軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

820 ナディアとの共闘

フランとナディアが顔を見合わせ、ニヤリと笑い合う。そして、同時に抗魔へ向かって突進した。

「たぁぁ!」

「どらぁぁぁ!」

抗魔たちがフランたちを迎え撃つために身構えた瞬間、フランたちが交差するように跳んで互いの獲物を入れ替える。

何の事前打ち合わせもなくこれだけの動きをするとは、驚くほどの息の合いようだ。

だが、相手の鉤爪騎士も雑魚ではない。このくらいの奇襲であれば、即座に対応して迎撃の動きを見せていた。

腕の盾で受け止めるつもりなのだろう。

『本命はこっちだがな!』

しかし、それも想定済みなのだ。一瞬でも気を惹ければ、十分だった。

俺の放った鋼糸が、鉤爪騎士たちの足に巻き付く。糸を幾重にも束ねた、太く強い縄――ではない。

むしろ、細かった。

細く。ただひたすら細く。目視することが困難で、頼りないかどうかを論じるに値せぬほどに細い。そんな糸を生み出してみたのだ。

あっさりと切れてしまいそうだが、そんなことはなかった。抗魔の足にしっかりと食い込んでいる。

ありったけの魔力を流しているのだ。ちょっとやそっとで切れる訳がなかった。

それに、ただ強靭なだけではない。

「ギィィィ?」

「ギャガッ?」

『成功だ!』

細い糸が抗魔たちの足に食らい付き、深々と切り裂いていた。人間であれば、肉を裂いて骨に巻き付いているような感じだろう。

まあ、抗魔どもに骨格なんざないけどね。

残念ながら切り落とすことはできなかったが、その動きを阻害することはできている。

普通の鋼糸を100本生み出すよりも、上級抗魔さえ切り裂ける極細糸を1本作る方がよほど消耗が激しいが、少し無理をした甲斐はあっただろう。

「はぁぁぁ!」

「くらえぇ!」

バランスを崩した鉤爪騎士を、フランとナディアがそれぞれ斬り捨てる。

その姿を見ていて、俺は不思議な一致感を覚えた。フランとナディアの姿が、なぜか被って見えたのである。

2人の構えは、何故か非常に似ていたのだ。

同じ黒猫族だからか?

しかし、武器のサイズも、重さも、本人たちの身長も違うのだ。それで、ここまで似た印象を受けるだろうか?

同じ流派というわけじゃない。そもそも、フランはどこかの流派の剣術を使っているわけじゃないし、それはナディアも同じだ。

いや、今は戦闘に集中せねば。

「ルウウウウオオオォォオォォ!」

「ぐがっ!」

「ナディア!」

フランたちが2体の鉤爪騎士を倒した直後、ナディアの体が大きく弾き飛ばされていた。いつの間にか接近してきたボス――捻じれ角の攻撃を受けたのだ。

オーバーグロウスで受け止めたのでダメージはないようだが、鉤爪騎士の追撃を受けている。あのままいくと劣勢に追い込まれるだろう。

こちらには1体だけだ。

しかしフランは、焦ってナディアを助けに行こうとはしなかった。

「師匠! お願い!」

『おう!』

ナディアがやつらを引き付けてくれている今がチャンスなのだ。俺たちが助けに入る前から、ナディアはこの状態で生き延びていた。

ならば、すぐにやられてしまうことはないだろう。

『今のうちに、ボス以外を倒す!』

「ん!」

今の捻じれ角の動きを見ただけで、戦闘特化型と言われていた意味が分かった。あの指揮官個体は、凄まじく強い。

剣王術に迫るレベルの剣術に、今のフランやナディアと変わらぬ速度。そして、腕力や強靭さ、体力は圧倒的に上だろう。

そんな相手を倒すには、まずは周囲の邪魔者を排除することが先決だ。それが結局、勝利への近道となるだろう。

『ナディアの顔……。抗魔の部分が少し広がったか?』

ここまで一気に駆け抜けてきたが、それでも数分はかかった。ナディアの残り時間は確実に減っているだろう。

《個体名・ナディアが完全抗魔化するまで、推定6分43秒》

多少のリスクは呑み込んで、速度と効率を重視するべきだった。

(師匠、おっきくなれる? それで、いっきにやる)

『なるほど。了解だ。まずは俺が仕掛けよう。フランはこいつを頼む!』

「ん!」

フランのやりたいことを瞬時に理解した俺は、目の前の抗魔の相手をフランに任せ、再び飾り紐へと魔力を流し込んだ。

まるで生き物のようにブルリと震えた飾り紐が、天へと向かって伸びていく。

そして、十数メートル上空で一気にバラけて、一気に地上へと落下していた。まるで、晴天から降り注ぐ狐の嫁入りのように、数百の糸が地上を襲っている。

狙いは捻じれ角以外の抗魔たちだ。ただ抗魔たちは、鉤爪と障壁でさほど苦労せずに防いでいる。

まあ、1本1本の威力は低いし、個別に操っているわけでもないからな。仕方ないだろう。

そもそも、この攻撃は抗魔を仕留めるための攻撃ではないのだ。

(師匠、さすが)

『いつでもいいぞフラン!』

「ん! はぁぁぁぁ!」

頷いたフランがその場で俺を腰だめに構え、僅かな溜めの後に一気に振り切った。

その瞬間、俺の刀身が一気に巨大化する。その長さは15メートル程だろう。

以前海賊相手に使用した、斬艦モードである。まあ、今の方が長いし、使い手のフランも成長している。威力も速度も段違いに上だ。

あの時は扱える限界が10メートルだったが、今のフランなら15メートルでも完璧に振るえるのだ。

その証拠に、巨剣から繰り出されたその一撃は、普段と変わらぬ神速の太刀筋であった。

未だに降り注ぐ糸と遊んでいる抗魔たちは、上に逃げることができない。しゃがめば躱せるだろうが、それをしては糸の餌食だ。

地面に潜り込めば回避できるかもしれないが、そんなことをする余裕など与える訳がなかった。

「ギイイイィィィィ!」

「ギオオォォ!」

この斬撃で、目の前にいたやつと、もう1体を仕留めた。1体は無理やり上に飛んで、俺を躱したな。糸は致命傷にならないと判断したのだろう。

しかし、甘いのだ! 俺は即座に練り上げていた魔術を発動した。白い極雷が降り注ぎ、糸に絡みつかれて動きの鈍った抗魔を呑み込む。

収束させたカンナカムイが大地に深い穴を穿ち、衝撃が地面を揺らす。

凄まじい放電が収まった後には、抗魔の姿は欠片も残っていなかった。

いくら魔術耐性が高いと言っても、俺が本気で放つ収束カンナカムイは防げないらしい。

これで、斬艦モードの攻撃範囲内にいた抗魔たちは狙い通りに仕留めたな。本当はもっと長くもできるんだが、それをするとナディアまで巻き込んでしまうのだ。

「残りは、ボスだけ」

『おう! このままナディアと一緒にボスをやるぞ!』