軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

845 青猫族の情報

さて、向こうから飛び込んできた情報源だし、とりあえず尋問させてもらおうか。

「ねぇ。聞きたいことがある」

「なんだ? こうなってしまっては、もうなんでも答えるぞ?」

「闇奴隷商人の情報か、それに関わり合いのある青猫族の情報が知りたい」

「闇奴隷商人? 奴らの何が知りたいのだ?」

「なんでもいい。情報であれば」

「うーむ。うちは、奴隷商売には表ですら関わり合いが薄いからなぁ」

「そうなの?」

「ああ」

ガズオルの説明によると、竜人は奴隷を使わないらしい。

自分たち以外の種族を見下している者が多いから、「他の下等種族なんか全員奴隷にしてやるぜぇ!」って感じだと思ったのだが、むしろ逆だという。

他種族なんてどうせ馬鹿で弱くて使えない奴ばかりなんだし、奴隷でも使う価値なし! どちらかというと、そんな考え方だそうだ。

奴隷を連れていると、「ぷぷ。あいつ奴隷使ってんの? だせー!」って思われちゃうっていうんだから、筋金入りである。

また、ゴルディシア大陸から離れることが許されていない純血の竜人たちは、この大陸で奴隷を捕まえたとしても、それを輸出する手立てがなかった。

その結果、竜人が奴隷売買に関わることは多くはないのだ。

「獣人会で、闇奴隷を捕まえているっていう噂は?」

「うーむ、聞いたことはないなぁ。儂は普段は抗魔狩りに出ているから、町の中の噂には疎いのだ」

「そう……」

「あ! ただ、獣人会の助っ人の片割れが青猫族だって噂だぞ?」

「ほんと?」

「少女の方はどの種族か確定していないようだが、相方の男は青猫族で間違いないそうだ」

「なるほど……」

獣人会の強い青猫族か。調べてみる価値はありそうだ。

その後、他の心当たりを聞いてみても、ガズオルは本当に何も知らないようだった。細かい噂なんかを気にする性格でもなさそうだし、これ以上の情報は出てこないだろう。

この後、この男をどうしようかね?

まあ、とりあえず、誤解は解いておこう。

「私は獣人会の奴と会ったこともない」

「ああ、そのようだな……」

ガズオルが情けない顔で、肩を落とす。獣人会の内情をこちらから色々と尋ねたことで、フランが本当に部外者なのだと理解したのだろう。

標的を間違えた挙句に少女に襲い掛かり、しかも敗れて捕えられたのだ。いいところがなかった。

ここまで来ると憎み切れないらしく、フランもちょっとかわいそうな相手を見る目でガズオルを見下ろしていた。

ガズオルも、憐れみの視線を敏感に感じ取ったらしい。自嘲するように、呟いた。

「ふっ。無様だな」

「確かに」

「……」

「……」

さすがの俺でも、ガズオルに同情してしまったぞ。哀れな奴。

ガズオルはちょっと涙目で、叫んだ。

「くっ、殺せ!」

竜人のおっさんのくっコロとか! 誰得なんだよっ!

(師匠。どうする?)

『うーむ……』

そこでサックリといかないで、キッチリ俺に意見を求めてくれたのは嬉しいぞ。しっかりと考えて行動しようとしているのが分かるのだ。

『殺すのはまずい』

(ん)

ガズオルはかなり強いし、竜王会でも下っ端ではないだろう。幹部級の人間を殺したことがバレたら、報復は避けられない。

それに、俺もフランももう殺す気が失せているのだ。

『仕方ないから、その辺に転がしておくか』

(ん。分かった)

ガズオルの様子では再び襲い掛かってくる可能性は低いだろうが、一応拘束をしておこう。

大地魔術で地面を変化させ、ガズオルの胴体を絡めとる。そして、フランが治癒魔術でガズオルの足をくっつけることにした。

「ぬぉぉ? な、なんじゃぁ!」

「大人しくする」

「儂の足に何を……!」

「いいから動くな」

「こ、これは、回復――いや、治癒魔術か?」

「ん」

ガズオルが暴れるのを止め、態度も神妙になった。治してもらえると知って大人しくしたのかと思ったが、どうもそれだけではないらしい。

「少女よ……」

「なに?」

「今日のこと、水に流せとは言わん。だが、全ての竜人がお主の敵であると思わんでくれんか? 悪いのは儂ら竜王会なのだ」

「どういうこと?」

「回復魔術の使い手は、この大陸では貴重だ。特に、この都市ではな……。治療院が権力を握るのも、それが理由よ」

貴重な治癒魔術の使い手を襲ったと知って、俺たちの想像以上に衝撃を受けているらしい。そして、フランが竜人族全てを敵視して、今後竜人を一切回復しないと考えることを恐れたようだ。

「竜王会にはお主には手出しをせぬように伝える。何なら、ここで儂の命を取ってくれても構わん」

「……別に、誰でも治すわけじゃない」

「分かっている。ただ、同胞がどこかで命を失わずに済むかもしれない可能性を、儂らが奪うわけにはいかんというだけだ」

「……知らない」

「うむ」

フランは、それ以上どう答えればいいのか分からなくなったのだろう。ガズオルから背を向けて歩き出す。

「もし、儂の力が必要になったら、声をかけてくれ! どんなことでもしよう!」

「……」

「済まなかったな!」

ガズオルの声を背に受けながらしばらく歩いていると、不意にフランが周囲を見回した。

『どうした?』

「何か……?」

言葉にできない、僅かな異変のようなものを感じ取ったらしい。

俺も周囲を探るが、何も発見できなかった。だが、俺よりも鋭いフランが何かを感じたのであれば、それは無視できないのだ。

『早くここから離れるぞ』

(わかった)

フランが覚えた違和感は、なんだったのだろうか? 抗魔の出現の前兆? 誰かに監視されている? 竜王会が何かした?

ともかく、俺たちに害がないものであればいいんだがな……。