軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

725 人手不足の影響

「なんだごらぁ!」

「先に因縁をつけてきたのはそっちだからね? もう謝っても許さないんだから?」

「やんのかおらぁ!」

「唾を飛ばさないでよ!」

宿へと戻る道中。冒険者たちが道のど真ん中で何やら言い合いをしていた。

片方は酒に酔っているらしい。禿頭に毛皮という、バーバリアンスタイルのいかにも荒事専門という装備の男たちだ。

そいつらと言い合っているのは、まだ若い冒険者たちである。こちらは正統派の冒険者だろう。先頭に立って言い合っているのは、まだ少女と言っていい年齢の弓師だった。

間に入って止める役目の警備の手が足りていない今のウルムットでは、よく見られる一場面である。周りの人々も迷惑そうな顔で、彼らを避けていく。

どちらもそれほど強くないし、普段なら関わることもなく放置するだろう。もしくは、どっちもぶちのめして喧嘩を止めるか。

神属性を使ったことによる反動で未だにだるそうにしているフランだが、こいつら程度ならどうとでもできる。

しかし、フランは攻撃に移ることもなく、彼らの前で足を止めていた。

言い争いをしているのが、知り合いだったのだ。

「ねえ。なにしてるの?」

「え? フラン先生!」

若い冒険者はフランの短期弟子、ナリアやミゲールたちだったのである。こっちを見て、ナリアはばつの悪そうな顔をした。フランの口調に、やや咎める色があったからだろう。

「んだあおらぁ?」

「げっ!」

酔っ払いはフランにもガンをつけ、ナリアは露骨に狼狽する。フランが軽く眉をひそめたのが見えたらしい。

「周りの迷惑」

「は、はい……」

「あああ?」

フランの短い言葉に、弓師のナリアと大剣使いのミゲールは青い顔で意気消沈する。だが、酔っ払いにフランの実力など分かるわけもなく、フランに絡んできた。

「んだこらっ! うっせんだよっ!」

短絡的に、手を伸ばしてくるが……。

「ふん」

「ごべぁ!」

まあ、こうなる。

「ミゲール、そこら辺に捨てておいて」

「わ、わかりました!」

「フラン、先生。お手数おかけしました」

「ん。邪魔だったから」

ナリアやリディックに礼を言われるフラン。軽く話を聞くと、今年は特にトラブルが多いらしい。やはり人の手が足りていないのだろう。

「依頼帰りで疲れてるのに、ああいう見掛け倒しに絡まれるなんて最悪!」

「依頼?」

「はい」

今の冒険者ギルドには、町の外での討伐依頼が掲示されているらしい。特に多いのが、アンデッドの討伐だ。

まだアンデッドの出没が収まっておらず、町の周囲に姿を見せるらしい。そういったアンデッドを放置していると、それらを餌にする魔獣も集まってしまうため、早めに駆除する必要があるのだ。

「デュフォーたちもいなくなっちゃうし! もう最悪ですよ」

「デュフォー、いなくなった?」

「はい。仕事手伝わせようと思ってたのに、宿を引き払ったみたいで……。一回負けたくらいで情けない!」

デュフォーとその仲間は、フランに負けたショックで、さっさとウルムットから旅立ってしまったらしい。

ナリアとそんな話をしていると、不意に俺の気配察知にひっかかる影があった。近くにある建物の屋根の上から、こちらを見下ろしている。

(師匠?)

『……ウルシ、屋根の上の奴はいけるか?』

(オン!)

『じゃあ、フランはそこの路地の奴だな』

(わかった)

潜む相手は3人。明らかにこちらに対して殺気を放っている。抑えきれていないということは、そこまでの手練れではないだろう。

「先生。なんか、変な気配が……」

「しっ。分かってるからこのまま話す」

「わ、分かりました」

ナリアに勘付かれるくらいだから、やはり雑魚だな。

『よし、やれ!』

「ん!」

「ガル!」

俺の放った雷鳴魔術を合図に、フランとウルシが転移する。そして、直後には不審者を捕まえていた。やはりそこまで強くはなく、フランとウルシにあっさりと倒されている。

急に魔術を放ち、変な男たちを引きずってきたフランを見て、ナリアは驚きの顔だ。

「え? えっと、先生?」

「こいつらは、暗殺者。たぶん」

「た、多分?」

「ん。私に殺気を放ってた」

ナリアが顔を引きつらせる。確定する前に気絶させて捕まえるのはやり過ぎだと思ったのだろう。

とりあえず邪魔にならないように路地に入り、そこで尋問を行うことにした。

俺が電撃で麻痺させた奴を癒し、威圧して心を折った後に質問をぶつける。

「お前らは、なんで私を狙った?」

「い、いい、依頼ですっ!」

暗殺者がベラベラと喋った。

結果、どこかの貴族風の人間に雇われただけの、下っ端暗殺者ということが分かっただけである。はした金で雇われた、山賊崩れであった。

『とりあえず冒険者ギルドに連れていこう』

(わかった)

フランを狙う理由は、いくらでもある。有名人だし、武闘大会を対象にした非合法な賭けなんかが関わっている可能性もある。

ここまで残った他の参加者の手下という線はまずないだろうが、それ以外の可能性は無限大だ。

俺たちが暗殺者モドキを引きずって冒険者ギルドに向かうと、そこでも騒ぎが起きていた。

なんと、ディアスが襲撃されたという。まあ、あっさり取り押さえられたそうだが。つまり、準決勝進出者を狙った?

「あらん? フランちゃん!」

「エルザ。これ、引き取って」

「こいつらは?」

「暗殺者」

「まあ! フランちゃんのとこにも? 分かったわん! 私がきっちり対処しておいてあげる!」

「お願い」

「誰か、こいつらを牢に!」

フランが暗殺者を引き渡すと、エルザが何故か舌なめずりをしながら冒険者たちに引っ立てるように命じる。

「それにしても嫌んなっちゃうわ。ヒルトーリア様とナイトハルト様のところにも確認の人員を出さなきゃならないし……。他にも仲間がいるなら、そいつらも捕まえなきゃ」

「頑張って」

「フランちゃんに応援してもらったら、元気100万倍よ! 私頑張っちゃう!」

それにしても、今年の武闘大会はトラブル続きっぽいな。レイドスのスパイに、アンデッド騒ぎ。シャルス王国の貴族たちに、暗殺者騒ぎ。

警備の手が全く足りていないらしい。本当に大丈夫なのか? ま、俺たちは次の試合に備えて休むけどね。

フランの調子を少しでも戻さねばならないのだ。