軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

964 聖騎士たちの行方

フランとイザリオは夜通し移動し、ノクタへと辿り着いていた。まあ、フランは道中で俺の上で寝ていたから、徹夜したのはイザリオだけだが。

最初はウルシが頑張ろうとしたんだが、やはりブルトーリへの移動で無理をし過ぎていたらしく、すぐにへばってしまっていた。そこで、俺が念動エアライドでフランを乗せて、空を飛び続けたというわけだ。

立ったまま寝るフランを支えている内に、妙に慣れてきたよね。今の俺なら、布団を上に敷いた状態すらキープできるかもしれん。これも、成長ってことなんだろう。

それでもイザリオについていくのは大変だったが、なんとか遅れずにノクタへと辿り着くことができていた。

町の外には、凄まじい戦闘の跡が残っている。地面が大きく凹んで窪地のようになっている場所や、大地が広範囲で焼け黒ずんでいる場所。中には、血が沁み込んで赤黒く変色した場所もあった。

城壁の上には多くの冒険者が並び、緊張感を漂わせている。やはり、ここでも巨大抗魔との戦闘があったのだろう。

城門に近づくと、冒険者たちが集められているのが見えた。城壁の点検や、抗魔への警戒を行うために出動しようとしているらしい。

そこで、知り合いの顔を見つける。

「ゼーハルド!」

「お? 嬢ちゃんか!」

「ノクタ、大丈夫だった?」

「おう。ドワーフや魔族のお陰でな。ナディアさんも無事だぜ? 魔力を吸われる現象も、あの辺には届かなかったしな」

ムルサニの護衛冒険者、ゼーハルドからナディアの無事を聞かされ、肩の力を抜くフラン。ナディアのことが気がかりだったのだろう。

消耗しているとはいえ、高位冒険者のナディアだ。魔力枯渇くらいで死ぬことはないと分かっていても、実際に無事を確かめるまでは心配だったらしい。

「イザリオ! フラン! 無事だったのねぇ!」

ゼーハルドと分かれたフランたちは、今度は声をかけられる。自ら陣頭指揮を執っていたギルドマスターのリプレアだ。

「そっちもな。ノクタにもデカブツが出たかい?」

「ええ。幸い、ドワーフや魔族の助けを借りて、倒すことは出来たけれどぉ……。ブルトーリに被害は?」

「町自体はギリ無事。だが、冒険者と住民に死者が出ちまった」

「そう……。こちらも、被害は小さくなかったわぁ……」

ノクタでは魔族の女王ジェインと、ドワーフの女王オーファルヴが先頭に立ち、抗魔を殲滅したらしい。

ドワーフはその鉄壁の布陣で湧き出す抗魔に対抗し、魔族の魔術師が大儀式魔術で巨大抗魔を弱らせた。最後は女王二人が巨大抗魔に攻撃を仕掛け、滅ぼしたという。

ノクタでは、町のすぐ横に巨大抗魔が出現したせいで、地揺れがブルトーリ以上だったらしい。建物などの倒壊も多く、そちらの被害も馬鹿にならないようだった。

「今、各地の損害状況が集まってきているけど、センディアはほとんど被害がなかったらしいわぁ」

「そうなの?」

フランが一番聞きたかった話だ。リプレアの言葉に、食い付く。

「ええ。町の住人達と、シラードの聖騎士たちが協力したと報告が来ているわ。巨大抗魔は、獣王の娘と、神剣騎士アドルが倒したそうよぉ?」

というか、その報告で気が付いた。シラードの奴ら、センディアに向かってやがったのか! 元々、聖女を引き渡すという約束が、医長フィルリアとアドルの間で結ばれていた。

ソフィが神剣使いという話だって町の中では広まっているし、アドルの耳に入っている可能性も高い。だとしたら、どんな手を使ってでもソフィを攫っていくのではなかろうか?

奴らがセンディアにいたおかげで町は守られたようだが……。ソフィたちは無事か? メアだって神剣使いだし、ベルメリアは神竜化したことがある。シラードにバレたら、誘拐の対象になるかもしれない。

「……センディアに行く!」

「おいおい、急にどうした嬢ちゃん? センディアは無事だって話だぜ?」

「神剣騎士のアドルが、ソフィを狙ってる。無理やり連れてかれるかもしれない」

「その話ね」

当然だが、フィルリアの話も冒険者ギルドに伝えてある。ただ、すでに結界屋のセリアドットが捕らえた相手だし、その存在は意識の外だったのだろう。

神剣に関してはぼやかして報告したので、ギルドもまだソフィの重要性を把握しきれてはいないのもマイナスに働いている。

聖国シラードがセンディアに向かったかどうかという話も、あまり気にはしていなかったのだろう。

「ならちょうどいいかもねぇ」

「どういうこと?」

「あなたたちには、センディアに向かってもらうつもりだったのよ」

「そうなの?」

「ええ。この大陸の管理委員会が、全冒険者と国に戦力提供の要請を出すことを決定したわぁ。その戦力をいくつかの部隊に分けて、まだ残っているあの巨大な抗魔――巨人型抗魔の討伐を行う予定よ」

明確な権力は持たないが、この大陸の結界を維持するために、管理委員会には要請を出す権限がある。国もギルドも、従う義務はない。

あくまでも要請だからだ。しかし、断れば各国からバッシングを浴びるし、ゴルディシアの責務不履行と言われるかもしれない。

委員会の要請は、実際には従わざるを得ない力があるのだ。

「当然だけど、冒険者ギルドは全冒険者に緊急依頼を出す。あなたたちも、従ってもらう事になるわぁ」

「ま、そりゃあ仕方ねぇなぁ」

「ん」

冒険者である以上、断れん。緊急事態には当然のことだからな。

「それでぇ、管理委員会としては聖国シラード、ハガネ将国、ドワーフ王国スノラビット、ドゥーム魔族国には確実に参戦してもらいたいと考えているのぉ」

神剣を所持する2国と、7賢者を王に頂く2国だ。当然、この大陸にいる勢力でも最高戦力と言えるだろう。

「女王様方からは、快諾をいただいているわぁ。ハガネ将国には、他の支部が使者を出す。そこで、あなたたちにはシラードへ向かってもらいたいの」

「俺たち2人で行く意味は?」

「正直、あいつら馬鹿じゃない? それに自分たちの事しか考えてないしぃ? 変な理由こねくり回して断られないためにも、強気で交渉しないとねぇ?」

イザリオとフランで威圧して、無理やりにでもシラードの参戦承諾を取り付けろってことなのだろう。

イザリオだけであれば、アドルと互角だ。聖騎士がいる分、向こうが有利かもしれない。そこで、フランがいればその戦力は五分以上。向こうも、力ずくでどうこうしようとは考えないはずだ。

普通の国ならそこまで愚かな真似はしないだろうが、リプレアはやりかねないと思っているらしい。彼女からのシラードへの評価がよく分かる人選だった。

ここでシラードを戦場に連れ出せば、センディアで余計な真似をする余裕もなくなるだろう。周りの国の目が監視にもなる。

『絶対に、シラードの奴らの首を縦に振らせないとな!』

(ん)