軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

821 捻じれ角の脅威

「ゴルオオォォ!」

親衛隊である鉤爪騎士が倒されたことで、捻じれ角がフランを敵として認識したらしい。

明らかにフランを意識した動きに変化した。フランに隙を見せないように、やや守備的な動きになったのだ。

ただ、ナディアの脅威も理解しているらしく、こちらへ向かってくることはない。

捻じれ角に余裕があるのは、周囲にまだまだ抗魔がいるからだろう。黒い剣士型や弓士型がこの場所を囲んでいることは間違いないのである。

『奴らに雪崩込まれると厄介だ。このまま一気に片を付けよう!』

「ん!」

フランが身を低くして駆け出す。片手で下げるように構えた俺が、地面に擦れそうになるほどの前傾姿勢だ。狙いは足である。

捻じれ角はそんなフランに対するため、剣を下段に構えようとしたのだが――できなかった。

ナディアが軽く跳び上がり、上段から捻じれ角に斬りかかったのだ。

完璧なタイミングであった。何も言葉を交わしていないのに、相変わらずの息の合いようである。

地面を這うように襲い来るフランと、頭上から剣撃を繰り出すナディア。

上段と下段からの同時攻撃に、どう対応するのか? ただでさえ捌きにくい上下の同時攻撃を、その巨体でどう防ぐ?

「ゴゴォォォ!」

すると、捻じれ角の纏う魔力が一気に濃密さを増した。そして、フランとナディアが同時に吹き飛ばされる。

「くぅ!」

「ぐあっ!」

2人とも、武器で防いだのでダメージは少ない。ただ、ズザザと滑って着地しながら、驚愕の表情をしている。

捻じれ角は、特別なことをしたわけではない。ナディアの振り下ろしに横薙ぎの一撃を合わせた後に、フランに対してアッパースイングのような切り上げを放ったのだ。

ただ、その速度が異常であった。

フランは閃華迅雷状態なうえに、ソフィの歌によって凄まじく強化されている。ナディアは、そんなフランと同等の速さを誇るのだ。

そんな神速コンビをさらに上回る速度で3メートルの大剣を振り回し、吹き飛ばした捻じれ角。

その速度は俺たちですらギリギリ知覚できるレベルであった。

『転移だけじゃなくて、時間加速までするのか!』

上位抗魔は時空魔術を器用に操るらしい。

身体強化と、時間加速。ただでさえ圧倒的な捻じれ角の速度が、それによってさらに高められていた。

「ゴオオォォ……」

追撃はない。

捻じれ角はその緑色の目を光らせながら、フランとナディアを睥睨していた。

「むぅ」

「余裕綽々じゃないか」

ナディアが言う通り、捻じれ角の態度からは強者の余裕のようなものが感じられる。明らかにフランたちを値踏みしていた。

周囲の抗魔が動かないのも、捻じれ角だけでフランたちに勝てると思っているからだろう。

「……舐めていられるのも今のうちだよ」

「ん! ほえづらかかせる!」

そして、フランが動いた。

こういった巨大な相手と戦う時のセオリーは、上回る敏捷性で相手を攪乱しながら隙を探し、一気呵成に決着をつけることだ。

フランは空中跳躍と閃華迅雷を用いて、捻じれ角の周囲を不規則な動きで飛び回る。

驚いたのはナディアも同じ動きをしてみせたことだ。ただ速いだけではなく、慣性を無視したかのような異常な曲がり方も似ている。スキルの金喰か、オーバーグロウスの効果なのだろう。

だが、捻じれ角は俺の想像を超えて、異常な相手であった。舐めていたわけではないが、まだ危機感が足りていなかったのだろう。

目にも留まらぬ速さの2人が、隙を作るために攻撃を仕掛けた。前後からの同時攻撃だ。

この攻撃を防御させて体勢を崩し、奥の手で決着。

そんな形を狙っていたのだが――次の瞬間、驚愕の事態が起きていた。

「ゴオオォ!」

「!」

ナディアとフランが同時に目を見開く。

なんと、捻じれ角が空中跳躍を使って、こちらの攻撃を回避したのだ。受けるのではなく、完全に躱していた。

しかも、そのままフランたちと同じように、宙を駆けまわって攻撃を仕掛けてくる。

直線的な速度では負けていても、小回りなら勝っている自信があった。だが、捻じれ角の動きはフランたちと比べても、遜色のないものである。

こちらの唯一の利点である、機動性でも互角以上とは!

3者が宙で絡み合うように激しく動き回りながら、攻撃を仕掛け合う。

攻撃が繰り出される度に衝撃波と轟音が周囲に撒き散らされるが、その追いかけっこが終わる気配はなかった。

この戦場へと一緒にやってきた冒険者たちがこの光景を見れば、見えない速度で宙を駆けるナニかが、激しく暴れ回っているようにしか見えないだろう。

互いにクリーンヒットはない。軽い傷ならすぐに治る。

だが、時間が経てば経つほど、人の身であるフランたちばかりが消耗していくのは明白だった。

これは非常にマズい。

それは、フランも理解していたのだろう。ここで切り札を使う決断をしたらしい。

(師匠、やる!)

『分かった!』

俺の柄をギュッと握りしめる。自力で勝てないことが悔しいのだろう。しかし、今は勝たねばならない。勝利を求め、フランは叫ぶ。

「剣神化っ!」