軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

86 うーみーだー!

俺たちは冒険者ギルドに戻ると、素材を売った代金を受け取った。全部で12万ゴルド。まあまあの額だろう。あとは宿が見つかれば完璧なんだが。

だが、見つからない。うーむ、どうすっかな。

フランも飽きて来たみたいだし。

「師匠、海行きたい」

『だって、まだ宿確保してないぞ?』

「ギルドに泊めてもらう。今は海」

「クゥン」

ウルシもか!

仕方ない、宿探しは一旦止めて、海行くか。

『市場で食料買っていくぞ!』

となりゃ、せいぜい楽しまなきゃ損だ。

「ん」

「オン!」

という事で、まずは買い出しだ。港町だし、珍しい食材が手に入るかもしれん。

その期待通り、市場には様々な魚介類が並んでいた。中でも目を引いたのは、真っ青な色をした塩だ。高級品である白塩の10倍以上の値段がつけられている。

ダーズ近郊の海中にある、ランクGダンジョンでとれる特産品なんだとか。

ダンジョンと聞いてフランのテンションが上がったが、詳しく聞くとあっと言う間に興味を失ったようだった。

なにせ、全1階層。30分で深部に到達でき、青塩以外に特に目ぼしいモノもない。魔獣も雑魚しかいない上、数も少ない。まさにランクG。フランが興味を失うのももっともだろう。俺だって、潜りたいとも思わない。

水没していて水中戦ができるとかならまだ面白そうだが。到達するのに水中呼吸は必要だが、中には空気があって、普通の洞窟と変わらないらしい。しかも、特産品の青塩は市場で買えたし。まあ、今回はパスだな。

「あれ、何?」

『ピラゲニアっていう魚型魔獣だな。肉はそれなりに美味いみたいだぞ』

「あそこのは?」

『カニの爪か? しかしデカイな!』

「クウン」

『ウルシはこれが欲しいのか?』

その後市場を軽く巡って色々買い集め、俺達は浜辺へと向かった。

まだ寒い時期なので、砂浜で遊ぶ人はいないみたいだな。貸し切り状態だ。

「うみ!」

「オンオン!」

フランは靴や外套を脱ぎ捨てると、海へと駆け出す。ウルシもその後について海へと飛び込んでいった。

ウルシには毛皮があるし、フランは魔術を使えば多少水が冷たくても大丈夫だろうが……。

『おーい、あまり勢いよく海に入ると――』

「うあー」

「キャイーン!」

だから言わんこっちゃない。フランたちはペッペッと塩水を吐き出して、顔をしかめている。

そして――。

ザバーン

「がぼぼ」

「ヒャイーン!」

2人は波にのまれ、浜辺に打ち上げられた。全身びしょ濡れで砂の上に転がっている。うーん、まるで土佐衛門だな。

ステータスが人の限界を超えているフランと、ダークネスウルフのウルシをあんな状態にするとは、大自然の力強さを感じるね。

『海は全部塩水なんだから、口に入れたらしょっぱいぞ!』

「知らなかった」

「クゥン……」

砂まみれで起き上がったフランたちのテンションは最低だ。あんなに楽しみにしてたのに。

「それに、なんか気持ち悪い……」

「クウゥゥ」

『どうした?』

「足が、吸い込まれる」

「オウ……」

ああ、波打ち際ってそんな感じあるよね。砂と一緒に海に引きずり込まれる様な感覚だ。フランたちはそれが気持ち悪いらしい。

『もういいのか?』

「ん……」

「オン……」

水を滴らせながら、2人がトボトボと戻ってきた。まるでお通夜の様なローテンションぷりだ。

『まあまあ、飯でも食って気持ちを切り替えようぜ』

「カレー……?」

『まあ、弁当は用意できなかったし、ここはカレーにしとくか』

「ん」

『ウルシにはこれな』

「オン」

ウルシにはデカイ肉塊を出してやった。

サワサワと吹き付ける潮風と、雲一つない青空。こんな浜辺で食べる食事は、フランも初めてだろう。

これで少しはテンションが回復すればいいんだけどな。そもそも、フランたちはまだ海を全然楽しんでないし。これはいかんと思うのですよ。海の楽しみ方は水遊びだけではないと、教えてやらねば。

まずは、これだ。

「釣り竿?」

砂浜が途切れた場所からは磯っぽくなっていて、釣りが出来そうなのだ。これは見逃せん。

という事で、食事を終えたフランは釣りを始めた。川や湖で釣りをしたことは有るが、海釣りは初めてだろう。

俺も分体を創り出し、釣り竿を握った。考えてみたら、こっちの世界で釣りをするのは初めてだ。腕が鳴るぜ。

「大きい魚を釣る」

『おう、頑張ろうぜ!』

「オンオン!」

1時間後。

「うおー」

「オンオンオンオン!」

『よっしゃ、引け引け!』

全然釣れないからマジで焦ったぜ。このままじゃ、海=つまらない場所と言う、最悪のメモリーが残ってしまうところだった。

「やった」

「オーン!」

『結構デカイじゃないか』

ちょっとグロテスクだが、80センチくらいはあるだろう。文句なしに大物だ。

え? 俺? フランが釣ったんだから、俺の釣果なんかどうでもいいじゃないか。はっはっはっは。

『じゃあ、この場でさばいて喰っちゃおう!』

「ん!」

「オンオン!」

俺は早速調理に取り掛かる。土魔術で作りだした竈に、魔術で火も熾せる。俺にかかれば何もない砂浜も、キッチンに早変わりだぜ。

『その間に、砂遊びでもしてていいぞ』

「砂遊び? 砂で遊ぶの?」

『おう』

「……砂をぶつけ合う?」

『ああ、砂合戦ね……って、おい! そんなハッチャけた遊びは許しません! 砂でお城を作るとか、穴を掘るとか、そんな感じだよ』

「なるほど……分かった。やってみる。ウルシ、行こう」

「オン」

『あんま遠くには行くなよ!』

「ん」

さて、何を作るかね。刺身はデフォルトだろ? あとはアラ汁に、塩焼きでも作るか。

毒はなさそうだ。魔獣じゃなくて、普通の魚なんだろう。身は上品な白身だな。脂も乗ってて美味そうだ。

よし、刺身はこれで良いな。塩焼きは、青塩を使ってみようかな。分体だと味見が出来るからいいね。

アラ汁には、さっき市場で買ったアサリっぽい貝と、カニの爪を入れよう。味付けはもちろん味噌だ。日本の味噌よりも大分甘めだが、味噌汁に使うには問題ないだろう。出汁は十分すぎるほどだし。

『よし、できた!』

30分後。料理を作り終えた俺はフランたちを呼ぼうとしたんだが……。

『は?』

思わず間抜けな声を出してしまった。いや、料理作りに集中し過ぎてたけど、俺のせいか?

ちょっと離れた場所に、5メートルを超える巨大な西洋風の城が作り上げられていた。勿論犯人はフランだ。

土魔術と風魔術を使って、成型と掘削を行っているらしい。いや、城を作れって言ったけどさ……。もはや砂遊びの域を超えている。サンドアートの領域だろう。人がいない砂浜で本当に良かった。というか、精巧過ぎないか? フランは芸術の才能があるかもしれない。これはそっち方面のスキルを伸ばしてあげるのも、保護者の務めかもしれん。

フランが城に使っている砂は、横でウルシが掘った穴から出た物だろう。こっちもやりすぎだ。めっちゃデカイ、クレーターみたいな穴が出来ている。

近づいてみると、ウルシが一心不乱に前足を動かし、穴を掘り続けていた。そう言えば、犬って穴掘るの好きだったな。

「ワフワフワフワフ――」

めちゃくちゃ楽しそうに、穴を掘り続けている。

いや、どうすりゃいいんだこれ?