軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

87 下っ端2人

砂浜を堪能した俺たちは宿探しの為、町へ戻ってきていた。

砂の城? もちろん残してきたよ。だって、壊そうとしたらフランが涙目になるし。ウルシの掘った穴は、魔術で埋め戻しておいたけどね。

砂浜で思ったよりも時間を取られてしまった。もう日が傾きかけてるし、大通りの宿は諦めて、路地裏の安宿を攻めてみるか。

そうして、宿を探して裏通りを彷徨っている時だった。

(師匠)

『おう』

つけられている。

つかず離れずの距離で、男が二人だな。

『これだけ気配丸出しなんだし、大して強くはなさそうだな』

(やっちゃう?)

『もう少し人けのない方へ向かおう』

「ん」

『ウルシは影の中で待機な』

(オン)

フランが道を曲がると、都合よく行き止まりだ。案の定、フランが人気のない道に入り込むと男たちが姿を見せた。

「お嬢ちゃん、迷子かな?」

「俺達が道を教えてやるよ」

手慣れた感じで声をかけてくるな。いきなり逃げられない様に、優しい言葉で油断させる気なんだろう。

「だいじょうぶ」

「まあまあ、そう言わずに」

名称:エンリケ 年齢:34歳

種族:青猫族

職業:商人

状態:平常

ステータス レベル:17/50

HP:78 MP:40 腕力:37 体力:33 敏捷:52 知力:29 魔力:21 器用:42

スキル

運搬:Lv2、商売:Lv2、掏摸:Lv4、短剣術:Lv3、捕縛:Lv2、夜目

装備

粗鉄の短剣、鹿革の胸当て、鹿革の脛当て、消音のイヤリング

名称:ファレゴ 年齢:38歳

種族:青猫族

職業:戦士

状態:平常

ステータス レベル:22/50

HP:168 MP:136 腕力:49 体力:50 敏捷:68 知力:44 魔力:39 器用:61

スキル

暗殺:Lv2、消音行動:Lv3、短剣術:Lv4、投擲:Lv2、夜陰紛れ:Lv2、夜目

装備

鉄の短剣、熊革の鎧、黒染の外套、器用の指輪

雑魚だった。ちょっと気になるのは、暗殺っていうスキルくらいかな?

暗殺:レア度3・不意打ちをした場合、初撃のダメージをスキルのLv%上昇する。

マックスで1割上昇だ。念動カタパルトの威力が1割上昇したら、かなりの物だぞ? まあ、スキルテイカーは使えないから、奪えないんだけどさ。再使用できるようになるまで、あと75日もかかる。封印無効のレア度は8だったから、レベルのないスキルはLvMax扱いになるみたいだな。

スキル構成からしても、堅気じゃないだろう。

「この辺は迷いやすいぜ」

「余計なお世話」

「……まあまあ」

危機察知が反応する。これで顔が怖いだけの善人説は消えたな。

「それ以上近づいたら、敵とみなす」

「はぁ?」

「無事じゃ済まない。逃げるなら今」

「ぎゃははははは! 威勢がいいなぁ!」

「……うるせえ! いいからこっちこい!」

「傷つけるなよ。売値が下がるからな!」

しかし、青猫族っていうのはこんなのばっかりだな。今まで出会った青猫族は、100%の確率でクズなんだが。

フランが無言で俺を構えた。

「なんだぁ? やる気なのか?」

「ガキが粋がってんじゃねえよ!」

フランを馬鹿にした顔の男たち。今のうちに余裕ぶってればいいさ。すぐにその余裕をぶち壊して、命乞いさせてやる。

「警告はした」

その台詞を合図に、俺は魔術を唱えた。並列思考のおかげで、2つ同時詠唱は問題ない。

『――ストーン・ウォール』

『――サイレンス』

土魔術で道を塞ぐ。両側には壁があり、男たちは逃げられない。さらに風魔術で防音も施した。これで、何があっても周囲には、ばれないだろう。

『殺すなよ?』

(なんで?)

『ちょっと聞きたいことがあるんでな』

(分かった)

「な、なんだぁ?」

「え? え?」

男たちは突然の魔術に困惑したままだ。商人の方は身構えてさえいない。お粗末だな。

「ふっ」

「が!」

「しっ」

「え……?」

はい、終わり。両者とも意識を刈り取られ、地面に転がっている。戦士の方は一応荒事専門なのだろうが、相手が悪かったな。

「どうするの?」

『とりあえず縛っちまおうか』

俺は魔糸生成スキルで糸を作り出し、それで二人を縛り上げた。それほど強度のある糸を作れるわけじゃないが、量を作ってグルグル巻きにすれば、麻縄程度の強度は確保できるだろう。

俺が気になったのは、こいつらの背後関係だ。さっきのフランを売るという台詞に、青猫族と言う事実。こいつらは人をさらって無理やり奴隷にする、無認可の闇奴隷商人だろう。

そして、ここは港町。クランゼル王国中から誘拐してきた闇奴隷たちはここに集められて、船に乗せられるんじゃないか? フランも船で運ばれたと言っていたし。

青猫族の闇奴隷商たちは、フランにとっても仇敵だし。俺にとっても敵認定の相手だ。いつか本格的に事を構えるかもしれないからな。情報はいくらあっても良いのだ。

『と言う訳だ』

「なるほど」

じゃあ、俺が分体で話を聞くから、フランは外で見張りかな――とか思ってたら、フランが男たちをいきなりゲシゲシと足蹴にした。

「おきろ」

「ぅぅ……なんだ、こりゃ」

「一体なにが……」

「ウルシ、出てこい」

「オン」

「ひぃ!」

「うわぁ!」

いきなり3メートルの狼が目の前に現れたら、そりゃビビるよな。男たちは逃げようとしているが、足と腕を縛られて、立ち上がることさえできない。

フランさん、これは静かに怒ってるね。とりあえず口を挟まんとこう。

「聞きたいことがある」

「お、俺達にこんなことして、生きてこの町を出れると思うな――あげ!」

うわぁ、フランの蹴りが、喚いていた商人の顔面をモロに抉った。鼻血ブーだ。

「うるさい。訊かれたことにだけ答える」

容赦のないフランに、男たちは恐怖を覚えたようだ。とたんに大人しくなった。

「おまえたちは闇奴隷商人?」

「な、何のことだ? 知らねーな」

「ぜ、善良な商人だぜ?」

はい、ダウト。虚言の理が男の言葉が嘘だと教えてくれている。

『フラン、間違いない。こいつら闇奴隷商の一味だ』

「この町に、奴隷を閉じ込めている場所がある?」

「だから、知らねーって」

『これも嘘』

「ん。他にも闇奴隷商の仲間がいる?」

「いや、だからそんなもん知らないんだよ!」

『うん、嘘』

「洗いざらい喋れば、酷いことはしない。かも?」

「だから、何言ってるのか分からないな?」

「そうだぜ? 今なら許してやるから、俺達をとっとと解放しろよ?」

「……ウルシ」

「グルルルルル!」

「ひっ」

「この狼は人間が好物。特に、生きたまま生肝を食べるのが好き」

「グルゥ!」

ウルシが男の一人をベロリと舐め、喉を鳴らした。まるで、「こいつは美味そうだ」とでも言っているみたいだな。男たちもそう思ったようで、青い顔で震えている。

「生きたまま食べられたくなければ、全部話したほうがいい」

「だから、何のことか――ぎゃあ!」

フランが戦士の手の甲に俺を突き立てた。そして、少しばかりグリグリと抉ったりしている。

「ああああ!」

「おい、大丈夫か! このガキ――げは!」

「学習能力ゼロ?」

商人の顔面に再び蹴りが入る。鼻は完全に砕けたな。

「――グレーターヒール」

「え?」

「上位の回復魔法、だと?」

フランが戦士の手から俺を引き抜くと、回復魔法で傷を治す。一瞬で穴がふさがり、傷が消えた。男たちに僅かに希望の表情が浮かんだ。

この少女は、自分たちを殺したくないんだ。そうだよな、こんな子供が進んで人殺しをしたいわけがない。そんな妄想交じりの、都合のいい希望だ。

だが、フランの次の言葉が男たちの希望を打ち砕く。

「良かったね。簡単には死なないよ? 例えば、こんな事されても――ファイア・アロー」

「うぐああがあぁぁぁぁぁぁ!」

「――グレーターヒール」

手首から先が炭化した戦士の腕が、再び一瞬で完治する。

「簡単には、死ねないよ?」

「――ああ」

「――ひぃ」

男たちの口から出たのは、絶望の溜め息だ。この少女から逃れられない。回復魔術がある限り、死ぬことすらできない。永久の責め苦が待っている。

「な、なあ、取引をしよう! 金ならあるんだ!」

「いらない」

「じゃあ、何なら――」

「馬鹿なの? 情報を喋ればそれでいい」

「だはら、俺たひは――ごぼ!」

三度目の蹴り。前歯が全部折れた。

「私には嘘を見抜くスキルがある」

2人はもはやどうもならないと悟ったようだった。フランの質問に素直に答え始めた。

やはり、この町には青猫族の闇奴隷商人たちが使っているアジトがあるそうだ。クランゼル中から集めて来た闇奴隷はここを通してレイドス王国に送られる。以前はバルボラを使っていたらしいのだが、そこは手入れがあって潰されたらしい。

俺の推測だが、フランは他国で奴隷にされ、船でバルボラに運ばれてきたんだと思う。そして、バルボラのアジトに捕えられている最中に国の手入れがあり、一旦クランゼル内の他のアジトに移され、ダーズへ向かって運ばれている最中に俺と出会ったんじゃないだろうか。

レイドス王国は奴隷を高額で買ってくれるため、ここ10年程はかなりの数の奴隷が船でダーズへ送られるんだとか。

アジトの場所と、構成員の数、捕まっている奴隷の数を聞き出す。

「な、なあ。話したんだし、助けてくれるよな?」

「心を入れ替える!」

男たちはそう言っているが……。俺は風の魔術で2人の首を斬り裂いた。

ここで逃がしたら、フランのことが闇奴隷の組織に伝わってしまうじゃないか。いくら何でも、裏組織に狙われ続けるとか勘弁願いたいのだ。どうせ、子供をさらって売り払うような奴らだし。ここで消しとく方が世のため人のためだろう。

死体は取りあえず収納しておく。なんか、次元収納の中が段々とカオスになってきたな。

「ん、師匠ありがとう」

『何もしてなかったし、このくらいはな』

「これからどうする?」

『フランはどうしたい?』

「もちろん、大掃除?」

だよな。フランの性格ならそう言うと思った。本当はフランにはどっかで待機してもらい、分体とウルシで行くのが安全なんだが……。海で遊んだせいで明後日まで複数分体創造が使えないんだよね。

『やるなら夜を待ってだな』

「ん」

『その前に、宿だけは決めたいよな』

その後、何とか安宿の1室を確保した俺たちは、襲撃の時を静かに待つのだった。