軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

896 命竜人の噂

悲痛な表情で、冒険者たちが竜王会へと向かってしまったという話をするソフィ。

「止めに行かないと……!」

「ん!」

俺たちも同意見だ。ただでさえ今回の事件で、冒険者ギルドは力を失い、混乱するだろう。

そこで、竜王会との大規模な抗争なんてことに発展したら……。

町の防衛どころじゃない。

「ソフィは、ここに残って」

「なぜ! 私も行くわ!」

「ここで、冒険者をまとめる人間が必要。それは、ソフィにしかできない」

「……ギルドマスターはどうしたの?」

「死んだ」

フランの簡潔な言葉に、多くの冒険者が息を呑んだ。

飾らない言葉だからこそ、真実であると信じたのだろう。

時間もないため、簡潔に説明をする。

何の説明もないままでは、冒険者たちも納得できないだろう。まあ、俺たちもプレアールが負けたところは見ていないんだが。

「今から、遺体を取り出す」

「わ、わかったわ」

実物を見なければ納得できないだろう。フランの次元収納を知らない冒険者たちが疑問符を浮かべる中、フランはプレアールの遺体をその場に出現させた。

「ギ、ギルマス!」

「ひ、ひでぇ……」

「あのギルマスが、こんな……」

周囲には一般人もいるため、冒険者たちがプレアールを確認したと判断したらすぐにしまい込む。

「……回復魔術が効かなかった」

フランがプレアールの最期を短めに説明した。その話を聞き終えたソフィが、何やら考え込んでいる。冒険者たちも同じ表情だ。

「どうしたの?」

「その、先入観を持つのは良くないと思うのだけど……。竜王会に、似た能力を持った幹部がいるという話があるわ。命竜人という珍しい種族だと……」

「やっぱ竜王会の奴らが仕掛けてきやがったんだよ!」

「許せねぇ!」

ソフィと同じ情報を思い出していたのか、冒険者たちも口々に憤りを露にする。このままだと、皆で竜王会へと突撃していきそうな気配があった。

ソフィもそれを感じたのか、慌てて声を上げた。

「皆さん! 襲ってきたのは確かに竜人でした! でも、襲撃犯が本当に竜王会の人間なのか、証拠はありません!」

さすがは聖女。冒険者たちが、一斉にソフィを見る。よく声が通るのは、歌唱スキルのおかげだろう。

「何者かが、竜王会と冒険者ギルドを争わせようと画策している可能性もあります!」

「で、でも、そんなことをする理由は何ですか?」

「そうだ! 俺たちと竜王会を争わせて、何の得がある?」

「私にも理由は分かりません。でも、竜王会がこの時期に冒険者ギルドを襲撃することにだって、何の得がありますか?」

ソフィの場合、フィルリアの暗躍が頭にある。対する冒険者たちは、陰謀論と言われても納得できていないようだ。

まあ、竜人たちが仲間を殺すところを見ている者も多いし、仕方ないが。

「それに、その命竜人はそれほど強くはなかったはずよ」

「そうなの?」

「ええ。竜王会には、珍しい生命属性の竜人がいると聞いているけど、後方支援役で戦闘力が低いはずなの」

地水火風以外の複合属性の竜人は珍しいっていう話だが、生命属性の竜人か。そいつだったら、確かに回復阻害能力を持っているかもしれない。

ただ、能力があるというのと、それを使ってプレアールを殺せるかどうかは別だ。

腐ってもギルドマスターなのだ。かなりの戦闘力を持っていた。

そのプレアールを惨殺できるような攻撃、相当な強者でなくては繰り出せないだろう。確かに、生命属性の竜人が犯人とは言い切れない状況だった。

その命竜人に罪を擦り付けるために、疑われるような状況を作った可能性の方が高いのではなかろうか?

とはいえ、冒険者たちは竜王会が怪しいと思い込んでいるらしい。状況証拠は、竜王会が怪しいと言っているからな。

「竜人のことは竜王会に聞けば早い! とりあえず、竜王会に行こうぜ!」

「そうだそうだ! 竜人どもに情報を吐かせるんだ!」

「やっぱ、奴らが怪しいぜ!」

一度収まりかけた怒りが、再び再燃しそうな状況だ。

そんな冒険者たちの前に、フランが進み出た。

「だから、私が確認してくる。皆は抗魔に備えてほしい」

「あ、あんたは……」

「黒雷姫さん」

ここにいる者は、フランのことを知っていた。知らない者も、フランの実力を目の当たりにしている。

そのフランからの提案に対し、内心はどうあれ文句を言えるものはいなかった。

プレアールと言い争っている声を聞いた者もいるだろうが、その後の竜人戦や救助の方がインパクトが強いのだろう。

その話を持ち出すものもいなかった。

「ソフィ、後はお願い」

「ええ。フラン、気を付けてね?」

「ん」