た家の外は、眩しくて騒がしかった。
あー世界には私1人じゃなかったんだなって、変な気持ちになった。
【ティルイーリオ】と言うブランドのショップは新宿にあった。
自動ドアを潜って、店内に入った瞬間に幸せな気持ちになった。
なんだろう?
優しい空間にいるとわかる。
胸の中があたたかい。
「大丈夫ですか?」
声をかけられて、ティッシュを渡されて自分がぼろぼろと泣いていることに気がついた。
声をかけてくれた店員さん?が、奥のスペースに案内してくれて、座らせてくれた。
涙が止まらなかった。
肩や背中をさするように撫でてくれて、泣きたいだけ泣いていいからと言われて、更に涙が止まらなくなった。
そっか、私辛かったんだな。
心が悲鳴をあげていたんだなって、やっと気づいた。
どのくらい泣いていたのか、顔が浮腫んで目が腫れてる気がする。
「すみませんでした」
私はずっと寄り添ってくれていた店員さんに謝罪する。
「あら、いいのよ。そこで顔洗ってさっぱりすっきりしちゃいなさいな」
お言葉に甘えさせてもらうことにした。
「これ、うちの化粧水と保湿クリームよ、試しに使ってみて」
そうだった。
ここには、それを買いに来たんだった。
買う前に試させてもらえるのは、ありがたい。
やはり合う合わないはあるもの。
使ってすぐにわかった。
これはすごい!
化粧水はグイグイ肌の中に入っていくし、ふっくらもっちりの肌になった。
一瞬で!
なにこの化粧水!?すごすぎない?
保湿クリームもすごい!
さらにしっとりもっちりな肌になったのよ。
えっ!?
「魔法?」
思わず呟いた私に、
「あらあら、すごい美人さんじゃない」
「えっ?」
店員さんは、私をじーーーっと見て言った。
「あら?あなたどこかで会ったことあるわね?」
たぶん、グラビアアイドル時代の雑誌やCMとかじゃないかな?
なんて答えたらいいのかな?
「あっ、あなた 仁科果梨(にしなかりん) ちゃんでしょ?」
グラビアアイドルの!って続くと思ったら違ったのよ。
「うちの子の 理編(りあむ) と小学校一緒だった、違う?」
「えっ!?理編くん?えっ!?理編くんのお母さん!?」
「まぁまぁまぁ!小さいころも可愛かったけど、すっごくキレイになったのね」
理編くん。
私の心の支えの男の子。
ニコって呼んでくれた男の子。
初恋で今もずっと大切に思っている男の子。
その理編くんのお母さんが目の前にいる。
えっ?なんで?
「このお店は、理編くんのお母さんのお店ですか?」
ビックリしすぎて、変な質問をした気がする。
「私のお店ではないけれど、うちの会社のお店ではあるかな?」
指差されて場所を見て驚いた。
神凪コーポレーションの文字が見えた。
あの探索者の間で有名な?
魔導具で有名な?
あの神凪コーポレーション?
私も失くしても戻ってくるお財布持ってる。
私はおっちょこちょいだから、大変ありがたく使わせてもらってる。
そうなんだ?理編くんのお家の会社だったんだ。
ぽかーんとしてたら、
「今日は、化粧水買いに来たの?」
「はい、知り合いにススメられて、化粧水と保湿クリームは買って帰ります。すごいです!」
「気に入ってもらえてよかったわ」
ニッコリ笑う理編くんのお母さんに、気になっていることを尋ねた。
「あの、さっきからみなさんが並んでる自動販売機?はなんですか?」
「あーあれ?あれはね、ダンジョンで見つかった【ダイエットの実】なの。あの実を食べたその日は、摂取カロリーよりも消費カロリーが必ず上回るんですって」
それって…
「食べたものを吐かなくてもいいってことですか!?」
思わず口から出た言葉に、しまったと思い口を両手で覆う。
すでに遅いことはわかっていた。
「果梨ちゃん?どういうこと?」
「えーっと、いや、あの…」
言葉にならない。
「こんなところで話すのもおかしいわね。これから時間ある?そう、ならうちに行くわよ」
えぇーーーー!?
手を引かれ気づいたら、理編くんのお家にいた。
えっ?なんで?いつ移動したの?
えっ!?えぇーー!?