軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

889 セリアドットの目的?

塔を脱出した俺たちは、冒険者ギルドへと向かっていた。

ブライネが、各組織に事情を説明するべきだと提案したのだ。

このままでは、治療院を中心に混乱が続くだろう。放置すれば、町の防衛体制にも影響が出るかもしれなかった。

そこで、ソフィとフランが冒険者ギルド担当となったのだ。

冒険者の中には聖女シンパが多く、またフランの異名も有利に働く可能性がある。冒険者ギルドの混乱を抑えるには、うってつけの2人だと思われた。

問題はプレアールだろう。あの老人の動きが読めないことが不安材料だ。

フィルリアが非道な実験を行い、さらにはこの都市に不和の種を撒いていたことは間違いない。そのことを指摘して、治療院と手を切ると言い出す可能性もあった。

だが、冒険者は現実が見えている。彼らであれば、抗魔に備えるためにとりあえず治療院も利用しようと考えるはずだった。

同行しているのは、脱出したメンバーの半数ほどだ。ミランレリュ、ブライネとは、組織への報告のためにすでに分かれている。

一緒に走っているのは、冒険者たちとネルシュ、獣人竜人の連絡役が1人ずつという感じだ。

その道中で、フランとソフィが別れた後のことを互いに報告し合う。まずはフランだ。

「じゃあ、その地下道を辿って、地下室にやってきたのね?」

「ん」

抗魔の襲撃を撃退してから、地下室で様々な悪事の証拠を発見するところまで、フランが何とか説明していく。

「竜王会の人間を捕えて、奴隷にしようとしてたうえに、人の入った怪しいガラスケース……」

「生命の魔力を感じた」

「それが、フィルリアの言っていた実験なのね?」

「ん」

「フィルリアは……いつからそんなことを繰り返していたのかしら?」

ソフィは悲しそうな顔で、後ろを振り返った。遠目に見える塔は、相変わらずの美しい姿を見せている。

「ソフィは、どうしてた?」

「私は、あなたたちほど派手じゃないわよ?」

ソフィはフランと分かれた後、ネルシュと共に結界で閉じ込められたそうだ。

フィルリアに言葉巧みに倉庫へと連れていかれ、結界で外に出れないようにされてしまったらしい。

「油断してたわ。まさか、あそこまで露骨に閉じ込めてくるとは思ってなかった」

脱出するため、ネルシュと共に結界を解除しようと頑張ったが、上手く行かなかったらしい。

その話を聞いたフランが、疑問を口にする。

「じゃあ、どうやって脱出した? セリアドットが見張ってなかった?」

「見張りはなかったわ。脱出方法は……」

ソフィが一瞬口ごもる。そして、チラリと周囲の人間に目を走らせた。

あまり大声では言えない方法で脱出したのか? ソフィの奥の手とかだろうか?

「結界を解除できるの?」

「なんというか……そう! 奥の手を使って破壊したのよ」

「破壊? すごい」

「え、ええ」

セリアドットの結界の硬さは、身をもって知っている。魔力攪乱スキルなどで特殊な消し方をせずに、正面から破壊するには相当な攻撃力が必要だった。

最低でも、ミランレリュの奥の手レベルの破壊力がなければいけない。支援系のソフィが、あれと同等の攻撃を放てるのが驚きだった。

だが、ソフィの実力だけが、脱出できた理由ではなかったようだ。

ソフィが、フランの肩に軽く手を置いた。

『聞こえる?』

「ん? ソフィ?」

『とりあえず、黙って私の話を聞いて』

俺にもソフィの声が聞こえる。聞こえるというか、響いてくる?

念話ではなく、フランの肩に置いた手を通して、振動を伝えているようだ。骨伝導的なことなのだろう。俺にも聞こえるのは、フランを通して俺にまで振動が伝わっているからだ。

デメリットは、フランからは声を伝えられないということだろう。

『実は、部屋の隅に紙が置かれていたの。そこには、結界は1時間ほどで弱体化するから、簡単に破壊できる。隙を見て、逃げろって書いてあったわ』

「!」

『メッセージの主は、セリアドットだった』

セリアドットが、陰ながらソフィを助けたってことか……。だから、さっきもセリアドットの言葉を受け入れて、撤退を選んだらしい。

『彼女が何を考えているのか分からないけど、敵じゃないかもしれない……。だから、少しその動きを見たいの』

セリアドットは、ただの護衛冒険者ではないってことか? 何か目的があって、フィルリアの護衛をやっている? フィルリアを殺されるわけにはいかないと言っていたな。

単純に、護衛対象を殺されるわけにはいかないという意味だと思っていた。だが、自分の目的達成のためには、フィルリアに生きていてもらわないとならないって意味だとしたら?

「ともかく、私たちはできることをしましょう」

「ん」

「フィルリアのせいでこの都市が滅ぶなんてこと、絶対に防ぎたい。彼女のやっていることに気づけなかった私たちにも、責任はあると思うから。だから、フラン。力を貸して」

「ソフィには借りがある。ここで、返す」

「ありがとう」

ナディアを助けられたこと、フランは忘れていなかった。フランにとっては、大恩と言えることなのだ。

どうやら、友人であり、恩人でもあるソフィに対し、できうる限り力を貸すと決めたらしかった。

目の前に仇敵である闇奴隷商人の影がチラつく中で、暴走せずに友人のために我慢したのだ。以前のフランならフィルリアに斬りかかり、セリアドットとも事を構えていただろう。

これは、フランが成長した証であった。大変な時なのに、ちょっと感動しちまったぜ。