軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

851 竜人王の狙い

神竜の巫女の話を教えてもらったが、その存在に俺たちは心当たりがあった。

「ベルメリアのお母さんは、巫女なの?」

「アースラース様からお聞きに?」

「ん。偉い人で、竜人王から狙われているって」

「そうです。私の母ティラナリアは、巫女です。それ故、この大陸から出ることが許されませんでした」

この大陸で重要な役目を負っているとは聞いていたが、ベルメリアの母親はやはり竜の巫女だったらしい。そして、竜人王は彼女の持つ神竜化のスキルを狙っているそうだ。

伝承を聞く限り、神竜化のスキルを持っている者が王であると認められるらしいからな。

「でも、なんでベルメリアのお母さんが狙われる? 他にも巫女はいる」

「属性が一致しているからでしょう」

現在、竜人王と名乗る男は火竜人であると言われており、ティラナリアは火竜神の巫女である。竜人王は、属性が一致している方が相性がよく、大きな力を得ることができると考えているのだろう。

ティラナリアが暮らす神殿に何度か接触があり、神竜化のスキルを渡すように要求されたらしい。

最初は穏便な交渉だったが、何度も断られて苛立っているのだろう。最後は恫喝紛いの脅し文句で、完全に奪う気満々だったようだ。

「母を守るためにも、竜王会に潜入してその動きを監視していました」

「竜人王を倒すの?」

「……可能であれば」

倒すというか、完全に殺る気だろう。殺気を抑えきれていない。しかし、竜人王はその所在がつかめず、まだ探している状態であるようだった。

外部協力員的な立場であるベルメリアたちでは、居場所の情報はつかめないらしい。

「じゃあ、さっきの竜王会の奴ら、そのままでよかった?」

「確かに、竜王会の力を削ぐ機会でしたが……。大規模な抗争は、私たちの望むところではありません」

そもそも、竜王会はその歴史が古く、様々なところに影響力のある組織であるらしい。ただ、後を継いだ主が、竜人王を名乗って暴走し始めたというだけである。

組織が被害を受ければ竜人全体に影響が出るかもしれないし、抗魔の季節に騒ぎを起こすのはまずい。母親を救うために、大きな被害を出すことは本意ではないのだろう。

「ですので、竜人王の居所に関する情報があれば、ぜひ」

「ん。分かったら教える。その代わり、闇奴隷商人の情報があったら、教えてほしい」

「闇奴隷商人ですか……。そうですね。黒猫族ですものね」

詳しいことを言わずとも、黒猫族が闇奴隷商人を探しているというだけで、納得したらしい。

「闇奴隷商人か。噂は聞いているが……」

「噂でもいい」

フランがそう答えると、ベルメリアたちがいくつかの情報を教えてくれた。

まず、竜王会が闇奴隷商人と繋がっている可能性は低いという情報。これはガズオルから聞いた情報とも重なる。

ただ、竜人王は明らかに今までの竜人と違う価値観を持っている個体だ。トリスメギストスを差し置いて、竜人王だなんて名乗るくらいだからな。

闇奴隷商人に関しても、繋がりがある可能性はあるそうだ。

「あとは獣人会ですね」

獣人会の嫌われ者たちが集まる血牙隊。この部隊が、ここのところ水面下で大きく動いているらしい。

複数確認されている拠点の出入りも激しく、大きな戦闘も起こしているようだ。

同時に、数人の幹部が姿を消したという報告が、竜王会の監視役からもたらされている。竜王会は、何らかの作戦行動を開始したとみているそうだ。

そして、竜王会の監視網から姿を消した者たちの中に、青猫族が含まれているという。

「竜王会や冒険者ギルドへ対する作戦行動ではなく、闇奴隷に関することで動いている可能性はあるかもしれん」

「なるほど」

やはり、獣人会の血牙隊ってのが一番怪しいな。一度きっちりとした情報を得たいところだが……。

「ねえ、どこに行ったら会える?」

冒険者ギルドの情報待ちではあるが、いざという時のために情報を集めておいて損はない。その後、獣人会についていくつか情報を教えてもらい、情報交換は終了となった。

互いに泊っている場所は分かっているし、いざという時には情報を融通し合うと約束する。

俺はそろそろお暇しようかと思ったんだが、フランにはもう一つ気になっていることがあった。

「なんか、変な感じしなかった?」

「変な感じ、ですか? それはどういった?」

「ん……。なんか……変」

説明しようとするが、フラン自身もよくわかっていないのだ。上手く言葉にならない。

「それでは分かりませんね……」

「去り際、何かを気にしていたようだが、それか?」

「ん」

フレデリックが、僅かな時間考え込む。

「実は、俺も違和感を覚えたことがあった。その時は勘違いだと思って、気に留めなかったのだが……」

どうやら、フレデリックも不思議な引っ掛かりを覚えたことがあるらしい。ただ、彼もそれが何だったのかは分からなかった。

「次は、しっかりと周囲を確認するとしよう」

「ん」

「私も気を付けてみます」

そうして、ベルメリアたちと分かれたのだが、道中でフランが足を止めた。

「よぉ。ちょいと止まれよ。雑魚猫族のガキ」

「……あ?」

「んだてめぇその顔は? 進化もできねぇ下等種族が粋がってんじゃねぇぞ?」

「青猫族」

「その通り! お前らクズ猫族の支配者、青猫族様だぁ!」

「ご主人様相手に頭が高ぇぞ? とっとと地面に額擦りつけて鳴けよ!」

フランの進路を2人の青猫族が塞いでいたのだ。しかも、穏やかな雰囲気じゃない。というか、完全な敵対者であった。

ベルメリアたちと再会して、機嫌よく歩いていたフランが、一気に不機嫌になる。

そして、男たちの言葉を聞いた直後には、その体に殺気を纏っていた。

顔は無表情だが、完全に臨戦態勢だ。

雑魚だと思っていたフランの放つ迫力に、戸惑いを見せる青猫族たち。どうやら、フランの身元が分かっているわけじゃなさそうだ。

多分、1人で歩く黒猫族の少女を見て、甚振る目的で声をかけてきたのだろう。しかも、ここは住宅街であるというのにだ。

暗黙のルールを忘れるレベルの馬鹿なのか、揉み消すことができるほどの後ろ盾があるのか。どちらにせよ、クズであることは間違いない。

『獣人会の構成員かもしれん。殺すなよ』

(……できるだけ気を付ける)

いつでも癒せるように、魔術は準備しておこう。青猫族にあそこまで言われてしまっては、フランはもう止まれないのだ。