軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

863 監視カメラ

「黒幕のアタリはついてんのかい?」

ゲフの言葉に、フランが頷く。

「ん。治療院に関係あるかもしれない」

「……まじか?」

ゲフだけではなく、ワンゴンも驚きの表情だ。彼らアウトローにとっても、治療院が悪事を働くというイメージがなかったらしい。

「ヌメラエエは、治療院が――といった直後に口封じされた。治療院が何か関わっているかもしれん。まあ、その先を聞けなかった以上、容疑者の一つでしかないが」

「怪しいが、確定じゃねぇってことか。ちっ」

ゲフはそう呟き、悔し気に舌打ちをした。黒幕に対して、強い苛立ちを感じているのだろう。

それを察したメアが、彼らに先走らないよう忠告する。

「そういうことだ。お主らも、短絡的な真似はしてくれるなよ? 相手の思うつぼだからな?」

「分かってるよ。そっちも、そのワンチャンたちの散歩紐をしっかり握ってろよ?」

「ああ? お嬢に対してなんて口の利き方をしてやがる!」

「うるせぇ! キャンキャン吠えてんじゃねぇぞ! ゴラァ!」

あー、また喧嘩し始めた。喧嘩するほど仲がいいというが、こいつらの場合は同族嫌悪なのだと思う。

敵と性格が似ているからこそ苛立ち、余計に相手への嫌悪感が強まるのだろう。

そんな二人に、フランが再び王威を叩き付けた。

「喧嘩するな。さっきも言った」

「す、すいやせん……」

「すまねぇ……。つい」

「次は強制的に寝かす」

「うす……」

「お、おう……」

フランがそう脅すと、ワンゴンとゲフが驚くほどあっさりと静かになった。周囲で騒いでいたアウトローたちも同じだ。

畏怖、恐怖、敬意、崇拝。感情に違いはあれど、フランを完全なる上位者として認めたようだった。

この都市のアウトローたちは、案外付き合いやすい奴らかもしれない。面子にこだわったり、血の気が多かったりと面倒な部分はあれど、力を示せば素直に認めてくれるのだ。

「これ以上ここに居てもそいつといがみ合っちまうだろうし、そろそろ行くぜ? 何か情報があれば、あんたに知らせる。だから、そっちもガズオルの情報があれば、頼む」

「ん。わかった」

「おい、犬っころ! 一時休戦だ! 他の奴らにもしっかり周知しとけよ!」

「こっちのセリフだ! そっちこそ、他のトカゲどもをしっかり押さえやがれ!」

「ふん!」

「けっ!」

それ以上は言い合わずに背を向けたし、許してやろう。今更、普通の会話はできないのだろうしな。

「我らも一度獣人会に戻る。フランは冒険者ギルドを使っているのか?」

「ん」

「では、何かあればギルドに伝言を残そう。我らに用がある場合は、獣人会にくればいい。話は通しておこう」

「分かった」

フランが頷くと、メアが少しだけ心配そうな顔をした。

「フランよ。無茶はするなよ?」

「ん。だいじょぶ」

「ならいいが……。闇奴隷商人の殲滅は我らの仕事でもあるのだ。いつでも声をかけるんだぞ?」

メアは最後まで心配そうな表情を崩さなかった。黒猫族であるフランが、闇奴隷商人に対してどんな思いを抱いているのか、理解しているのだろう。

獣人、竜人、双方が去った広場で、俺たちはこの後の行動を相談する。

『さて、一番の手がかりが死んじまったわけだが……』

(治療院に行く)

『まあ、元々その予定だったしな。そうするか。だが、今日は様子を見るだけだからな?』

(ん。わかってる)

他に心当たりがない以上、俺たちは治療院を偵察することにした。まあ、今日のところは診察を受けつつ、様子を軽く見るだけだが。

それと、道すがら結界魔石の感覚を探ることにした。ガズオルと揉めた時など、フランは何度か違和感を覚えている。

ヌメラエエ以外にも、工作員が潜んでいるかもしれないのだ。

すると、案の定であった。

(師匠。見つけた)

『どっちにある?』

(あの建物の屋上)

『よし、行ってみるぞ』

やはり、俺では何も感じることができない。結界魔石で隠蔽されているのだろう。だが、一度発見の仕方を覚えたフランは、もう覚醒せずとも見つけることができるようだ。

実際、屋上に上がってみると確かに結界魔石が設置されていた。だが、そこには誰もいなかった。

結界魔石を収納してみると、その中央には箱のようなものが置かれている。その名も、『遠距離監視結界』。どうやら、監視カメラに相当するものであるようだった。

人ではなく、魔道具で都市内の情報を集めていたわけだ。ヌメラエエを自爆させたのも、これで監視していたからだろう。

『よく見つけたな。しかも、今回は人がいる訳じゃないのに』

先ほどは、ヌメラエエの放つ電磁波のようなものを感じ取って発見できた。だが今回は魔道具が置いてあるだけである。

(うーん。周りと比べて、違う? 変じゃないのが変)

『どういうことだ?』

(ん。なんか――)

フランの感覚的な説明は難解だが、なんとか理解できた。要は、ここら一帯に微妙な違和感があるのに、結界魔石のせいで違和感が感じられない場所こそが、本当は怪しいということであるらしい。

フランのように、スキルを使わずとも広範囲の気配や魔力を察知できるからこそ可能な探知方法だろう。

『しかし、これで治療院に行きづらくなったな』

(なんで?)

『監視結界を発見して、収納したことが相手に知られている可能性がある』

となると、治療院に行くというのは、敵の本拠地に乗り込むようなものかもしれない。無防備に治療を受けに行くのは怖かった。

何も知らず、敵から一方的に監視されるよりはましだけどさ。

(じゃあ、外から観察しに行く)

『まあ、それくらいしかできないか。ウルシ、ガズオルの匂いを感じたら教えてくれ』

(オン!)

最終手段としては、俺だけでの潜入も視野に入れるべきだろう。少しでも情報が集まればいいんだがな。