軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

906 崩落現場防衛戦

サブマスの制止を振り切って飛び出したフランは、壁の裂け目を目指して駆ける。近づくと、まだ戦闘は行われていないようだった。

ただ、それも時間の問題だろう。抗魔は人間のような思考は持たないが、チャンスと見れば動く程度の知能はあるのだ。

『急ぐぞ。冒険者ギルドも治療院もまともに動けていない以上、防衛戦力がどうなってるか不安だ』

「ん!」

そして現場に辿り着くと、遠くからこちらに向かって押し寄せる黒い波が見えた。間違いなく、抗魔がこちらに攻めてきている。

『周辺にいるのは、冒険者や守備兵が少しだけだな』

集まってきている途中なのだろうが、現状では200人もいないだろう。この戦力で、抗魔の大群を迎撃するのは難しい。ならば、穴を塞いでしまおう。

俺たちは壁の外に出ている冒険者に、戻るように声をかけた。このまま穴を塞ぐと、取り残されてしまうからな。

反発する者もいるかと思ったが、みんな結構素直に従ってくれる。少しでも抗魔に対抗できる可能性があるなら、誰が指揮をしても構わないってことなのだろう。

全員が戻ったことを確認して、俺たちは魔術を発動した。

「グレイト・ウォール!」

『グレイト・ウォール!』

瓦礫の上に立つフランの足元が一気に盛り上がり、そのまま勢いよく隆起する。一瞬で、壁の裂け目が埋まっていた。

これで抗魔が突撃を止めてくれたら、都市内の混乱を治める時間が稼げるんだがな。

しかし、抗魔の足は全く止まらなかった。相変わらずの速度で、こちらに押し寄せてくる。

俺たちが作った大地の壁が、他の防壁に比べて脆いということが分かっているのだ。

ただ土を盛り上げて多少固めただけの壁だからな。抗魔が本気になれば、簡単に崩せる。それを見破られた。

「「「ギュオオォォォオォ!」」」

「むっ!」

『弾幕が厚すぎる!』

抗魔の群れから、無数の遠距離攻撃が飛んでくる。俺たちの想像よりも、弓士型が多かったらしい。

障壁や魔術で迎撃するが、全てを防ぐことはできなかった。

ドドドドという音を立て、壁に魔力弾が着弾していく。数秒後、俺たちが補修した壁は再び穴だらけとなり、崩れ落ちていた。

これは、何度やっても同じだろう。無駄に魔力を消費するだけだ。

『フラン、どうする?』

「やるしかない」

フランは荒野に立ち、俺を構える。

「ここを突破されるわけにはいかない。皆が来るまで、時間を稼ぐ」

『どれだけ助けがくるか分からないぞ? 各門にも戦力を割り振らなくちゃいけないんだ。それよりも、竜人や獣人たちを呼びに行って連れてくる方が、確実かもしれん』

「でも、ここを突破されたら、たくさんの人が死ぬ」

『そりゃあ、そうだが……』

「だいじょぶ。きっと、ソフィたちがくる。他のみんなもきっと。だから、それまでは私がここを守る。師匠、ウルシ。力を貸して」

『俺はフランの師匠で剣だ。力を貸すのは当たり前だろ?』

「オン!」

「ソフィが大切にしてるこの町は、絶対守ってみせる」

『よっしゃ! それじゃあ、先制攻撃と行きますか!』

俺たちは、一目散に突進してくる抗魔の大群に向けて、範囲魔術を叩き込んだ。広範囲にばら撒かれた火炎と雷鳴が、抗魔を一〇〇匹以上消滅させる。

大群の一角に空いた穴は、すぐに後ろから押し出されてきた抗魔によって埋められてしまう。だが、これは想定済みだ。

火炎や雷鳴などの派手な術によって、戦闘が始まったと都市中に伝えるのが本当の目的である。

あとは、救援が来るまで耐え抜くだけだ。

「らぁぁぁ!」

「ガルルル!」

フランとウルシは抗魔の群れに突っ込んで、ひたすらに暴れる。周りに味方がいないことで、好き勝手に攻撃を放つことができるのだ。下手な援軍はいない方が、2人は戦いやすいのかもしれない。

とはいえ、そう言っていられるのも最初だけだろう。カステルの防衛戦では、仲間たちがいなければ確実に負けていた。

やはり、物量で攻めてくる相手に、少数で立ち向かうには限度があった。

そもそも、今はフランを排除するために、抗魔全体が足を止めている。しかし、フランが手に負えないと判断すれば、一部の足止めを残し、迂回して町へと向かっていってしまうだろう。

この習性も、カステルで学んだことだ。

それでも、フランはひたすら戦い続ける。この都市を愛する友人が悲しまないように。

抗魔の動きが変化したら、その時にまた考えるつもりなんだろう。

「ギシャァァァ!」

「てやぁ!」

「ギッシュ!」

「ガルルルルゥ!」

『近寄んじゃねぇ!』

ここからは魔術も控えめに、ひたすら剣を振るう。魔力強奪で抗魔の力を奪いながら、長期戦を覚悟した戦い方なのだ。

ウルシも派手な技や転移は控え、前足と牙を使った戦いに終始している。

当然傷は受けるが、抗魔を食らうことで魔力を吸収し、再生に回しているようだ。捕食回復スキルのおかげだろう。抗魔は噛み砕くと消滅するが、捕食回復を発動しながらだと、消滅前にその魔力などを僅かながら吸収できるようだ。

無限に押し寄せるかと思われる抗魔の波を薙ぎ払いながら戦い続ける俺たちであったが、次第に消耗が激しくなってきていた。

援軍はまだ来ないのか?

壁の上にいる冒険者たちの会話に、耳を澄ます。彼らなら、向かってきている援軍が見えているだろうからだ。

「ギルドからの人員は?」

「ダメよ。各門への派遣で手いっぱいだって。竜人が怪しい動きをしてるから、ギルドの守りも疎かにはできないって言うの!」

「ちっ! 竜人も、獣人も全然来やしないし! どうなってんだ!」

フィルリアや竜人王の陰謀は、効果を上げてしまっているらしい。疑心暗鬼+竜人による襲撃による被害のせいで、ここに送れる戦力が大きく減ってしまっているようだ。

少しずつ人は集まってきているが、ここを守り切れる戦力が十分に来たとは言えない状況だ。

『くそっ!』